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ホン雑記854「あなたの手のぬくみ いのちということ」

昨日もまた、何げなくテレビつけてチャンネルザッピングしてたらNHKの「ハートネットTV」が目に留まった。


美容家のIKKOが出ていて、もう20年以上も前からパニック障害だという。驚いた。
以前どっかの芸能人が言ってたけど、とても気遣いのできる真面目な人なんだけど、自分がイジられたりディスられたりすると瞬時に「ちょっと~」と返して笑いにできるらしい。
笑いに対しても柔軟で、地頭が良くないとそれはできないよなぁ、と思ってその時オレは聞いてた。とても真面目な人は、笑いのハードル高いからね。すぐ、けしからんってなっちゃうから。
それが、人のことはバカにしないけど、自分はバカになれるってのはすごいもんだなぁ、と思ってた。

発症したのはメイキャッパーとして独立して経営者になった重責からだった。
最初は後頭部の痛み、めまいや吐き気など、体の異変として気づいた。タクシーに乗って病院に向かうが渋滞だった。何車線かあったんだろう。周りを他の車で囲まれて動けない状況にあることを認識すると呼吸困難に陥った。
診察の結果はパニック障害。その場で即入院が決まるほど重度の。

一週間の入院でかなり快方に向かって、本人も「治ったのかしら」なんて思っていたが、退院したその日から即具合が悪くなる。そうして長年に渡って患いを抱えることになった。薄皮を剥ぐように年々マシにはなってきてるらしいけど。
というわけなので、彼がお茶の間に顔を見せるようになった時には、決死の覚悟でバラエティ番組に出ていたことになる。

どれだけ踏ん張っていても、それでも人前に出るのに心折れそうになる時もある。そんな時は主治医に頼んで書いてもらった1枚の手書きのメモを見るという。そこには、

「大丈夫、大丈夫。」

と書かれていた。
これはオレの勝手な推測だけど、そのメモは筆圧で少し文字がへこんでたようにも見えたんで、懐に忍ばせたメモ用紙の字跡を指でなぞる日もあったんじゃないだろうか。


こないだnoteで『スマホ脳』に書かれていた内容を載せた。
タブレットに表示させた文章を数人の子供たちに読ませる。別グループの子供たちには、それとまったく同じ内容をプリントアウトして渡した。
どっちかが極端に文字が小さい、なんて実験のはずもないので、手にするものがタブレット機器なのか、紙の質感を感じるかの差ぐらいしかないんだろう。
で、文章を紙で渡されたグループのほうが中身をよく理解していた、というものだ。

なぜそうなるのか、『スマホ脳』には書かれてなかったけど、オレ個人的には、タブレットのほうは「これは文章を伝えたいという意図そのものの専用の端末ではない」と受け手の脳が知ってるからじゃないだろうか、と考えている。

駅や街中ではポスターの代わりに、それと同じような大きさのデジタルサイネージが使われるようになった。
広告を載せる側からしたら最初の機械の出費以外は安くつくだろう。新たなポスターを刷る必要もないし、貼り変える手間もない。表示内容の変更はいともたやすくおこなえる。
でもそれは、客にとっては「メインコンテンツ感」みたいなのが減って見えるんじゃないだろうか。だって、PCやスマホで見るあらゆる画面は、どれがコンテンツでどれが広告なのか非常にわかりづらいんだから。

見るほうは無意識下のうちに、デジタルディスプレイに映った情報のほうは「どうせこんなもの」という微妙な裏切られ感情を帯びながら見ている気がするんだよね。まともに相手する気がしないというかね。
それよりはやっぱり紙の本や、実物のペライチの用紙のほうが「読もう」という気概が最初から違うんじゃないか。

そこでさっきの「大丈夫、大丈夫。」のメモなんだけど、これはまったく同じ見た目のものをプリントアウトしてもIKKO氏にはお守りにならないだろうということなんだな。
巧妙に筆圧の跡をちゃんとへこませて、IKKO氏にも見分けがつかないほどの見た目にしたとしても、誰かが「それレプリカですよ」と伝えて本人が認識してしまうと、それはもうヘナヘナと効力を失うだろう。
「大丈夫」を書いてくれた先生の手がこのメモ用紙に触れていた…。そのことをIKKO氏が知っている。そんなこともアナログの重要な要素のひとつなんじゃないだろうか。

子供たちに見せたタブレットと紙との違い。IKKO氏のお守り。
どちらも受け手の「受けよう」「捉えよう」「汲もう」という、脳…というか、やっぱり心のありようによって、説得力は雲泥の開きを見せるんだろうな。


おそらくは正しかろう知識。ライフハック。物知り。損得。コスパにタイパ。分析力…。
そんなものばかりが目立つ時の人たちの説得力がなかなかに低いのは、そのあたりが影響するのかもしれないねぇ。
「触れてきた物語の経験」のようなものを感じない人にはぬくみもまた無く、それではまともに相手する気にもならんのよのぅ。
その物語ですら最近は「ナラティブ」なんつって符号化しちゃうんだけどねぇ。購買欲を刺激するために必須のライフハック、とかなんとか言ってね。

はぁ。世知辛い世の…いーや、そんなことはないっ!
世界は希望に満ち満ちているぜぇ~!(説得力)




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【今日の過去詩リーズ】




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