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現場主義の人(中村哲さんを想う)

昨日(1/25)はペシャワール会で現地代表であり、医師の中村哲さんのお別れ会があったとインターネットのニュースで見た。

昨年の12月のこと。ジャララバードの宿舎から、いつものように作業現場に向かう途中に亡くなった。

僕はニュースの第一報(中村さんが銃撃されたこと)をスマホのYahoo!ニュースで見て、一刻でも早い回復を願ったが、それは叶わなかった。享年73歳。志半ばにこの世界を去らなければならなかった、中村さんの想いは心中察するに余りある。

僕の中村さんへの思い入れは、2001年の米国同時多発テロ「9.11」が起きた後の「国会特別委員会」での参考人招致での発言を見たことがきっかけだ。

自衛隊による後方支援を可能とする特別措置法案(テロ対策当別措置法)における審議は、日本の自衛隊の活動領域を変える一つの転換点であった。

なお、この法律名は「平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法」というそうだ。(長い・・)

当時の僕は、高校生。受験での「政治経済」での取り扱いには気になるし、世界に目を向け始めていた頃。

とりわけ、沖縄への修学旅行をきっかけに「米軍基地問題」に関して調査を通じてテロ直後の政治の動向は目を離せなかった。ワイドショーも、連日ニュースとして取り扱っていた。その時に中村さんがテレビに出てきた。

「現地の対日感情は非常にいい。自衛隊が派遣されると軍事的存在にしか映らず、これまで築いた信頼関係が崩れる」(2001年10月13日/衆院テロ対策特別委)

その上で、中村さんは「自衛隊派遣は有害無益」とまで言い放ったのだ。

こんな強い民間人がいるものか。というのが当時(高校生であった頃)の印象で、批判を恐れぬ中村さんの姿勢は今でも心に焼き付いている。

高校生の自分は「やっぱり、人に叩かれるのは嫌だし、自分の信念を貫くことにそこまでのパワーをかけることだろうか?」という、自分の損得の物差しで物事を考えていた。そのように振り返る。

その後、僕もカンボジアの教育支援のNGOに携わることになり、中村さんの行動には深く敬服させられていった。

先日、noteに記した緒方貞子さんも中村さんと同じで、「信念」と「パワー」の人だ。「信念」は現場で突き動かされる、感情に由来するのではないか。色々な人の生き方を見ていて、そのように感じる。

「現場」が自分を成長させる。(積極的に、現場に出ること。)

特に、当事者として物事に関わりながらも客観的に物事を見れる二つの視点が大事であるように思う。それは、商いでも同じこと。ミクロの視点とマクロの視点が大切だ。

そして、最後に「情熱」が物事を動かす。(常に、当事者意識を持つこと。)

中村さんは後年、次の言葉も残している。(この言葉は、ホームページで読み知った。どのような場で語られた言葉なのかは分からない。)

「平和とは観念ではなく、実態である」

その言葉を見た時に、noteの次のトピックスが思い出された。(編集者の鈴木さんが「コミュニケーションデザインを事業とするasobot代表の伊藤剛さん」の著作。『なぜ戦争は伝わりやすく平和は伝わりにくいのか』を紹介する記事だ。)

「戦争」は凄惨な現場を映像や写真で共有できるが、「平和」はそうは行かない。鳩が飛び立つイメージ、人々がニコニコしているようなイメージ・・

先日訪問したルワンダの「ジェノサイド博物館」で見た死体は、生々しく。恐怖を見るものに訴えかけた。確かに、平和は雲をつかむようなイメージしか思い浮かばない。平和は観念なのか?

中村さんは「平和とは観念ではなく、実態」と言い切った。

中村さんは乾燥して何もない、いわば戦時の砂漠から。井戸を掘る活動などを通じて、平和を(イメージではなく)実態として捉えたのだ。

中村さんのお別れ会では同氏の著作の朗読あり、「平和」を次のように言葉にされていた。

ガンベリ沙漠の森は静寂が支配している。樹間をくぐる心地よい風がそよぎ、小鳥がさえずり、遠くでカエルの合唱が聞こえる。高さ10メートルに及ぶ紅柳が緑陰を作り、過酷な熱風と砂嵐を和らげ、生命の営みを更に広げる。里に目を向ければ、豊かな田畑が広がり、みな農作業で忙しい。用水路流域はすでに15万人が帰農し、生活は安定に向かっていた。それは座して得られたものではない。生き延びようとする健全な意欲と、良心的協力が結び合い、凄まじい努力によって結実したからだ。

中村さんの見られた景色は、その場に行かなけれ分からなかった景色だ。

真に大切なことを感じて、行動に移す。一度もお目にかかったことはありませんが、たくさんの学びを得ました。僕も中村さんと同じように、未来に向けて普通では見れない景色を経験を通じて自分のものにしていきたいと思います。

静かに広がる緑の大地は、もの言わずとも、無限の恵みを語る。平和とは観念ではなく、実態である。

ご冥福をお祈り致します。


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