人ではないものたちとの話し方
ChatGPTに調べ物の下拵えをお願いしながら、ふと疑問に思ったことを聞いてみました。
スマートスピーカーが家庭に入りはじめた頃、子供が音声アシスタントに何かをお願いする際に「please」を付けないということがアメリカで問題視されたそうです。その結果、AlexaにもGoogle Assistantにも子供達が乱暴な話し方をするとたしなめ、"please" をつけるとほめる機能が盛り込まれることになりました。
いまのところ、音声アシスタントは人格を持つものではありませんが、人と同じ言葉を扱う相手に対して、乱暴な言葉や行動を取ることに抵抗を持つ人も多いのではないでしょうか。
ボストン・ダイナミクスが4速歩行ロボットSpotを紹介した2015年の動画で、ロボットの安定性を示すために足蹴にするシーンが、かわいそうだと話題になったこともありました。
同じ年に豊橋技術科学大学と京都大学の共同研究チームがScientific Reports に発表した論文によると、人は手にナイフが刺さりそうな痛そうな状況を見た時に、それがロボットの手であっても共感を示したそうです。
人の共感力は命らしさのある見かけや動きをしているモノに対しても働いてしまうようです。
2014年に私の所属するneurowearチームで、mononome(モノノメ)というIoTならぬ"EYEoT"デバイスを試作したことがあります。
モノに取り付ける目の形をしたデバイスで、家具や家電につけて動きをセンシングし、目の表情で「キモチ」をフィードバックします。モノの「キモチ」は人との関わる時間や頻度で決められます。
mononomeを取り付けることで、夜中に開けると叱ってくれるお菓子BOX(この記事のTOP画像)、薬を飲み忘れると泣き出す薬箱、使われると喜ぶヨガマットなどを家族にすることができます。モノが家族の一員になって、健康を気遣ってくれると、良い習慣づくりができるのではないかという仮説から作られました。
試作時に気になっていた裏テーマとして人の「モノ扱い」がありました。ハラスメントやトラブルは、相手の心をなかったことにして「モノ扱い」することから生まれることも多いと思います。もしも常に周囲のモノの心が可視化される世界があったら、「モノ扱い」自体が変わるのではないか。新しいモノと人との関係の中で共感力がトレーニングされ、人と人との関係も、お互いにもうすこし思いやりをもてるようになるのではないかという思いがありました。
音声アシスタントが音楽をかけてくれたり、ロボットが配膳をしてくれたり、検索がチャット形式になったりと、人ではないものたちと話す機会がどんどん増えています。生活の中で、人がモノに自然言語で依頼し、結果を受け取ることが当たり前になりつつある中で、モノと人だけではなく、人と人の関係をよくするためにも、人ではないものたちとの話し方(HCI : Human-Computer Interaction)について考えることが、今後ますます大切になりそうです。
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