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3つの軸からアプローチ。DeNAの事業を加速させるデザイン組織

designer's story by Cocodaとは、「デザインマネージャーが抱えるリアルな課題」に対し、第一線で実践されている企業のデザインマネージャー・デザイナーにインタビュー。企業ではたらくデザインマネージャーの挑戦、リアルな事例をお届けするメディアです。

初回となる今回の記事では、株式会社ディー・エヌ・エーの執行役員でデザイン本部長である増田真也さんに、「エンジニアドリブンの組織から、デザインドリブンの組織へ具体的にどう変革をしていったのか?」といった内容を軸に、デザイン組織に対する増田さんのお考えをお伺いしました。

◆ 増田 真也さんのプロフィール
多摩美術大学 環境デザイン学科卒 2008年デザイナーとして中途入社。mobageのマネージャー、スマホ版mobageなどの立ち上げを経て、音楽ストリーミング配信サービスや、地域SNSなど新規事業のプロダクトマネージャーを経験。大手ゲーム会社とのプラットフォーム開発におけるプロダクトマネージャー、デザイン戦略室の副室長を兼務後、2018年4月からデザイン本部本部長に就任。
◆ 目次
1.増田さんが考えるデザイン組織とは?
2.デザイン組織を立ち上げるにあたり、何から始めたのか?
3.デザイン組織はどのように機能しているのか?
4.事業の成長と個人の成長を実現する組織配置とは? 

1.増田さんが考えるデザイン組織とは?

ーー「デザインマネージャーになったものの、何からはじめればいいかがわからない」といった声を多く聞きます。デザイン組織成功の鍵は一体何だと思われますか?

デザイン組織成功の鍵は、デザイナーが「より自分ごととして入り込んで事業をやってみる」経営者のようなスタンスをとっていくことだと思います。

自分が経営者・自営業・個人事業主といった形で仕事をしていたら、自分ごとにせざるを得なくなるじゃないですか。「事業が健全に成長しているか」「一施策にかかるコスト」など、いろんなことが気になるはずですよね。うまくいかなかったら潰れてしまうので。

このように、「いかに職種の枠にとらわれずに会社運営・事業運営を考え、のめりこむこと」が重要なのかなと。

ーーなるほど。役割を意識せずにのめり込むスタンスが重要だ、と。 

そうですね。事業会社である以上、プロダクトでお客様に喜んでもらうことが優先されるべきで、その過程で必要なことは役割関係なくやっていくべきだと考えています。

もちろんデザインという職種にプライドと誇りを持って働いて欲しいというのは大前提ですが、プライドが理由で変に手を伸ばせないなら、それは一旦忘れちゃった方がいいのかもしれません。

最終的にチームは、上流工程をみんなで議論した後「じゃあつくってみよう!」となった時、「自分デザイン得意なんでやりますね。」とか、「コード書けるんでサーバーも書きますね。」ぐらいになった方がいいと思います。

2.デザイン組織を立ち上げるにあたり、何から始めたのか?

ーー次に、増田さんがデザイン組織を立ち上げるにあたって「具体的に何から始めたのか」をお伺いしたいです。またデザイン組織を立ち上げるにあたり、重要になってくる「経営陣とのコミュニケーション方法」もあわせて教えていただけませんか?

まずは、「数字」「プロダクト」「組織」この3つを軸に「DeNAの現状の課題」を自分なりに深掘り、経営陣とコミュニケーションをしていきました。
「今、企業・事業が何の問題に直面しているのか」を正確に把握しないと有効な打ち手って取れないと思ったので。なので「数字」、「プロダクト」、「組織」の軸から順番に分析しました。

ーーなぜ、この3つを軸に分析したのでしょうか? また、3つの軸について詳しく教えてください。

僕自身さまざまな事業に携わってきたのですが、この3つがうまく噛み合っていないと事業に絶対当たらないと思っているんですよね。

また、その軸の状況ごとに解決策は色々あると思うんですよ。

もし数字系の課題だったらちゃんと適切な管理フローが構築されていないことが問題かもしれないし、プロダクトの課題だったら、広義な意味でのデザイン強化が必要かもしれないし、組織の課題だったら育成・マネージャーの教育が課題かもしれない...その状況ごとに解決策は色々あると思うんですよ。

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ーー当時の増田さんは、DeNAをどのように分析しましたか?

プロダクトが弱いと感じましたね。DeNAは「数字的に分析・その結果をプロダクトに反映してPDCAを回していくこと」にバランスが寄っていたので。

開発に一番大切なお客様を巻き込めていない状況だったので、お客様をしっかり捉えたプロダクトを作って行くために、経営陣にデザインを強化していくことを伝えました。

ーー「プロダクトの部分を強化する」といっても、実際に推進することは大変難しいことだと思います。経営陣にはどのようなプレゼンテーションを行なったのでしょうか?

「今まで作ってきたプロダクトや業績の振り返り」のような話をしました。
その他にも、「この10年で何が起きたのか」「平成日本はどんな時代だったのか」「プロダクトが体験ドリブンになっている」という具体的な事例を交えながら、「モノづくりは高度化してきていて、すべてが左脳的に分析して答えを出せる単純な話ばかりじゃない」というような話を経営陣にしたところ、じゃあやってみようという感じで進んでいきました。

3.デザイン組織はどのように機能しているのか?

ーーなるほど。そのような背景があり、今のようなデザイン組織が生まれたんですね。次に、「現状のデザイン組織について」お聞きしたいのですが、社内のデザインマネージャーはどのような方が多いのでしょうか?

昔はパキッと分かれていたのですが、プレイヤーとして中心になってバリバリ活躍していた人がマネージャーをやっているケースが多いですね。

プレイングマネージャーを積極的に推奨しており、2018年あたりと比較すると、マネージャーとよばれるメンバーは当時の倍以上になっています。

ーー「マネジメント業務」と「プレイング業務」のバランスをとるのが難しいという切実な声をよく聞きますが、どのようにプレイングとマネジメントのバランスを取っているんですか?

基本は個人に委ねていますが、すべてを一人でやらなくてもいい仕組みづくりもしています。

具体的には、マネージャーの上に、サポートできる部長がいて、部長が対応しきれなそうだったら僕らがやる、というように何重にもサポートができるといった体制をとっていますね。

毎週マネージャー定例を設けて、そこで何でも挙げれる状態にするのもその一環です。

ーー仕組み化もされているんですね。増田さんは、マネジメントにおける一番のボトルネックは何だと思いますか? また、どのようなマネジメントがDeNAでは主流になのでしょうか。

一番のボトルネックは、マネージャーの負荷ですね。一人がしっかり向き合える人数の限界は8人ぐらいだと思っています。

ですので、最大8名くらいになるよう愚直にチームを割って負荷を減らしていっています。それにともなってマネージャーが増えていきますので、スタイルとしては背中を見せながら並走するマネジメントが多いですね。

もちろんマネジメントが主というメンバーも中にはいるんですが、今はプレイングマネージャーが7割から8割ぐらいだと思います。

やっぱり、根本はクリエイターなので、手を動かしたいっていう想いもあるじゃないですか。その想いを削ってしまうより、「やれる環境をいかに作ってあげられるか」を考えています。

ーー「マネジメント業務」は比較的組織でサポートしていきながら負担を減らすということに注力しているんですね。

そうですね。また、「プレイヤーとして今までやってきたけど、今後のキャリアをどうしていくか」という話になったとき、キャリアとしてマネージャーをやっていくのは全然損じゃないよ、という話も伝えています。

ーーどのようにコミュニケーションをされているのでしょうか。

個人で仕事をするアーティストみたいな方でない限り、あと30〜40年は誰かと働かなきゃいけないし、スキルが上がるに連れて自ずと「後輩」や「巻き込まないといけない人」は増えて行くので、絶対にやるべきだし、学ぶべきスキルじゃないかなというシンプルな話をしています。

先ほどお話しした、軸の1つである「組織」は、マネジメントを通して十分学んでいけますし、マネージャーがプレイングすることでチームのクオリティも上がるといった効果も期待しています。

このような経験を通して、みんなにいわゆるCDOみたいなスキルを身につけてもらいたいなと思っています。

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4.事業の成長と個人の成長を実現する組織配置とは? 

ーーマネジメント業務についてお伺いしてきましたが、デザイナーの組織配置についてもお伺いできればと思います。まずは、どのようにリソースの配分は決めているのでしょうか?

DeNAでは、全社的にどの事業に注力するかは、都度見直し・検討されています。

例えば、年始から昨年度末にかけて今期の事業計画を策定していたのですが、その事業計画を元に全社の注力箇所が決まってくるので、情報をきちんとキャッチアップ、基本的には事業計画の優先度を見ながらリソースを充てていくようにしていますね。

また個人のキャリアやWillもあるので、日々マネージャーたちの1on1から吸い上げ、柔軟にメンバーの入れ替えも行なっています。

マネージャー定例でも、どこかで問題が起こっていないかを確認したり、手が空きそうになったら「来週からこっちの案件手伝ってもらってもいいですか」といったようにリソースのマネジメントをしていますね。

アサインは1事業1人で固定という感じではなく、注力して厚めに充てるところは厚めに充ててクオリティをあげるということもやっています。

ーーアサインの事例を教えてもらってもよろしいですか?

MOVだと、今10人くらいアサインしていますね。

他にも、事業計画策定のタイミングでデザイナーのリソースを確認し、不足していそうな場合は逆にデザイン本部側からリソースの追加提案などもよくやっています。

ここ、1人じゃなくて、3人分の予算に変更しておいてくれないか、といった感じで。

ーーアサインした後チームで「工数が足りない」となった場合、どのような対応をされていますか?

工数が足りない時、採用しようという話になりがちだと思うのですが、まず僕は現状を見直すところから始めています。

多ければ良いということは絶対になくて、まず無駄を削減したり、変動費化できる部分を見極めて外注でまかなえるようにコントロールすることが大切だと思っているので。

DeNAは細かいものを含めると、数十のサービスやBlogなどのサイトがあるので運営や保守をしているだけで工数が結構かかっちゃうんですよね。

費用対効果があまり合っていない場合、悲しいですが「どんどんやめることで工数を空けて、注力事業や新しいことに投資しよう」という提案もしています。

ーー組織体制が変わったことで、どんな変化が大きく現れましたか?

会社の中でも退職者が少ない本部になりましたね。

デザイナーが1人も退職しなかったという年もありました。

「デザイナーの役割と定義」をきちんと定め周知したことでいい成果がで始めたんだと思います。

事業において、何を実現するためにどういうデザインが必要なのか、という「手段としてのデザイン」をみんなが考えられるような組織になってきている気がしますね。

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デザイン組織成功の鍵は、「デザイナーも職種の枠にとらわれず事業に『のめりこむ』こと。」とおっしゃった増田さん。

経営陣とコミュニケーションを取る前に、自ら事業を「1.数字」「2.プロダクト」「3.組織」という3つのの軸で分析し、デザイン組織としての打ち手を検討。

立ち上げ後は、デザイナーが事業やプロダクトに実際にのめりこめるように、組織でサポートを充実させるという、非常に具体的な事例を教えていただくことができました。

この他にも、「デザイナー以外も含め、どのようにコミュニケーションをとっていったのか?」「デザインの価値を発揮できるワークフロー」など具体的な事例を教えていただくことができたため、後編と称し、「DeNAのデザインが本当に価値を発揮できるワークフロー」についてご紹介させていただきます。

▼後編はこちらからご覧いただけます。
プロダクトマネージャーと取り組むデザイン組織づくり

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DeNAは、デザインの力でプロダクトを通して、世界に新たな価値を提供し続けるデザイナーを新卒採用しています。
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