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REM


「これ、元彼が家に置いていったやつ。捨てといて。」

大量の空ペットボトルを押し付けた挙句に手渡してきたのはコンビニ袋に入った電子タバコ端末だった。

タバコなんか吸ったことないよと思って困惑する自分をよそに、停車する特急列車の先頭車両に足早に乗り込む。車内に足を踏み出す直前で引き返して自分の方へ駆け寄る。

近くまで来て、何かを伝えようとして、そしてすぐまた車内に戻る。

発車メロディが鳴る。声をかければ引き止められる距離とタイミング。思ったまま何もしない。扉が閉まる。滑り込むように彼女が列車に乗る。




帰りがけに、ゴミ集積場にあるペットボトル廃棄箱にご丁寧に1本ずつ袋から取り出して入れていく。最後の一本が廃棄箱に入りきらなかったから燃えるゴミの方の箱に投げ入れた。


取り残された古いシルバーの電子タバコ端末をもてあそびながら、知っているようで知らない景色を歩いたところで目が覚める。



なんだったんだ今の夢。
ひょっとしたら実際に起きてることを知らせるメタファーかも。週末まで遠い火曜日のコンフィデンスソング。
少なくともゴミは正しいゴミ箱に捨てています。




携帯を見る。午前3時。またやった。

浅い眠りに辟易しながら二度寝を試みる。

二度寝をするためにそこそこの決意とエネルギーを消費するから、本当は6時26分のアラームで1発で起きたい。

会社の同期は二度寝できる幸せを味わうためにわざと2時にアラームをセットすることがあると言っていた。思わず「正気か」と言ってしまった。踏切に望遠鏡を担いで天体観測でもするつもりか。4月18日の関西は雨予報だよ。

どうせだったら起きて活動したい。やりたいことも終わってない。けど3時から活動すると日中のガス欠は目に見えている。

ここは寝ておかねば。そう思って携帯をいじりつつ、気合いで二度寝三度寝、x度寝までする。だから寝てないわけじゃない。睡眠時間だけ見ればよっぽど健康かもしれない。
が、満を持して正式に起床した際の体のだるさとすっきりしない頭を抱えてみると、さっきまであんなに手放したがっていた睡眠が唐突に恋しくなる。結局仕事が終わって家に帰る頃にはガス欠で、ひどい時には19時過ぎに寝る。そんな幼稚園児でもアニメを観てる時間に寝るから夜中に起きるんだ。

だから意味不明な時間にLINEの返信をするときはだいたい一回目の起床後で、起きているのではなく、起きたのだ。


いつもに増して霞んだ目と頭を引きずって這って行った仕事で過去最大のミスをしでかした。散々周りに迷惑をかけて、そして人生初の経緯書である。
不規則な眠りが脳のパフォーマンスを著しく低下させている。そういう言い訳。

その晩は課長と先輩の歓迎会のはずだったのに僕のアフターフォローみたいなことにもなってしまって、ありがたいんだけどややこしかった。
それでいて飲んだ夜は遅くなる。10時半には解散したけど寝たのは結局12時過ぎで、追い討ちの不規則。明くる日は三度寝の末に寝坊しかけた。ミスった次の日に寝坊なんてしていたら本当にクビが危なかった。

元気だし、健康診断もオールAだけど、健康と健全はまた別のものらしい。
もはや連日酒池肉林の宴を繰り返した挙句に内蔵をぶっ壊して早死にする酒飲みの、豪快で退廃的な生き様の方が一般的な「幸せ」ってやつに該当するんじゃななかろうか、という気もしてくる。

自分はもう二度寝しなくて済む身体になれればそれでいいです。赤字切って高いオーダーメイドのマットレスと枕買ったのに。次は何に課金するべき?アロマ?眠剤?VENEX?ちゃんとした眠り方を探してるんですが誰か知らないか?こうなればカネで解決も辞さない。




この土日はかなり有意義に過ごした。土曜日は運動したし、日曜も京都を歩き回ったから適度に疲れている。
睡眠導入の観点で言えば万全の状態で23時に寝た。この時間に寝ておけば大丈夫だろう。


そして迎えた月曜日。相も変わらずに朝3時。もはや笑える。寝過ごさない程度に三度寝して出社しただけ偉い。



顧客からの苦言を適当にやり過ごして仕事を終えて帰宅し、シャワーを浴びていたところで、修正するべき経緯書をすっぽかしていたことを思い出してパンクバンドのボーカル並みに絶叫して喉を痛めた。大馬鹿。 


こうなればいっそ朝3時から経緯書を書く許可をくれ弊社。






【急募】
・正しく眠る能力
・フレックス制度
・のど飴

【学んだこと】
日記と経緯書は別の言語

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