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「世の中を良くする不快のデザイン展」を終えて #05 映像ディレクター・畑野亮のつぶやき

「世の中を不快にするデザイン展」企画チームの映像ディレクター、畑野亮です。企画段階から参加し、本展示のPVを制作しました。

当時は社会人2年目で、紆余曲折しながらのPV制作となりました。PV完成までの経緯を書いていこうと思います。

迷走し続けた企画

まず、クリエーティブディレクターの中沢さん、コピーライターの佐々木さんにPVの企画を見てもらうことから始まりました。一発目に出した案がこちらです。

ぜ、全然違う…。デザイン展なのにオシャレさは皆無です。オナラしています。ここで、オシャレでかっこいい方向を目指そうということになりました(すごくざっくり言うと)。

また同じころ、展示のキービジュアルが完成しつつあり、「不快」を表現する絡まり合った根のようなモジャモジャを使えたらいいね、ということになりました。

しかし、一発目の企画から滲み出てしまっていますが、オシャレよりオモロイ系を頑張りたい人だったので、オシャレ映像への知識も経験もあまりありません。ここからファッション系の映像やミュージックビデオを見て勉強していきます。

そして次に出した案がこちら。

おっ、おおっ…? オシャレ…なのか…? 「結局、どういう映像になるんですか?」と尋ねられる始末。雰囲気や勢いで企画してはいけないですね…。 

いろいろ反省し、改めて出した案がこちら。

さっきよりは企画になってる…! ただ、ここから「不快のデザイン展」という企画のデリケートな部分を実感することになります。今回の企画では、「不快を与えることを目的としたデザイン」と誤解されたくないというフィードバックをもらいました(催涙スプレー、スタンガンなどですね)。

つまり、「不快」の部分が目立って出ないようにする。不快の先にある「快」こそが本展示のメインテーマであり、PVで伝えるべき内容ということがわかりました。

…それってどんな映像ですか…。む、難しすぎる。撮影は一週間後に決定しているのに企画がまだできていなくて結構焦りました。そんな中、本展示の資料を読み返しながら考えていた時、このコピーが改めて目に止まりました。

「不快」は私たちの生活をもっと「快」にする。

これを見て、生活という部分を今まであまり考えずに企画していたことに気づきました。不快が「生活」を良くしている、という部分が軸になるのだから、今回描くべきは生活だということを発見します。

そして、できた案がこちらです。

か、完成~! 生活の周辺には不快のデザインがある、ということを感じられる企画にしました(より「生活」感を強めるために編集で分割のレイアウトを変えました)。

いよいよ撮影

企画が決まり、いよいよ撮影に向かえることになりました。しかし、今回の予算は5万円。撮影も照明も、自分でやらないといけない厳しい条件でしたが、知人の協力もありカタチにすることができました。 

役者は劇団「南極ゴジラ」所属の俳優・ユガミノーマルさん、音楽は同じく劇団「南極ゴジラ」所属の俳優でありサウンドクリエイターでもある揺楽瑠香さんです。

ユガミノーマルさんは、表情の作り方や身体的なパフォーマンス力がとても高い方で、セリフの無い今回の映像はユガミさん無しに成り立たなかったと思います(少ないギャラですみません)。

揺楽瑠香さんの音楽は本当に素晴らしく、ガスコンロや踏切の音を心地よく入れ込んだ楽曲を作ってもらいました。今回の展示を象徴する楽曲になったと思います(少ないギャラですみません)。

おむつのパートは、中沢さんの知人に協力してもらいました。奇跡の一瞬を狙い続けるという、子どもの撮影ならではの体験を初めてすることができました。ありがとうございました!

展示ではなく、映像の話ばかりしてしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。苦労と学びが詰まった映像になったので、ぜひもう一度ご覧いただけると幸いです!

畑野 亮(はたの りょう)
電通クリエーティブX 映像ディレクター。神戸大学経営学部卒。劇団のPVを作ったことがきっかけで、映像ディレクターを目指す。好きなバンドはクリープハイプ。好きな俳優は高橋一生。いつかよろしくお願いします。

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