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赤ら顔、酒さ

赤ら顔

皮膚科外来をしていると、午前中の外来だけでも赤ら顔を主訴にくる人は
5-10人程度はいる印象だ。
赤ら顔といっても色々な原因が挙げられる。
commonなものを挙げるなら代表的なものは以下がある。

・アトピー性皮膚炎
・脂漏性皮膚炎
・酒さ
・皮膚筋炎
・光線過敏
・全身性エリテマトーデス
・皮膚筋炎
・丹毒
その他たくさん。

少し専門的な病名がでてくるな。

今日ここで取り上げたいのは、そう。本日のお題である
<酒さ>についてである。

酒さってきいたことあるだろうか?


酒さとは

日本皮膚科学会の尋常性痤瘡治療ガイドライン 2017によると、
①紅斑と毛細血管拡張,ほてり感を主体とした赤ら顔とも呼ばれる症状
=紅斑毛細血管拡張型酒皶(第1度酒さ)
②痤瘡に類似する丘疹・膿疱を主たる症状とするが面ぽうを伴わない
=丘疹膿疱型酒皶(第2度酒さ)
③鼻部を中心とした腫瘤を形成する
=鼻瘤(第3度酒さ)
④眼瞼・眼球結膜の充血や炎症を伴う
=眼型酒さ(眼合併症)➡単独もしくは上記3つに混在
の4型に分類されている。

えーーーっ。
専門用語の乱立で意味不明なのでわかりやすく。

①第1度酒さ=顔の全体的な赤み、ほてり
②第2度酒さ=にきびみたいなぽつぽつ
③第3度酒さ=鼻が赤くぼこぼこになる
④眼型酒さ=目が充血して赤くなる

簡単にまとめるとこんな感じ。

でだ。
外来でよく診るのは、第1度、2度がほとんど。
「痒くないけど火照るんです」(痒くなることもある)
「他の皮膚科でステロイドもらったけど治りません」
そんな感じ。

私自身、赤ら顔で幼少期より苦しめられている。
幼少期は寒暖差で真っ赤になったり、
最近は起床時は調子いいが、マスクのすれや、こもった感じで
すぐ赤くなったりする。
マスクからでているおでこは白くて、お褒めいただく肌なのだが、
マスクの下は真っ赤っか。
(なんなら肝斑もある)←美容皮膚科医かよ。
外来で来た患者さんの気持ちは、痛いほどよくわかるのだ・・・。


じゃ原因は?

ってことなのだが、現時点では不明なのである。
紫外線暴露、アルコール、急激な寒暖差、毛包虫などが増悪因子として知られている。外来で診ていると、個人差が結構あって

夏、紫外線暴露で悪くなる人
冬、外は寒いのに、室内に入ると暖房で火照る人

など様々なケースがある。

じゃ、治療法は?

ってことなんだが。
日本は海外と比較して保険での治療が遅れており、下記のほとんどは自費製剤だ。
ここからは病型にわけて解説していこう。


第1度=赤み

★は効果の強さ

<外用>
・アゼライン酸…★
・メトロニダゾール外用薬…★
・タクロリムス軟膏…★

※ブリモニジン(MIRVASO®)…★★★
 アドレナリンα2受容体作動薬
 血管収縮作用により顔の赤みを抑える
 日本では2022年5月時点で未承認

※※ロゼックスゲル®0.75%(メトロニダゾールゲル)
  が酒さに対して保険適応になりました!
  禁忌や併用注意など色々な縛りがありますが、
  これは我々皮膚科医にとっても、患者さんにとっても、
  選択肢が広がり、酒さ治療が一歩前進したと考えます。
  (2022年5月30日追記)

<レーザー治療>
・IPL(光治療)、PDL(色素ダイレーザー)、Nd:YAG…★★★


さて治療法に関して細かくみていこう。
まず赤みは非常に治しにくい。
上記参照いただければわかるが、基本外用は★1つ。
唯一★3つの外用薬、ブリモニジンがは日本では未承認薬。
ネット上では個人輸入した方の体験情報などが満載だが、基本クリニックなどで手に入る薬ではない。
となると、★1つの薬たちをためすことになるのだが、
率直な感想、まぁそんな変わらんよね・・
って感じだ。
やっぱりレーザーが効果あるので、最初からレーザーを説明することが多い。
そしてスキンケアは非常に重要なポイントである。
刺激性が亢進している状態であるので、スキンケアは肌に刺激のないものを選ぶのがよい。
(ヒルドイド系を処方する医師もいるが、血行促進作用があり、あわない方もいる。私はあまり好んで出さない。)
そして日焼け止めは必須。肌が弱い方はノンケミカルのものを選ぶとよい。


第2度=ぽつぽつ


<外用>
・アゼライン酸…★★★
・BPO/クリンダマイシン(デュアック®)…★★★
・メトロニダゾール外用薬…★★★
・レチノイド外用薬…★★

<内服>
・ドキシサイクリン(ビブラマイシン®)…★★★
・イソトレチノイン…★★

<レーザー治療>
・IPL(光治療)、PDL(色素ダイレーザー)、Nd:YAG…★


こちらは1度と一転、外用と内服治療がメインだ。
2度に関しては自費の外用薬であっても、レーザー治療を一回するのと比較して値段は抑えられるので、我々としても比較的治療が進めやすい。

あとは1、2度に共通して漢方(桂枝茯苓丸など)も処方することがあるが、
治療のスタンダードはやはり上記なのである。

3、4度は赤ら顔から少し話がそれるので治療法に関しては今回は触れない。


赤ら顔の私が気をつけていること


じゃあ、皮膚科専門医で美容皮膚科医の私が気をつけていることとは。

①アグレッシブな治療をしない

例えばダーマペンとか。私も毛穴とかニキビ痕とか治したいからさ!
やりたい気持ちはめちゃくちゃあるんだけど…
それと引き換えに失うものが大きすぎる。
だから私はやらない!!!

・・ってのはうそで・・

やっぱり美容皮膚科医として、なんでもやりたい願望高め。
誘惑に負けて施術して、結局反省するパターンが多い。
うん。気をつけよう。


②ビタミンA製剤は慎重に。

ゼオスキンのセラピューティックとか。
コロナ初期にSNS上でめっちゃ話題になったとか。
赤ら顔の私はやらない!

というよりも。

そもそも3カ月間も赤い顔なんて、
もともと赤い顔の私には本当に、本当に!
耐えられなさすぎる!!
っていうのが本音。
ほんとーに赤くなるのがいやなのだ。

じゃあビタミンA製剤使えないの?
ってわけじゃなくて、私も普段から様々なメーカーのビタミンAを愛用している。ゼオスキンもそのうちの一つだが、
ビタミンA濃度を上げるときは慎重にしている。

今肌赤み強いから、とか
風邪ひいてるから、とか
トナーがぴりつくから、とかで
今週は控えておこう。

となるわけである。
肌の少しのサインも見逃さないのが大事なのだ。


③日焼け止めはマスト!塗り直しは基本!

日焼け止めは朝塗って、もちろん昼にも塗るし。
塗りやすいように日焼け止めスプレーも愛用している。
外出中には紫外線対策がぬかりないのだが、
案外盲点は
室内の窓際!!
窓際にいると、少しパソコン作業しただけで、めちゃ顔が火照ってくる!
窓際はさけて、室内にいても日焼け止めしっかり塗って、完全防備が必要だ。


以上、私の経験と、医学的エビデンスに基づいた治療法をご案内した。
自分自身への戒めとともに、
世の悩める赤ら顔の方々の、一助になれば幸いなのである。


参考文献
・日本皮膚科学会の尋常性痤瘡治療ガイドライン 2017
・F. Anzengruber et al. Swiss S1 guideline for the treatment of rosacea. Eur          Acad Dermatol Venereol. 2017 Nov;31(11):1775-1791




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