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スマートフォンから、なにできる?📱📡🤖

THE TECHNOLOGY NOTEの今回のお題「枯れた技術:ヴィンテージ・テクノロジー」に沿って記事を書いています。寝かせたからこそ使いごろになっているテクノロジーのメリットは大きくは次の3つでしょうか。

導入コストが低い:大量生産されているので安く利用することができる。
説明コストが低い:すでに普及しているので扱える人が多い。
費用対効果が高い:そうきたか!というびっくり感を作ることができる。

2020年を舞台に宇宙テロを描いた小説『オービタル・クラウド』(藤井太洋, 早川書房,2014)には、少々ネタバレになりますが、スマートフォンを活用した小型衛星が登場します。この小型衛星を複数台を用いることで、一般の衛星に負けないかそれ以上の効果を出すことができます。

テロリズムは政治的な目的のために暴力を用いる行動のため、国家や巨大企業などに対して個人や弱い組織が用いることが多い手段です。製造施設も資金もない中では必然的にコスパのよい枯れた技術を活用することになり、なるほどなと思った設定でした。

1980年、誰しもが持っていた電卓の液晶画面から「ゲーム&ウォッチ」が誕生したように、スマートフォンによる量産効果によって小型化&低価格化したイメージセンサやディスプレイ、通信などの諸技術は、2020年代の枯れた技術と言えるのではないでしょうか。

実際に、CES2023で話題になっていたアバターロボットWEHEADも、スマートフォンの部品を活用しています。奇妙な形の理由は”手のひらサイズの縦長ディスプレイ”。すでに大量生産されている物を活用することで、立体形状と低コストを実現したそうです。

CES2023 WEHEADのデモの様子 筆者撮影


このように、小さくて安くなった機器を複数台用いることで、コスト減になったり、大きなサイズの機器と同等または超える性能やを生み出すような取り組みは他にもあります。

宇宙開発スタートアップのインターステラテクノロジズは、ピンポン玉サイズの小型衛星を編隊飛行させることで、宇宙に巨大なアンテナを作る計画を発表しています。小さい衛星であれば低価格でつくることができ、工場用地も少なくてすみます。また、故障に対しても冗長性を持たせることができるとしています。編隊飛行のための位置制御や姿勢制御には電磁石を用いるということで、そんなところにそんな技術を使うのか!というヴィンテージテクノロジーならではの驚きがあるなと思いました。


すこし脇道にそれますが、小型の機器を複数台飛ばすことで通信を作り出す例としては、次のような地上での興味深い取り組みもあります。

2022年にソフトバンクと東京工業大学がが発表した「ドローン無線中継システムを用いた遭難者位置特定システム」は、山岳地などのサービス圏外エリアに、無線中継局の機能を持たせた複数台のドローンを飛ばすことで、一時的にサービス圏内エリアを構築し、スマートフォンの位置情報を特定する仕組みになっています。

小型化&一般化し、当たり前にカメラがついているドローンですが、カメラ付きのスマートフォンがこれだけ普及しなかったら、まだ高価な測量用や軍事用の危機で、複数台を活用するような発想は至らなかったかもしれません。

発表当初のiPhoneも、ガラケーですでに実現されていた既存テクノロジーの組み合わせでできており、いまさらそんなものはいらないと揶揄されていました。

フィクションの世界から飛び出してきたよう最先端のテクノロジーにもわくわくしますが、ありふれた技術を積み重ねて驚きや便利を生み出す「ヴィンテージ・テクノロジー」にも、世界を変えていく可能性があるのではないでしょうか。

この記事は、Dentsu Lab TokyoとBASSDRUMの共同プロジェクト「THE TECHNOLOGY REPORT」の活動の一環として書かれました。今回の特集は『ヴィンテージ・テクノロジー』。編集チームがテーマに沿って書いたその他の記事は、こちらのマガジンから読むことができます。この記事の執筆者は、Dentsu Lab Tokyoの なかのかな です。


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