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社会学入門、3人のヒゲおやつ(社会学基礎理論)

大学院で学ぶ「学習のデザイン」、今回は社会学です。

社会学の草創期である1900年ごろに活躍した、ウェーバー、デュルケーム、マルクス、のヒゲおじさん3人が打ち出した理論を見ていきます。そしてそこから、学校教育と社会の関わりを、自分なりに考えてみます。

前回、社会学は「個人」と「組織・集団」の関係性を見ていく学問だと書きました。

今回もこの構図から整理していきます。


マックス・ウェーバー(1864-1920)

ウェーバーは、個人の行為から意味を見出して、制度や組織などの仕組みを明らかにする人です。シルエットは二等辺三角形のとんがりコーンです。

個人 → 集団

個人の行為には、目的・価値・感情・伝統がありますが、ウェーバーはこのなかで目的(目的合理的行為といいます)にフォーカスします。

なんで資本主義社会は成立したのか?ということの論文(通称プロ倫)があります。ウェーバーは、プロテスタントの禁欲的な行為が、規律や計算を大事にしたことで利潤や再投資につながり経済発展した、と述べています。個人の行為と目的が積み重なり、集団行動としての資本主義社会を形成したという考えです。

学校で例えると、生徒一人ひとりの勉強に取り組む姿勢が、クラスや学校全体の学力に影響を与えるといったことにも当てはまります。

ウェーバーはほかに「支配の社会学」という論文もあります。これは、リーダーに従う構造の正当性を証明したものです。誰かが権力を用いて規律をつくり支配することは、結果として社会の秩序につながるので必然性があると考えます。そして支配の形態を3つの分類をまとめています。学校のような組織にも当てはまります。

  • 合法的支配:入学届を出した学生と教師の関係

  • 伝統的支配:先輩と後輩の関係

  • カリスマ的支配:クラスのリーダー的存在になる関係

ちなみに権威と服従の関係について以前、行動経済学や心理学の観点から書いてみたものがあるのでご参考まで。

このように、個人の行いには何かしら意味を持ち、集団への影響につながるという見方が、ウェーバーの考えです。

エミール・デュルケーム(1858-1917)

ウェーバーに対して、デュルケームは反対の立場に着目します。シルエットは長丸のハッピーターンです。

集団 → 個人

デュルケームは集団から個人を見ることで3つの考え方を展開します。1つめは『社会的事実』。これは目に見えないし触れられない社会が個人を拘束している、という考えです。例えば、学校の規則は生徒の行動を取り締まったり、進学校というレッテルは個人の成績とは関係なく貼られます。

2つめは『社会分業論』、みんなの助け合いで社会は成り立っている、という考え方です。知らない人が運転している電車に乗って通学したり、お互いがパーソナルスペースを意識しあうことで、混み合った電車でもトラブルなく過ごす(社会秩序が成り立っている)ことができます。

3つめは『自殺論』です。ぶっそうな名前ですが、デュルケムの功績でもっとも有名であり、集団→個人の構図を象徴する理論です。

自殺とは、もっとも選びたくない選択肢でありながらも自分の意思で選んでいる、という不合理な行為です。そこには何かしら社会からの影響があると考え、デュルケームはこれを4つに分類してます。

  • 自己本位的自殺:社会とつながってない状態(定年退職した男性など)

  • 集団本位的自殺:組織から圧力を受ける状態(職場のパワハラなど)

  • アノミー的自殺:理想と現実が追いつかない状態(モテないなど)

  • 宿命的自殺:運命だと思ってしまうこと(叶わぬ結婚など)

どれも社会→個人の関係性が対等ではない状態から、自殺という選択を迫られているということがわかります。学校でおきる個人と組織間での問題は、これの何らかに関係していることが多いです。

社会的事実や自殺論のような社会の強い影響が個人に抑圧を与える一方で、社会分業論の助け合いの関係で社会が成り立っている側面もあります。デュルケームは、この実態のない社会をモノのようにしてとらえるべき、ということを述べています。

カール・マルクス(1818-1883)

マルクスといえば、資本論という本を書いてマルクス主義を打ち立てた政治や経済の人という側面が強いですが、社会学的にも注目すべき人です。シルエットは真ん丸のチョコ&コーヒービスケットです。

社会学の功績として代表的なのが『葛藤理論』です。

葛藤理論とは簡単にいうと、集団Aにとって良いことは集団Bにとっては悪いことになる、という集団や組織ごとの対立です。関係図で表してみるとこんな感じです。

個人A  ⇔ 集団A ⇔ 集団B ⇔ 個人B

資本論では「なんで資本主義の仕組みで労働者は貧困化するのか?」という批判をして、商売の成立+持続させるためには、労働者と経営者に必要なお金の価値が違っているから、と考えます。商売には次の3つの原則がともないます。

  • 使用価値:商品を買う人が納得できる値段

  • 交換価値:他のものと交換できる値段

  • 使用価値=交換価値に見える時(等価交換)に売買が成立する

使用価値は経営者が得たい利益です。対して交換価値は労働者がほしい賃金です。ビジネスをするうえでは当然、交換価値(給与)よりも使用価値(売上)の方が高くなるので、実は資本主義の経営は等価交換になりません。なので、商売を続けると経営者である資本家がますます有利になって、労働者はより搾取される構図がうまれます。

社会学の観点で着目したいのは、経営者という集団と労働者のという、異なる2つの集団のなかで対立や分断がうまれる点です。これが葛藤理論です。これはビジネスの話だけではなく、教員側と学生側、男子生徒と女子生徒といった学校だったり、世の中のニュースのほぼ全てに当てはまります。

学んだこと

個人起点、集団起点、集団と集団、それぞれの立場から見たことで、社会が持つ影響力を知ることができました。学生という個人と、学校という1つの集団・組織の関係性について考えるときも、この構図を使うと整理しやすくなれるのではないかと思います。

社会学で使われている言葉がどれもむずかしく、いまだに理解するのに時間がかかり挫折しそうなので、今回は、とんがりコーン、ハッピーターン、チョコ&コーヒービスケット、が記憶に残ればOKとしましょう。

シルエットが気になる人はググってみてください。

先生から紹介してくれた本の中で、こちらは平易な言葉づかいでわかりやすかったので、詳しく知りたい人は読んでみてください。

今日はここまでです。

デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。