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「DESIGN CAMP @奥大和 2022」開催レポートVol.2 【Day15プレゼンテーション/吉田屋】

2022年8月22日(月)〜9月5日(月)、「DESIGN CAMP @奥大和 2022」を開催しました。

「DESIGN CAMP @奥大和 (デザインキャンプ奥大和)とは?」
アジア各国で活躍するデザイナーと、奥大和地域を拠点に活動する、またはローカルに興味のある国内デザイナーが共同生活を通して地元事業者に寄り添い、様々なご縁をつなぐためのコミュニケーションデザインを制作・提案する奈良県主催のプログラムです。

DESIGN CAMP @ 奥大和web」より

レポート1では、Day1〜14のプログラム概要をお届けしました。
今回は、Day15に行った吉田屋チームのプレゼンテーション内容をお届けします。

「吉田屋/Yoshidaya」とは?

最初に受け入れ事業者として参加した、吉田屋についてご紹介します。

株式会社吉田屋/Yoshidaya (下市町)

明治15年(1882年)に創業。
下山してきた修験者たちの宿泊街・下市 にて、土産物として葛や吉野富有柿商品や葛菓子ほか菓子類を製造直売し、 旅籠にも売りに行ったのが始まり。 その時代にあったお菓子を作ることで 幅広い層のお客様からも受け入れられる商品を作る。

親子3世代で


チームメンバー

続いて、吉田屋チームを担当したデザイナー、通訳・コーディネーターをご紹介します。

<デザイナー/designer>
北川恭子/Kyoko Kitagawa(カミヒコーキ /KAMIHIKO-KI

奈良市出身。武蔵野美術大学 空間演出デザイン学科卒。
デザイン事務所 2 社を経て、2013 年に東京から奈良へ Uターンし、
web designer の 北川けいたとデザイン事務所「カミヒコーキ」を設立。
ビジョンは、「 デザインの力で、地元を楽しく豊かにする 」。
地元の個性や良さを引き出し、後世に受け継げること・ものをデザインで 作って行きたいと考えている。
趣味は、温泉・花いけ・テニス。

Leo Huang (台湾/Taiwan)/Transform Design

台湾の台北にあるフルサービスのブランドプランニング会社・Transform DesignのFounder & Creative Director。
ブランドアイデンティティデザイン、パッケージデザイン、Webデザイン、アートディレクション、あらゆる種類のイメージ広告などのサービスを提供する、総合的なブランドプランニング会社としてTransform Designを2011年に設立。
近年、その専門知識を活かして、積極的に講義や教育を行っている。
2017年「Tokyo TDC Annual Awards」、「IF Product Design Award」を受賞。

 Vivia(台湾/Taiwan)/Transform Design

Transform Design は、台湾の台北にあるフルサービスのブランドプランニング会社。
ブランド アイデンティティデザイン、パッケージデザイン、Webデザイン、アートディレクション、あらゆる種類のイメージ広告などのサー ビスを提供する、総合的なブランドプランニング会社として2011年に設立。

<通訳・コーディネーター / Translator Coordinator>
乃一 絢音/Ayane Noichi

奈良生まれ、奈良在住。 現在、カナダでグローバルスタディーズと音楽を学ぶ大学生。 中学生の頃、アメリカに一年留学。その 後、カナダの全寮制高校へ入学。現地でオーケストラに所属し、ヨーロッパでも演奏活動を行う。 日本で、ピアノ、オーボエ、バレエを頑張りつつ、音楽に関する情報をブログ "音のジャーニー"で発信している。

Ning(台湾)

台湾のアートとカルチャーの日本向けPR、コーディネーターなど、台湾と日本の架け橋を担う。

事業者研修を通して整理した、吉田屋の課題・強み・意志

Day2〜4の事業者研修では、下市町、吉野山、天 川・洞 川・大峯山を訪れました。いずれも吉田屋さんと縁のある場所です。

春は桜が満開に
定番商品がずらり
新ブランド「ゆるり」
吉田屋おばあちゃんの博物館
博物館には、貴重な道具がたくさん
おばあちゃん(右)からお話を伺う一行
豊かな自然に囲まれています
金峯山寺周辺のお土産屋さんにも吉田屋さんの商品が
金峯山寺

チーム全員で朝から晩まで過ごす3日間。様々なお話を伺いながら、吉田屋チームは下記のように「課題」、「強み」、「意志」を整理しました。

<課題>

  1. 葛の認知が低くなっている(特に若い層)

  2. コロナの影響による、観光客の減少(量から質へ)

  3. お土産屋さんの高齢化

  4. 様々な商品があり、情報整理が必要

  5. HP(STORY、伝えたい内容がきちんと伝わる)

<強み>

  1. 女性目線での企画力・営業力・商品がある

  2. 自社ブランドとともに、OEMも得意

  3. HACCPに基づく衛生管理

  4. 安全・美味しさへのこだわり(葛菓子は自社製造)

  5. 立地(下市町)の豊かさ

<意志>

  1. 葛への認知を増やしたい

  2. 吉田屋のブランド力UP

  3. 地元還元・雇用創出

  4. 女性の働きやすさ

  5. 海外への展開増

ひとりでも多くの女性に、葛の魅力を届けたい

「吉田屋さんには、女性目線での企画力・営業力・商品があります。
すでに、女性たちが好む商品を独自のブランドとして確立されているので、私たちができることは、さらにその魅力を新しいターゲットやマーケットに届けること、ブランディングをすることだと感じました」と北川さん。

そして、葛の特徴や成分などについて改めて理解を深め、その視点からも女性に向けた提案ができるのではないかと話しました。

「葛にはイソフラボンやサポニンが豊富に含まれています。イソフラボンは女性ホルモンの『エストロゲン』と似た働きをするとされるため、美肌、肥満、血流、PMS、更年期症状などを気にする女性にとって、やさしいハーブではないかと感じました」(北川さん)


ブランドコンセプトは「味覚の旅」

台湾のデザイナー・Leoは、吉田屋での研修の中で、「味覚の旅」を感じ取ったといいます。

台湾からオンラインでプレゼンテーションするLeo

「吉田屋さんの歴史、商品、味を知るために、私たちは下市町や吉野山、天川、洞川、大峯山を訪れました。その美しい風景や食べ物の美味しさ、楽しい時間を台湾のLeoが感じとってくれ、『味覚の旅』というコンセプトができました」(乃一さん)

「味覚」の「味(み)」は「美」や「魅」に、そして「旅」は「人生」や「道」にと、言葉を広げながら視点も広げていった吉田屋チーム。

プレゼンテーション資料より

ブランドイメージやキーワードとして、吉田屋のある「下市町」、修験道の入り口があることから「神秘的」、「透明感(葛、空、山、空気、水、川)」、「自然の光」、次の世代を意識して「つなぐ」の5つを提示。

さらに、これらを踏まえて、お土産需要を意識したかわいくて上品なデザイン、修験道を掛け合わせた山伏パッケージ、持ち運びができるパッケージ、ロゴなどを提案しました。

台湾デザイナーが提案する、新しい葛の食べ方とは?

台湾のLeoはデザインコンセプトと、新しい葛の食べ方、今後のプロモーションについて提案。

「奈良と台湾がコラボレーションすることで、新しい葛を世界に発信できるのではないでしょうか?」とLeo。

そして、文化(culture)、交流(communication)、イノベーション(innovation)をベースに、下記4種類の新しい葛の食べ方を提案しました。

「Kudzu Cake with Matcha & Sliced Apple・抹茶と薄切り林檎の葛餅」
(前菜)

Kudzu Cake with Matcha & Sliced Apple・抹茶と薄切り林檎の葛餅

屋根をイメージした薄切り林檎、家をイメージした葛餅、湖をイメージした抹茶を合わせた前菜。

「Avocado and Smoked Salmon Tart・サーモンとアボカドのセルクル葛餅」(メインディッシュ)

Avocado and Smoked Salmon Tart・サーモンとアボカドのセルクル葛餅

プレーンとゆず味の2種類の葛餅をミックス。1皿で4段階の味と食感が楽しめる。

「Mixed Kudzu and Crispy Cereal・葛餅三種入りのフルーツシリアル」
(デザート)

Mixed Kudzu and Crispy Cereal・葛餅三種入りのフルーツシリアル

葛餅、チョコスティック、ベリーを合わせて、異なる食感が楽しめる一皿。

「Yuzu-Flavored Sparkling Drink・ゆず葛餅入りのカクテル」
(ドリンク)

Yuzu-Flavored Sparkling Drink・ゆず葛餅入りのカクテル

試作時から好評だった葛餅ドリンク。特に好評だったスパークリングカクテルを開発。

そして、これらのメニューをポスターにして、新しい葛料理を世界に発信したいと話しました。

プレゼンテーション資料より

全世界の女性のためのブランドを目指したい

最後にプロモーションについて触れた吉田屋チーム。
葛は透明感が特徴であるため、透明に特化したインスタグラマーなどとコラボレーションする、吉田屋の蔵を活用するなどでBARを開催するといったプロモーション案が出されました。

その他、スポーツイベントとコラボレーションするなど、日本だけでなく全世界の女性のためのブランドを目指したいとしてプレゼンテーションを締めくくりました。

足元を見つめ直すきっかけになった

明治15年創業の吉田屋からは、4代目の冨美さん、5代目のやよいさんが出席。プレゼンテーションを受けて、下記のようにコメントしました。

「今までもトレンドを意識しながら色々な商品を考えてきましたが、このプロジェクトを通して、これまでとは違った視点のとても良いプレゼンテーションをいただけて光栄です。
吉田屋のある下市町が修験道の入り口にあることを改めて気づかせていただき、足元を見直すきっかけになりました」(4代目・冨美さん)

左:4代目の冨美さん、右:5代目のやよいさん

「今回いただいた提案内容をひとつずつ形に起こせるように、吉田屋としてやっていきたいと思っています。今後ともどうぞよろしくお願い致します。」(5代目・やよいさん)

【プレゼンテーション資料は下記よりご覧いただけます】

次回のレポートVol.3は、大橋茶屋チームのプレゼンテーションをお届けします。