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【DERTA研究チーム】デザインやコミュニティについての実践研究を始めます

DERTA研究チームの米山です。

わたしたちは普段、意識的にも無意識的にも様々な「コミュニティ」との関わりを持っています。代表的なものとしては、学校、会社、地域、自治会などがありますが、以下の定義を踏まえれば、マンションやお気に入りのカフェも、コミュニティと呼べるかもしれません。

【コミュニティの定義】
人間が、それに対して何らかの帰属意識をもち、かつその構成メンバーの間に一定の連帯ないし相互扶助(支え合い)の意識が働いているような集団

広井良典「コミュニティを問いなおす」


では、DERTAが運営する「cos DERTA(コサインデルタ)」などのコミュニティはコミュニティなのでしょうか。もしそれがコミュニティと呼べるものだとして、どのような性質のコミュニティなのでしょうか。今の地域に必要なコミュニティはどのようなものであり、それはどのようにデザインすべきなのでしょうか。

このような問題意識から、DERTAでは「研究チーム」を立ち上げて、デザインやコミュニティについての探求・研究を開始しました。その1テーマとして、cos DERTAなどの「DERTAコミュニティ」を分析対象に、コミュニティに関する学術研究も参照しながら、コミュニティ運営の知見を研究しています。

コミュニティとは何か

そもそもコミュニティとは何でしょうか。

社会学者G・ヒラリーによれば、「コミュニティ」という言葉の定義には94通りのものがあったと言われているほど実に多様な概念ですが、その特性の1つとして「内部的な関係性と外部との関係性を持つ<関係の二重性>」が指摘できます。つまり、コミュニティはある一定のメンバーで構成されており、その意味では<閉じたもの>ですが、同時に、外部との関係も不可避であるという意味で、必然的に<開かれたもの>ということです。

これは、哲学者アーサー・ケストラーによって提唱された「ホロン」の概念と類似しています。ホロンは、「それ自体で全体としての性質を持つが、より大きな全体の部分になっているもの」を意味するもので、そのホロンについてアーサー・ケストラーは以下のように指摘します。

生物は要素の集合体ではない。(略)体という側面を見れば、生物は循環器系、消化器系などの<亜全体>(サブホール)で構成される全体であり、その亜全体は器官や組織などより低次の亜全体に分岐し、さらにそれは個々の細胞に、その細胞は細胞内の小器官に・・・とつぎつぎ分岐していく

・ここで強調すべき点は、このヒエラルキーの構成メンバーのひとつひとつがどのレベルにおいても亜全体、すなわち<ホロン>であるということだ。それは自己規制機構とかなり程度の高い「自律性」(あるいは自治性)を備えた、安定した統合構造である。

細胞も筋肉も神経も、ヒエラルキーの上位のセンサーに対し「部分」として従属しているが、同時に準自律的な「全体」としても機能する。まさに二面神ヤヌスである。

アーサー・ケストラー「ホロン革命」

このようにコミュニティとは<閉じたもの>であるとともに<開かれたもの>でありながら、それは<部分>であるとともに<全体>でもあり、そして、「自律性」も備えた、あたかも生物・生命体のような存在と言えるかもしれません。


DERTAにとってのDERTAコミュニティの意味

実際、DERTAメンバーはすでに、そのようなコミュニティの<二重性>や<生命体>的な特性を実感しています。つまり、cos DERTAなどのコミュニティは、コミュニティメンバーのみなさまに楽しんでいただけるようにDERTAメンバーがご提供した場であると同時に、みなさまお一人お一人の振る舞いや言葉を通じて、DERTA側が変化させられてきた場でもあります。

今回の研究では、みなさまから変化させられるDERTAコミュニティの様(さま)を明らかにしていきたいと考えています。


研究の今後について

前述のように、この研究はDERTAコミュニティを題材に研究を行う、実践的な研究です。そのため、「今ココで起こっていること」に価値があり、都度、考察・分析結果をDERTAのnoteなどにご提示していきたいと思います。

そこで記載するものは、生煮えの仮説になるかと思いますが、みなさまからのフィードバックもいただきながら、より質の高い知見にしていきたいと考えていますので、今後とも、ぜひご指摘いただければ幸いです。

最終的には、ある程度noteなどでの考察・知見が蓄積できたタイミングで、研究成果としてまとめた上で、ご共有したいと考えています。

DERTA研究チームの概要

研究チームのミッション



研究テーマ

  • 「デザイン」というものを当たり前の存在にしたり、デザインが必要なときに誰でも行えるような道具・方法論を普及していくことを目的に、社会における様々な「デザイン」について実践的研究を実施

(経済産業省「第4次産業革命クリエイティブ研究会」報告書をもとに、DERTAにて加筆)


研究チームメンバー


研究チームメンバー


本記事の執筆者

米山 知宏 / @kedamatti
東京工業大学大学院社会工学専攻修了。シンクタンクにて、情報政策に関する調査や情報システム開発のPMO支援、デジタルを活用したまちづくりについての調査・研究等に従事。その後、パブリックセクターでの勤務を経て、株式会社コパイロツトにジョイン。現在は同社にて、プロジェクトを推進する仕組みづくりをサポートするProject Enablement事業の責任者を務める。