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アートギャラリーに増設される小さいコーヒースタンド

近年のAI技術の発展は、建築業界にも大きな変化をもたらしています。AIが大量のデータやパターンを分析し、最適な設計案を提案することで、設計プロセスにおける時間の短縮やアウトソーシングの削減が可能となり仕事の効率化が期待されています。

しかし、これまで人的な作業に頼っていた業務をAIが代行することによって雇用の不安定化や失業者の増加が懸念されている一方で、AIでは表現しきれない創造性や感性の部分においてはまだまだ人の力が必要とされるのが現状と言えます。

このプロジェクトは実際にクライアントから依頼を受けたという設定で生成AIを用いた内装パースの作成・提案を行い、またそのプロセスについて考察していくことで、生成AIを取り入れた設計提案の新たなプロセスを構築し、表現するための可能性を検証していきます。

なぜ今回、生成AIを用いて内装パースの作成を行うかについてですが、

・設計の前段階でのデザインのアイデア出しとして活用する。
・クライアントとのイメージの共有をより活発化させるためのコミュニケーションツールとして活用する。
・クライアントの要望をより迅速にデザインに反映させ、様々な表現やデザインのパターンを提案する。

といったことが挙げられ、設計提案を行う上での新たな可能性について考察することを目的としています。

第一回目の今回は『アートギャラリーに増設される小さいコーヒースタンド』をテーマとして、実際に生成AIを用いて実践していきましょう。


ミッション

20坪のコンテンポラリーアートギャラリーを運営する35才のオーナーからの依頼。ギャラリーではこれまで若手アーティストを中心とした現代アート作品の展示を開催している。

アートをより身近に感じて欲しいのと、現在の物件が飲食許可が取れることから入り口付近にTO GO機能を持たせたレセプションカウンター兼カフェスペースを設けたいとの要望があり、提案を行う。

カウンター内にギャラリー対応のスタッフとカフェ対応のスタッフ2名が入れるスペース。

アートギャラリーのアイキャッチとなるようなデザイン性を求めているが、展示スペースからはアートの妨げにならない設計を求めている。

予算は300万程(エスプレッソマシーンや厨房機器は別途)想定している。

工事期間は1ヶ月で、工事後直ぐに展示会開催が決定しているため、工事期間はズラせない。

アーティストの物販や、ゆくゆくはアーティストとコラボしたカフェグッズなどの展開も考えているので、物販スペース(ショーケースなど)も考えたい。

生成AIによる内装パース作成までのプロセス

①コンセプトの作成とイメージの収集

内装パースの作成にあたり、まずはデザインのコンセプトの作成とデザインのイメージ収集を行います。

コンセプト:アートをより身近に楽しめる地域の憩いの場となるコーヒースタンド

コンパクト且つシンプルなデザインによって広い開口部を持たせて、自然光を多く取り込み、外部と調和された明るく入りやすい空間を演出します。また木材を用いたフレームは、空間に温かさを与え、床と壁面の統一された素材や色は、空間に一体感を与えます。シンプルな構造のコーヒースタンドは、アートの展示や物販商品の陳列の什器として活用することができるため空間に繋がりを持たせることができます。これにより地域の人々が気軽に立ち寄れる新たなコミュニティが生まれる地域の憩いの場となります。

デザインのイメージ

デザインのイメージ

②プロンプトの作成・入力

生成AIで画像生成をする際には、プロンプトの入力や生成したい画像のイメージ写真の添付が必要となります。
※プロンプトとは、生成AIにイメージの方向性を指示するテキスト。

そこで大まかなイメージを生成するためのプロンプトを作成と入力を行います。

①で述べたデザインのコンセプトをプロンプトに変換すると
Prompt:A photo of a cafe space with plywood counter besides the wall, featuring natural wood textures. A woman in white stands at the reception desk. The interior design includes concrete floors and walls. In the background is a contemporary museum. There is a large window that gives off soft sunlight, creating a calm atmosphere.
このようになります。

そしてこのプロンプトをMidjourney(生成AI)に入力すると

生成画像①

このような画像が出来上がります。

②出力した画像にさらに指示を加える。

次に、①で生成した画像をさらにコンセプト通りのものに近づけるためにプロンプトの追加と訂正を加えます。

追加・訂正する項目としては
・自然光が多く取り込まれていることが分かりやすい視点にする。
・床とコーヒースタンドのカウンターの色調を揃える。
・コーヒーメーカー等の機材を加える。
などが挙げられます。

そこで先ほど入力したプロンプトに以下の文章を加えます。
Prompt : Different angle, there is a big window on the left side. There are some coffee machine or equipment on the counter, A women is serving coffee.

そしてこのプロンプトをMidjourney(生成AI)に入力すると

生成画像②

このようになります。
更に、外の景色の変更や椅子の設置などといった細かい訂正を加えると

生成画像③

コンセプト通りの思い描いていたイメージを作成することができます。

感想・考察

今回、実際に生成AIを用いて内装パースを作成し、感じたことは

・AIに的確なプロンプトを入力するための語彙力が求められる。
・自分の中で明確な作りたいもののイメージを持つことが重要である。
・生成された画像を改善するためのフィードバックループでより目標に近い画像を生成することができる。

といったことが挙げられ、まだまだAIは単なる道具であり、活用する人間側のスキルが求められていることが分かります。

しかしAIを活用するためのスキルを身につけることができれば、より一層表現の幅が広がり、仕事の効率化を図ることができます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は『アートギャラリーに増設される小さいコーヒースタンド』をテーマとして、実際に内装パースの作成を行いました。今後も生成AIによって様々なテーマを元に、生成した内装パースの紹介をしていきます。


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