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子育ての強い味方だ「電話健康相談」エッセイ3選

赤ちゃんの発熱、熱痙攣、いつもとちがうこと…自分のことよりも冷静になることが難しい子育て中の健康トラブル。そんなときは電話健康相談が役に立つ!と感じるエピソードをご紹介します。

2022年に募集した「私の電話健康相談エッセイ」から、子育て中の方に読んでほしいエッセイ3作品です。

転ばぬ先のワンコール
(のんパパ 東京都 39歳 男性)

昨年妻が出産のため、長男をおいて故郷の高知へ帰った。「離乳食、大丈夫?おやつ、あげすぎないでよ。やっぱり一緒に連れていこうか」心配そうに妻が言う。だが俺も俺で父親としてのプライドがある。

「大丈夫。いいから任せとけ」それでも妻の顔は引きつっていた。

そんな不安が的中したのか、妻がいなくなってから長男に異変が起きた。どういうわけか食後、頬が真っ赤っ赤。体温計は37.5分を示す。これは大変だ。あいにく日曜日で病院はどこもやっていない。だけど妻に心配をかけるわけにもいかず、インターネットを検索した。

『赤ちゃん 発熱 』に対するアンサーは100以上。読んでいたらキリがない。「そうだ。電話相談だ」私は妻から預かったメモを取り出した。

「すみません!いま七ヶ月の息子が熱っぽくて!日曜で病院はどこもやってなくて!奥さんは里帰りでちょっといなくて!それで、それで」口任せにしゃべりまくる。電話の向こうの声は完全にかき消された。

それでも「少し落ち着きましょうか」と言われ、ハッと我に返った。

「ではお父様。お子さんの月齢を教えてもらえますか」私は導かれるように月齢と今の症状を伝えた。

「まあ、このくらいならちょっと様子を見ていく感じで大丈夫でしょう。泣いたり、食べたりしたあとは体温が上がりますからね」

「そうは言っても37.5分もあるんですよ!平熱が35.8分の私にしたら致死レベルですよ」私が畳み掛けるように言うと看護師はたったひと言。

「この月齢の赤ちゃんは平熱でも37度前後あるのが普通ですから」と言った。

途端に自分が恥ずかしくなった。息子が寝たあと、私はしばらく考えた。

そう言えば妻もよく電話相談を利用していた。真夜中でも胎動が弱くなればすぐ相談し、産後も様子がおかしければすぐ電話をかけていた。そんな妻を見ながら私は何も学ぼうとしなかった。息子の平熱はおろか、一般的な赤ちゃんの平熱すら知らない。そんな私を果たして『父親』と呼べるだろうか。

「今まで任せっぱなしで悪かった。君の大変さがよくわかったよ」自宅に戻った妻に私は謝った。

妻も驚きつつ、それでも「ありがとう」と労った。

現在、健康相談の番号はリビングの見えるところに貼ってある。人生山あり谷あり、思いもよらないこと沢山あり。そんなときにいつでも頼れる先があることは心強い。

電話健康相談こそ、転ばぬ先の杖ならぬ、転ばぬ先のワンコール。これからも不甲斐ない父親の味方であり続ける。

母の背中を押すアドバイス 
(れいな 神奈川県 57歳 女性)

子育て中には、子ども達の健康やちょっと気になる行動について、よく電話相談をさせていただきました。

病院へ行くべきかどうか迷っている時、或いは友達には少し相談しにくい内容の場合には、必ずと言ってよいほど健康相談ダイヤルに電話をして、アドバイスをいただいていたように思います。

そんなある日、2歳の娘が朝食の時に利き手とは反対の手でご飯を食べていることに気がつきました。「どうしたの?いつもと違うお手てだね。」と声をかけると、「いいの。」と答えます。その後、お絵描きや折り紙も利き手を下に下げたまま…。

さすがに気になって、「手を上に上げてくれる?」「どこか痛いの?」と腕をさすってみたり動かすように促したりしても、特に痛がる様子はなく、腕の上げ降ろし動作を普通に行うのです。

何か腑に落ちないまま、病院が昼休みの時間帯に健康相談ダイヤルに思い切って電話をしてみました。すると、「お母さんもご心配でしょうから、近くの整形外科を直ぐに受診されてみてはいかがでしょうか?」とのこと。

当たり前過ぎる回答にやや拍子抜けしながら、早速午後の診療時間に受診すると、「肘内障(肘抜け)」と診断されました。

どうやら、腕を身体の下敷きにしながら寝返りを打った拍子に肘が抜けてしまった様で、子どもにはよくある現象とのお話でした。

そういえば、腕の上下動は出来ても屈伸はしたがらなかったなと。先生が腕を掴んで肘を内側に倒すと、一瞬で腕の曲げ伸ばしが出来るようになり、帰りはスキップをしながら繋いだ手を振り回して喜んでいました。

自分の状態を上手く伝えきれない子どもにとって、普段と違う様子があれば先ずは受診させるのが基本中の基本。

もう少し様子を見ていたら、娘の苦痛は更に続いていたと思います。

そんな当たり前の心掛けを再認識させて下さった電話相談員の方に、この場をお借りして改めてお礼申し上げたいと思います。

本当につながったもの
(ゆーゆ 埼玉県 39歳 男性)

年の瀬の深夜1時。生後七ヶ月の子どもに異変が起きた。

「何科に行けばいいの?」
「とりあえず救急車じゃない?」
「いや、救急車の人だってこれじゃ困るでしょ」

はじめてのけいれんに夫婦で戸惑う。やがてけいれんは収まったが体温計は三十九度を示す。病院はどこもやっていない。

「すみません。子どもがけいれんを起こして、いま、熱があって、これは何科なのかわからなくて」早口でまくしたてる。

その勢いは完全に冷静さを欠いていた。しかし幸いにも相談員の方は看護師でその道のプロ。「はじめてのけいれんでしたらこのあと救急を受診してください」その声は落ち着いていた。

何より助かったのは救急車を待つまでの間、電話をつないでいてくれたこと。

「吐いたものが詰まらないように身体を横向きにして下さい」
「ボタンやチャックはゆるめてください」
「顔色はどうですか。呼びかけに反応しますか」

一つ一つに、思いやり。

おかげで私たちは落ち着きを取り戻し、娘は一命をとりとめた。

あとから聞くと『熱性けいれん』はちいさな子どもによくあるらしい。そうは言ってもあんなに震える姿を見たら、冷静ではいられない。はじめての事となれば、なおさら。あれ以来、ちょくちょく利用する電話健康相談。

今は何かあれば頼れるという安心感が半端ない。電話がつながり、命がつながる。そこで本当につながったものは絆なのかもしれない。これからも感謝の気持ちを忘れずに、娘の成長を見守っていきたい。

ありがとう、電話健康相談!

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