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アナーキー・"ブロックチェーン"・ユートピア〜"シェア"による無政府コミュニズム〜

タイトルは、リバタリアンとして有名な哲学者ロバート・ノージックの『アナーキー・国家・ユートピア』から引用している。ブロックチェーンは、無政府主義の思想から生まれたと言っても過言ではない。そして、ビットコインなどの暗号資産は今でこそ資本主義の象徴のようになっているが、本来は権威主義的資本主義に対抗する手段、国家主義に対抗する手段として生まれたものである。つまり、ビットコインは無政府主義的な思想こそが革命的だったのだ。ここの認識が多くの人が全く間違っているところだろう。そして、ビットコインを可能にしたブロックチェーンの技術は、無政府主義を実現し得る可能性を秘めている。実際に、暗号資産の実現によってそれが一定程度証明された。

アナキズムは様々な思想と相性が良い

アナーキズム(無政府主義)は、資本主義とも、共産主義(コミュニズム)とも、自己責任論とも相性が良い。アナルコ・キャピタリズム(無政府資本主義)は、超自己責任社会として市場原理を重要視する。また、マルクス主義は無政府主義だという見解も強い支持を受けている(マルクスが無政府主義者であったかどうかは、見解が真っ二つに分かれる)。社会主義なのに無政府?と意味がわからないと思う。しかし、有名な社会主義者の多くは無政府主義者でもあった。つまり、社会主義には国家社会主義と自律分散型の相互に助け合う社会主義とで分かれており、無政府主義者かつ社会主義者は後者なのだ。旧ソ連や中国のような国家社会主義・国家共産主義とは訳が違っている。ここには、労働組合や保険組合などを重視するサンディカリズムやアソシエーショニズムも含まれる。要するに、国家でも企業でもない「組合」が人間らしい最低限度の生活を保障していこうとする試みを無政府社会主義と呼ぶのである。昨今話題に上がっている『人新世の資本論』は、まさにこのアソシエーショニズムの重要性を説いており、マルクスは無政府主義者だという立場をとっているように思える。

ブロックチェーンは「国家」の代替案になれる

私は組合によって国家や企業に依存しないコミュニズムを作れる可能性があると思っている。コミュニズム(共産主義)と聞くと、嫌な気持ちになる人も多くいることは事実であろう。しかし、一つ断っておきたいのは、あくまで無政府状態での組合主義は実現可能性がなくはないと思っているに過ぎない。ただ、これにも限界があるだろう。私が提案したいのは、ブロックチェーンを国家や組合の代わりに使うということである。前述した通り、ブロックチェーンは無政府主義的な発想から生まれた技術である。これを使えば、シェアリングエコノミーを圧倒的に加速させることができるであろう。『人新世の資本論』でもこんな面白い指摘がある。

シェアリングエコノミーはアプリの利用者たちが共同管理する。IT技術を駆使した「協同」プラットフォームを作るのだ。p.266

斎藤のいうIT技術とは、まさにブロックチェーンのことである。このシャアリングエコノミーを実現していくための具体的なアプリの例を出そうと思う。近年では、メルカリやジモティーの登場によって「シェア」がかなりしやすくなった。新しいもの、新品じゃなくても良いし、環境にもお財布にも優しい。ジモティーに関しては、家具家電をタダでもらったり、あげたりできるのだから、極端なことを言えば、生活に必要な家具家電や食料、移動するための自転車などをジモティーもらえれば、収入が0円でも生活できるのである。これは斎藤のいう「ユニバーサルベーシックサービス」である。ベーシックインカムではなく、ベーシックサービスだ。インカムの方は、お金を上げて最低限の生活を保障するが、ベーシックサービスは、生活に必要なもの(コモンズ)を現物支給することで、そもそも収入0でも生きていける基盤を整えようという発想が根本になっている。だから、生産するモノの量は減り、GDPは下がることになる。斎藤はこれを「脱成長」と呼んでいる。

ただ、メルカリもジモティも、一部の大企業が運営しており、掲示板に掲載する広告で儲けたり、販売手数料という形で中抜きしている。そのおかげで、私もメルカリで売った商品の売り上げから手数料を結構引かれてガッカリしている。これはシェアリングエコノミーではあるものの、運営者が得をする仕組みになっている。ビットコインなどのブロックチェーンは、この「運営者が得をする」という構造を絶対に許さない。そもそもの思想の根源が、反権力・反権威主義である以上、プラットフォーム側が利益を1円でも得ることは許されないという理念から、ビットコインに運営者はいない(不思議に思うだろうが、いわゆる"運営者"は本当に存在していない凄すぎる技術なのだ)。だからこそ、メルカリやジモティーのようなプラットフォームをを完全な自律分散型のブロックチェーンで実現することができれば、中抜きされずに売る方も買う方も得をする。一部の勝者を作らない理想的な世界観がブロックチェーンにはあるのだ。

ブロックチェーン無政府共産主義の誕生

ブロックチェーンというテクノロジーを駆使することで、冗談ぬきに無政府状態の共産主義(コモニズム)を実現できるかもしれないと言われている。そんなことが起これば、どんな世界になっていくのだろう。

私も組合とブロックチェーンをうまく組み合わせながら、少しずつ改善点を修正することでこの自律分散型の無政府共産主義は作れると思っている。電気や住居などジモティ的なアプリではどうにもならないインフラは、組合で準備する。収入がほとんどない人にも、タダで利用できるようにみんなでお金を出し合っって運営し、生活に必要なモノ(コモンズ)はブロックチェーン型ジモティーでシェアする。これで多くの人は安心して暮らすことができるであろう。このくらいなら普通にできる。少なくとも、ここ数十年間の間でこのような変革は徐々にではあっても、しかし確実に続くだろう。

アナーキー・"ブロックチェーン"・ユートピアは、すぐそこまで迫っている。

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