ホン雑記987「ダークマン」
鍵盤練習2時間を課してから一番つらいのは何かってーと、「うへぇ、今日も2時間やるのかぁ」でもなければ、「全っ然上手くならんやんか。大丈夫なんかワシ」と薄闇に襲われるのでもなく、「これ、やってて意味あるんか」と思いかける瞬間だ。
ふたつ目と三つ目の差は、「上手くなったとしても」だ。
この闇はかなりイヤだ。
こう言っちゃ失礼なのかもしれないけど、NHKの「no art, no life」に出てくるユニークな芸術家たちのようになりたいと思うことが多々ある。彼らとその周りの苦労も知らんでそんなことを思うのは失礼…ってか、しゃらくさいんだろうけど、思うもんは思うのだ。
その闇は、MintJamの「Crying Moon」の歌詞じゃないが、「闇に口開ける人の世の出口」をちょくちょく思いさせる。
「意味あるんか」と自問してしまうと、死にたくなりはまったくしないけど、死にたくなると思う自分が生まれるんじゃないかと毎回恐れる。だから心の隅っこで口を開けそうな出口に瞬時にフタをする。
これはもはや芸当だと思う。普通考えたくないことは考えちゃうもんだけど、このレベルのやつは考えたくないと思った時点で離れられる。
だから「死にたくなると思う自分が生まれるんじゃないか」の恐怖を感じてる時間は2秒ほどもないと思う。
それでも、そんなことを思いもしないだろうユニークな人たちを羨んでしまうのだな。少なくとも自分がやってることを疑うなんて苦痛はないだろうから。
ということを半年ほどやってきた。
初期のほうの「2時間弾くのが苦痛期」(いまもわりかしそうなんだが)を越えると、この「意味あるんか期」がやってきた。
これはなるほどだった。イヤイヤの作業に慣れてきたってことはその道の人、2時間鍵盤を弾く人になってきたわけで、そうすると今度は「この道はあってるのか?」というふざけた悩みごとが顔を出してくる。
よく考えたらこれは仕事にたいしても同じスタンスだな。小学校の6年間より長くいた場所がない。
若い頃はそれでいいのかもしれんが(あまり良くなかった気もするが(でも長くいてもそう思っただろうが))、人生もおそらくは半分を過ぎて何かに集中しはじめるってのは怖さを伴うもんだなぁと思う。
あぁ、申し遅れた。最初にこれを書くべきだった。
その「意味あるんか」もなんとなく影を潜めてきた感ある。
だって、そんなこと考えても、しょうがないから。
あーわかるとも。そんなん最初からわかるやろって言うんやろ?
でもそれは最初にはわからんのよ。他にやることを減らして減らして(いまゼルダに時間取られまくってるが)、「人生」と「音楽生」が一緒ぐらいに感じられるとこに来て初めて、「あー、考えたってしょーがねーじゃーん」ってなる。
自分の人生ダメかもなんて思ってもしょうがないように(逆に数恒河沙回思ってきたわけだが)、音楽の道に対してもそれを思ってもしょうがないんだとやっとわかってきた。ロボット工学で言えば、不気味の谷を越えた感覚に近いだろうか。最後に現れる大峡谷を越えたのだ。いや、最後かどうかはわからんけどね。
でもそういう感覚を自分がうっすらなぞってみて初めて、アスリートや一芸を極めかけた人をホントに尊敬するようになった。
だからまぁ、いいことなんだろね。すごいと思える人が増えるのはいいことだ。
書くことがまったく思い浮かばないで書きはじめると、こんなダークな内容になるのねー。
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