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長年積み上げた目利き、真心を忘れない八百屋の心をロゴデザインに込めて


時代に合わせたあり方の中に、変わらず伝えたい八百屋だからできる「心」意気

今回は、青果小売業・生鮮スーパーマーケットの運営をされている株式会社F・イスト様から、青果小売業の方のロゴデザインをご依頼いただきました。
近年ではコストコや業務スーパーなど、大型スーパーが多く増えていて、下町の八百屋さんはますますみなくなりました。
そんな時代の変化に沿いながら、八百屋さんが持っている目利きの鋭さや、お客さんと直接的な関わりをもって旬のものをおすすめしたりといった真心を失わない形で届けたいという思いで運営されているそう。
近年、若年層を中心として野菜・果物の摂取量不足が課題視されており、
世界に誇れる日本の食文化の象徴である「旬」の野菜・果物で人々の生活を支える事業をされています。
店頭幕として使用する、大きなタペストリーを作成希望されるということで、媒体に落とし込む時のことを考慮しながらのデザイン案決めとなりました。

日本らしさを感じる、「紋」のようなデザインを目指して

今回はロゴタイプからデザインの方向性を模索することに。
こちらで用意したタイプサンプルから、イメージに近いデザインを選んでいただきます。
八百屋というイメージから、ゴシックよりも明朝体でノスタルジックな日本らしさ感じるものに決定。
さらに滲みを効かせることで青果の瑞々しさも表現しよう!となりました。
逆に、英語表記はゴシックに近いデザインを選択し、若い方たちにも刺さるような、モダンなイメージも盛り込んでバランスをとる形に。

ロゴタイプサンプル
決定したロゴタイプの組み合わせ


そして、ロゴマークのモチーフとして上がったのが「心」というキーワード。八百心だからこそ届けられる、心をテーマにした3つのコンセプトを考えていきます。
そして、
・「安」して食べられ
・「真」を込めて届けてもらえ
・「一」に取り組んでいる
八百屋であることを3つの心で表現することに。
3つの「心=ハート」をモチーフにipadを使って案出しし、
その中で気に入っていただいたのが、ハートを3つ葉のクローバーのように中心に向かって並べた上に、目に見えない丸をポンと乗せてできたような形です。
家紋※のように見える形が出来上がり、日本らしさを感じれるデザインとなりました。

※「家紋」とは?
文字通り、“家系”や“家柄”を表す“紋章”で、家族や親戚など血縁者が共有するシンボルマークです。 平安時代に公家や貴族が好みの文様を牛車に付け、自らの名前の代わりに、持ち物の所有性を明らかにしたことが「家紋」の始まりだとされています。

ipadで作成した案だしラフ画
illustlatorで作成した案だしラフ画


細かい部分の最終決定をご依頼者様と

リアルタイムMTG後、ラフデザインをもとに、細かい部分のクオリティを上げて、実際に使用できる形にした清書デザインを3つの方向性で提案させていただきました。
この清書のデザインは、実際にロゴデザインを使用する際に小さく扱ったり大きく扱ったりと様々なサイズで使用しても、違和感が無いように調整されます。最近では、自分でロゴデザインを作ることも容易になりましたが、こういった細かい調整は見落とされることが多いです。
ロゴは使用した時を想定して、完成させることはとても重要なので、そこはプロにお任せするメリットの一つではないでしょうか。
自分で作る際、一番気をつけたほうがいいこととしては、小さく扱った時にデザインが潰れて見えなくなってしまうことです。
今回でいえば、3つのハートマークの要素がしっかり別れて見えることが大事なのでその間隔を、小さくしても、3つの要素がそれぞれ離れ見えるように調整することが大事です。
今回提案させていただいたのは、3つのハートマークが互いに隣接している部分の処理の仕方です。MTGのデザインに忠実な形で整えたもの(A案)、丸みを強く出したもの(B案)、逆に細く処理してロゴタイプの印象に合わせたもの(C案)を提案させていただきました。とても細かな部分ですが、それだけでも印象が変わりますよね。
MTGではできなかった細かい部分のデザイン調整などを、ここで再確認し、他の比較対象を用意したことで、もともと決定したデザインがよりよく見え、さらにいいなと思ってもらえるきっかけにしていただくことができました。

清書デザイン3案

そして、完成したデザインがこちら。
老舗の貫禄と、モダンな印象を兼ね備えたロゴデザインが完成しました。
今回のご依頼に沿って、納品データもバリエーションを考えていきます。店頭幕などでの使用を考え、背景にメインカラーを使用して白抜きでロゴを配置するパターンの、背景ありバージョンも納品データとして盛り込みました。
完成後、店頭での活用はもちろん、webサイトなど様々なところに活用していただいています。

コンセプトシート1
コンセプトシート2


終わりに
ご依頼いただいた時、八百屋さんという言葉を久しぶりに聞いて、近所にあった八百屋を思い出してとても懐かしい気持ちになりました。
今、10代の子は八百屋という言葉も知らないかもしれません。私も、どんなものかは知ってはいるものの、実際どのように全国の母は利用してたのかなぁと。
デザインのお仕事をしていると、近未来的なデザインを要望される時もありますし、反対に今回のような古き良きを連想させるデザインを要望されることもあります。
八百屋という、時代の流れにそって変化せざるおえない分野で、消費者であるお客さんにどのようにアプローチするのがいいのかなと、考えさせられました。既に今の10代の人たちの常識が30代にはわからないように、時代の流れは早い。けれど、世代を超えても親しまれやすいなと思ってもらえるデザインっていいなと思います。
ご依頼者様がずっと使っていくロゴだからこそ、そういったデザインのご提案ができるようデザイナーは精進して行かなければなと思いました。


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