見出し画像

バグ技の美学 -バグ技やるために生きてる-

僕は、昔自分がやっていたゲームのRTA(Real time attack)を見るのが好きです。
ゲームのRTA走者は、普通のプレーでは実現できない好タイムを叩き出すため、色々なバグ技を使ってゲーム空間を走ります。

普通ではあり得ないルートを使って、1時間かかる場所を5秒で通過したり、壁を抜けていきなり最後のボスの場所まで飛んで行ったり。
RTAの中で繰り広げられるバグ技の、そういった「必殺技感」に、なんとも言えない魅力を僕は感じます。
そして、物理空間、現実都市の法規の抜け穴や、人間関係が起こせるバグのようなムーブメントを使って現実空間をRTAしたいと思っています。

バグ技の何が面白いんだろうね

RTAの世界以外でも、バグ技、というものがゲーマーの中ではよく話題になります。
僕の世代(90年代生まれ)で有名なものでいうと、ゲームボーイ時代のポケモンで、簡単なボタン操作をすることで、記憶装置の配列をいじり、ポケモンをレベル100にする技があります。

画像1

バグ技を発見する、もしくは再現してゲームシステムが崩れた時の喜びは、全てが発見されて、分からないものなどない、となってきた今の世の中で、未知のものを「発見」した喜びに似ていると思います。

僕は、作りて側としてコードを書くこともあって、多くのバグは「ただ何かが動かない」、「やったはずの処理が実行されない」、「黒い画面になる」という、残念な感じのものが多いです。
でも、中には「レベル100になるバグ」とか、「壁を通り抜けられるバグ」とか、「キャラの見た目がめちゃ面白くなるバグ」みたいなのが隠れていて、僕は、そういった、バグの持つアップサイドに注目したいです。

スケールや時代は全く違いますが、「未知の発見」という観点から見ると、バグが発生してそれをみつけたときや、調べたバグを再現したときの感覚は、新大陸を発見したコロンブスのような気分に近いと思うんです。

画像2

今の世の中、世界のあらゆる場所がGoogleEarthで見ることができて、調べたことには大体答えがあって、日々の生活はとても快適で、整備が行き届いている。
それは便利で素晴らしいことのはずなのに、どこか味気なさや物足りなさを感じる。
そんな中にある、デザインが行き届いた、まるで遊園地のようなゲームの世界。
そこに突然現れる、その世界の法則を無視したような不思議な現象。

画像3

ロジカルな、恣意性の塊のように見えるプログラムから生まれたバーチャル世界のゲームが、その複雑さがあまりに高くなったゆえに生む、ロジックの歪み。
そこから生まれる、偶然生まれた表現や体験に、何か神秘的な、有機物が持っているような魅力を感じます。

画像5

バグの「ウケる」以上の価値って?

バグに、言語化できない可能性(ミラクルの外側)が存在すると思っているんです。
こういった状況の面白さは、単純に見慣れたものとは違う風景が見られる、というものが一つあると思います。
でも、もう少しかんがえると、その面白さの核は、ぼくたちが存在している、巧妙にデザインし尽くされて、ぼくたちでは変化させられないように見えるシステムの周縁、外側、骨組みが露出することで、想起されることだと思います。
マトリックスで、Neoがマトリックスの存在に気づいた感じ。あの「気づき」を得られるチャンスが、バグには存在していると思います。

画像6


簡単に言えば、
え、俺でもワンチャンこの複雑なシステムに一枚噛ませられるんじゃね?傷跡残せんじゃね!?
という希望が、バグには隠れています。
現実の都市空間は、人間の集合によって出来ていて、その個人個人の意図(デザイン)によりできています。
そして、どんな人工物にも必ず不備(バグ)が存在すると仮定した場合、都市空間もバグを含んでいます。

それこそ、「突然Lv.100になっちゃう」みたいなバグが。

バグは、発生すると、僕たちが無意識にとらわれている「枠組み」、「システム」の外側が意識されて、そこから解放されます。
現実社会で起こすバグは、資本主義社会・民主主義社会の不具合を可視化させることになるのかもしれないです。
そうすることで、近代社会システムが生んでいる様々な世の中の閉塞感に、一石を投じたいと考えています。

世の中を良い方向に変えるハッカーってカッコいいよね

ライフハック、などの単語に見られるように、英語圏での「ハック」は最近では、
「政府や企業のネットワークに違法侵入し、情報を盗んだり、破壊したりすること」ではなく、

多くの人が見落としていた、ウマいやり方を見つけること

というような意味に変わりつつあるなぁと思うんです。

ハッカー文化の最も特徴的な一端は、非常に直感的である事を良しとする部分である。例えば同じ動作をするプログラムを作るにしても、直感的に・感性でプログラムを興し、それを元に発展させていく。
この過程を経て、直感(程度によっては霊感と形容しても良い)的で優秀なハッカーは神格化され、そのライフスタイルは触発された他のハッカーに伝染する。詰まる所強烈な個性に起因する優秀なハッカーのライフスタイルは、1960年代のヒッピー文化の影響や1970年代のテレビのシリーズドラマによって顕著な方向付けが成されている事も多く、時に非常にマイナーな文化が異常に盛り上がりを見せることもある。
その一方で、ハッカー文化の根底には、親切で大らかな博愛精神が脈々と息づいており、時に宗教的ですらある。その原因は、他人に影響を与え得るハッカーの多くが、その実において人間的にも親しみやすく、技術を独占するよりも広く共有して、皆で大いに楽しみたいとする奔放さを持っている事にあると思われる。(Wikipedia “ハッカー文化” より)

ゲームの裏技(ハック)を発見する人も、またハッカーと言えると思います。
ハックに至るまで、まずバグを発見する必要があって、そのためには、対象とする世界の掟・ルールを深く、論理的に、構築的に理解し、かつ直感に従っていく、という絶妙なバランス感覚が必要だと思います。

論理だけでは、システムに飲み込まれるし、直感だけでもまた自分の外側に行くことができない。

ポケモンのLv.100になる方法は、プログラム上の不備(バグ)を突いたものです。
同様に、僕は都市や物理世界が含むバグを、ハックして、ユーモアのある形で顕在化させるための設計や活動を行いたいと思っています。


その、最初の実践として、この前は「渋谷でブランコ」を作りました。
これからどんどん、世の中をいじくり回して行こうと思います。
そして、ハッカーなので、親切で大らかな博愛精神を持ち、奔放に、みんなで楽しんでいきたい、と思っています。

一緒にバグを見つけてくれる人、ハックしてくれる人、連絡お待ちしています。

ここから先は

0字

¥ 100

よろしければ記事購入経由でサポートをよろしくおねがいします!僕のタバコ代になって、クリエイティブが加速します!タバコはハイライトメンソールです!