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英語字幕版「名探偵コナン」を観てきて 制作陣に伝えたいこと

子供と英語字幕版の『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』を観てきました。
時間的にあう上映がたまたま英語字幕版だったというだけで、特別な理由はありません。聞こえてくる言葉は日本語ですし、子供は何語であろうが字幕を読む年齢でもありません。特に問題はないと思いました。
ただ面白い体験だなとは思いました。


我が娘二人には生まれた瞬間からバイリンガル教育をしてきました。普段からテレビもFOXなどのケーブルテレビ中心に英語でしか観せていません。DisneyやPixarなどの映画も然り。生後すぐからそうなので、本人たちも特に疑問すら持たずに今まで来ています。

さすがに日本のアニメや映画は日本語で観ています。ドラえもん も ジブリの映画も、日本語の映画は日本語です。コナンも当然日本語で見るべきだと思いますし、まず子供が日本語を選びます。二人とも言語の切り替えが十分にでき、Disneyなどの映画の日本語吹き替えは「なんか変」と言って、家でも自分たちで英語に切り替えて観ています。こうした言語のチャンネルを与えるのが僕の役目でした。

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月曜の朝だったのでさすがに劇場に子供の姿は他にありませんでした。
うちの子は学校をサボったのか?違います(笑)土曜日が参観日だったために、月曜日が代休になったのです。シフト制の僕の仕事もオフ。
子供のためにポップコーンを食べながら付き添いました。

平日の午前中ということで全体的に観に来ている人は少なかったです。
その中に外国人の女子大生らしき二人組がいました。上映後にコナンのグッズコーナーを二人で楽しそうに見ていたので、外国でのコナンの人気の高さがうかがい知れました。

さて字幕の英語ですが、捜査に手詰まり「これで仕切り直しだ」という場面。"Back to square one"という字幕が出ていました。とても簡潔でナチュラルな表現。他にも字幕が見えている範囲で、不自然な表現はなかったと思います。英訳に関してとても好意的にとらえています。ネイティブにもわかりやすい英語表現でした。

気づきましたでしょうか。
字幕が見えている範囲」と書きました。

そうです。
字幕がよく見えないのです。

これは外国人も困ったことと思います。どういうことかと言うと、白の背景に白い字幕だっと記憶していますが、それでは字幕が読めないのです。頻繁に登場する主役級の怪盗キッドのスーツも白色なので、白の背景がまぁ多い。目を凝らして必死に読もうとしている間に会話も進み次の字幕へ移る繰り返し。そんなに白い背景が続くのかと思うかもしれませんが、実際そうでした。全部が白ではなく黄色などの箇所もあったかもしれませんが、とにかく淡い色が続く背景で白字の字幕が続くのであれば、とても字が読み取れるものではありませんでした。僕は日本語が聞こえているのでストーリーにはついていけたのですが、これでは聞こえてくる日本語が理解できない外国人はさぞかし困ったのではないかと思います。

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わざわざ英語の字幕で上映するというのは、明らかに海外市場を狙っているマーケティング。それにしては中途半端というか、実用的な観点から映画が作られていないと感じました。「はい、英語の字幕つけたよね」で終わってるような、取ってつけたような印象です。制作の段階からの繋がりが見えないのです。

もしや制作陣内にバイリンガルスタッフがいないのかなとも思いました。Multicultural(多文化)な環境にある企業でなければ、日本の外を視野に入れるようなプロジェクトならばなおさら大成はしないと思います。典型的な日本の縮図を垣間見たような気がします。英語なんて翻訳アプリで対応すればいいでしょ、という。断言しますが、言葉というものは数学の公式を解いているように言葉を当てはめるものではないのです。言葉をツールとしか見ていないようでは、いつまでたっても社交辞令的なうわべだけな会話で終わって、内容に深みが出ません。様々な国籍の人をチームに入れるべきですし、その人たちの意見に耳を傾けないと、自分たちに何が見えていないかもわからないのですから。intercultural(異文化コミュニケーション)の分野があまりにも日本は低いと常日頃から感じています。

これが例えばトム・クルーズ主演の大人向けの映画だともっと真剣に対応していたのではないかなとも思います。子供向けの映画ということで扱いが劣るように感じられました。ただ一つわかってほしいのは、映画を観に来るのは健常者だけではないということです。耳が不自由な外国人もいるはずです。完全に字幕に頼っている層が一定数いるのです。

それに僕の娘たちのように英語の環境で育ったり、インターナショナルスクールに通う子供はたくさんいます。昨今は目に見えて国内のインターナショナルスクールの数が増加しています。明らかに日本在住の外国人の数が増えています。僕の外国人の同僚も、吹き替え中心の上映時間の設定には毎度困っています。すでに遅いくらいなのですが、そろそろ真剣に非日本人への対応を考える時ではないでしょうか。

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あくまで想像になりますが、字幕が読めなかったというクレームは配給会社には届かないのではないでしょうか。クレームを入れることができないのですから。外国に来て、外国語でクレームを入れることはよほど日本語に長けていないとできません。自分たちが日本語ができないのが悪いと考える人の方が多いでしょう。それほど日本語が得意なら、そもそも英語字幕で観ないのですから。

この少子化の進む国で、日本の若年層から取れる利益もしれています。外国の視聴者を取り込まないと数字も伸びません。それなら真剣に対応を考えるべきです。クレームがないからと言ってみんなが満足しているという意味ではないことを強調したいです。

子供や学生、健常者も、そうでない人も、真剣に映画を観てきています。
制作側も真剣に対応してほしいと感じました。せっかくきちんとした英語の字幕ができているのに。せっかく堂々と輸出できる人気のある日本のアニメがあるのに。
本当にもったいないです。


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