薪ストーブ用に椅子をつくってみた
2月はモノのデザインを紹介します。
去年、知人(先輩)のKさんが、郊外に古民家を購入して、2拠点生活をはじめました。自分で家を直すのが好きなKさんは、天井の掃除や、薪で沸かすお風呂と煙突の設置などを次々とつくっています。すごい。
去年の暮れには、家の中が寒くなる前に薪ストーブを設置しました。ストーブを囲んであったまることは、都心部の住まいではなかなかできないので、羨ましいです。
で、ストーブのまわりに座る椅子をつくりたいとのことです。もともと置かれていた木材があるので、それを加工することを考えていました。
デザインの条件を整理
泊めてくれたお礼に(というか、ただ自分がやりたいだけでしたが)簡易的につくれる椅子のデザインを考えてみました。Kさんが考えていた条件はこのような点です。
この条件をベースに、Kさんにはお子さんがいるので、ぜひ制作に関わってもらいたいと思い(ものづくりに興味があるということを聞いたので)、自分の中で条件を加えてみました。
これらをもとに、デザインを考えてみます。
iPadでスケッチ
焚き火を囲むときは、しゃがんで前かがみの姿勢で手を出して暖まる光景が目に浮かびます。それを考えて、後ろにのけぞるよりも、前傾姿勢になれるような座面の角度がよいのでは?と考えました。
座面の高さが低くして、そのぶん後ろに倒す座面にすると、しゃがむ姿勢になってよさそうです。後ろの脚や背面が腰にあたれば、程よくストッパーにもなります。背もたれには通常はそんなもたれかからない使い方です。
やりとりでKさんからもリクエストがきます。自分にはない観点になるほどと思い、カタチをもう少し考えてみます。
面での構成は面白いと思う一方、椅子自体の重さはなるべく軽い方が、畳や床への負荷が軽減されるので、肉抜きしてミニマムの構造にします。あとは座る姿勢を強要されない自由度を意識しました。具体的には両サイドに手すり的な壁がない、脚を広げたり椅子の下にもぐりこませたりすることができる、など。
立体でモデリング
抑えるべき寸法が見えてきたので、絵を描くのは一度やめて(ディテール検討はこの段階であまり大事ではない)立体にしてみます。
家に転がっている段ボールを使い実寸でつくってみます。ボリューム感や構造を検討するためにつくるので、だいたいの大きさを想定してマジックで書いて、切って、ガムテームでくっつけるという、小学生の工作とやってることは変わりません。
できました。
微調整をしたり、歪まないよう構造を加えてカタチを調整します。
座ることはできないので、空気椅子的に姿勢を再現してみたり、底にモノを当てて試してみます。まあまあいい感じではないかなと。
構造や組み立て方を検討
ガムテープでくっつけたところが接合点になります。そこから組み立てを考えて、今回は簡単なネジだけの構成にします。
椅子の大前提、荷重に耐えられるために、骨の骨格を意識します。面で覆われたブロックのような構成であれば安定しますが、それだと重くなるので、最小限を意識します。4本の脚をつなぎとめる箱を座面の下につくり、背面は後ろの脚にかかるようにして、外側に角度を開くことで、荷重が床に向かうようにしています。
構造を考えたあとで、あらためてパーツのサイズを考えます。最終的には合板を切り取ってパーツをつくりますが、今回はホームセンターで買える規格ものの安価な板材を使って構成します。
これで一度組み立てて、使える試作品にしてみます。
木材でテスト
つくってみました。ノコギリで切って・インパクトドライバーで穴を開けて、ネジで組み立てています。
まあまあいい感じじゃないでしょうか。若干小さいかもですが、子どもが座ることを想定すると、ちょうどいいくらいのサイズ感かもしれません。
背面のディテールは、見た目的に要改善です。中途半端なカットはあまりキレイではないし、脚と脚をつなぐ板も角度は合わせたいなと。でも後ろの脚の角度は気に入ってます。
とりあえずは直線だけで構成した無骨なデザインですが、ここから丸みのある形をつけたり、クッションをつくるなどして、アレンジができます。そのための下地となるデザイン案が今回の成果です。
使ってもらう
ここまでが半分くらいで、これから合板でつくってみたり、ディテールを改善してよりいいデザインにしていく計画です。がコロナがまた蔓延してきたことと、自分の仕事や家庭事情であまり外出ができなくなってしまったので、とりあえず試作品を渡して使ってもらうことにしました。
近いうちにまた見学にいって、修正案を考えてみようと思います。次は何をつくろうかな。
デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。