ホン雑記 Vol.576「ハードルを下げるのはダサいのかなぁ～？」

近頃、勝手に命名した「接触不可視の法則」のことをよく思うせいか、ラピュタでシータがいう「土から離れては生きられないのよ」も付随してこれまた思う。

触れているもの…つまりは今の環境や、すでに得ているものは感じられないということを大仰に言ったまでなんだけど、「土から離れて」しまっていることも不可視だ。

触れてたり離れてたりと真逆でややこしいけど、たとえば水。
茶道になぞらえた「湯道」を勧めている放送作家の小山薫堂氏が言ってたけど、世界200カ国近くある中で、水道の蛇口をひねって出て来た水をそのまま飲めるなんて国は10カ国ぐらいしかないという。しかも日本人は湯船に浸かる。
綺麗な水を毎日沸かしてその湯に浸かるという、他国からみたらキチガイじみた行為をしている。「どうだ明るくなったろう」の山本唯三郎と同じ…いや、ちょびっと小さい穴のムジナだ。
これは日本に生まれてしまったために気づかない環境との接触であり、それが贅沢の極みとわからないことが、土から離れてしまっていることだ。

この「すでに得ている」は恐ろしい。
以前、永ちゃんが糸井重里氏と対談してて、そこで自分の子に何度も言ってることがあるって流れになった。
お前たちには敵がいる。それは「苦労したことがないってこと」だと。生まれた時から冷暖房完備。そしていつかそのことは牙を剥いてくると。

永ちゃんは子供の頃かなりの貧乏暮らしだった。その貧乏は、永続してそこから這い上がるバネになるほどのコンプレックスだ。ある意味盲目的にもなる成りあがりなのに、逆に恵まれてる側にいずれ訪れる自分が経験したこともない問題を読めるってのはやっぱりすごい。自分が苦労から這い上がると、色々与えてしまいたくなりそうなもんだけど。

で、その「牙」とは、最終的には自分で作る「闇」だろう。日本が自殺大国なのを不思議がる国内外の人は多いけど、これは当然の結果だ。すでに得ていれば得ている有り難みはなく、失う恐怖だけが多い状態で生まれて来る。

最近ふと、なんでこんな島国が経済大国2位の時代があり、世界時価総額でこんな時代があったんだろうかと不思議に思ってたんだけど、

地政学的影響も多いだろうけど、間違いなく「敗戦を経験したから」だと思った。もう這い上がるしかやることないんだもの。

で、結局言いたいことは「すでに得ている」ってのもホントは錯覚で、この肉体も、30年以上前の好景気も、先人からの借り物にすぎないってことなんだよね。なーんも得てるものなんかない。そもそも、死んでいく身なんだから、地球から借りてる資源でしかない。

とするなら、這い上がりエネルギーの途絶えた日本の没落のはじまりを憂いててもしょうがないのかもしれない。日本沈没などあってはならん、けしからん、英霊たちに申し訳が立たんとずっと思ってたりしたけど、よく考えたら何様目線だよって話だわな。自分の頭の上の蝿だけ追っとけよと。
むしろもう出稼ぎ労働とかの覚悟を決めたほうが人生楽しいのかもしれない。強制的に海外旅行行けるぜー、いぇーいとかね。書いてて虚しいけど。でもまぁ、死んでも自分で死ぬわけにはいかないじゃない。みなさんね。

でもホントさ、人間100年生きちゃうとするなら（その時にはさらに伸びてるだろうけど）オレはあと50年もあるわけで、それは今まで生きてた47年間よりさらにえげつない変化の速度になってるのは間違いないんだよね。

あー、お先真っ暗だねー。
って、まぁ全部見通せてないからこそオツで良いんだけどね。先を全部見通せてたら、それこそすぐ死にたくなるかもだしね。うひゃひゃひゃ。

最近のオレは外食したり、ちょっと大きめのスーパーで買い物してるだけでも調子いい時は半泣きするようになってきた。もう有り難くて有り難くて。こういうヤツ死ぬほど腹立つ人もいるんだろなぁ。わかりますぅ～（笑）

そのうち蛇口から水出て来るだけで嗚咽する人間になりたい。