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Ⅰ.顎骨骨髄炎

Ⅰ.顎骨骨髄炎
 1.化膿性骨髄炎
  1)急性化膿性骨髄炎
  2)慢性化膿性骨髄炎
 2.慢性硬化性骨髄炎
  1)慢性巣状硬化性骨髄炎
  2)慢性びまん性硬化性骨髄炎
 3.増殖性骨膜炎を伴う慢性骨髄炎(ガレ-の骨髄炎)
 4.特異性炎
  1)結核症
  2)梅毒
  3)放菌線症
 5.放射線骨壊死

Ⅰ-1-1) 急性化膿性骨髄炎
感染経路
 a)歯性感染の拡大波及 (原因歯としては 下顎第一大臼歯
 b)深いポケット からの炎症波及
 c)血行感染 
 d) 外傷・骨折時の感染
原因菌 : レンサ球菌Streptococcus , 黄色ブドウ球Staphylococcus
好発部位 : 下顎骨 >上顎骨
好発年齢:いずれの年齢にも生じる
性差 : ♂:♀ =3:1
臨床症状:経過により4期 に分けられる
   初期:患部の拍動痛,軟組織の腫脹
      原因歯・隣在歯の打診痛
      所属リンパ節反応性腫脹と白血球増加
      発熱・全身倦怠感
  進行期:原因歯の弛緩動揺
      オトガイ神経分布領域
     (特に下口唇)の知覚麻痺
腐骨形成期:膿瘍・瘻孔の形成
      歯頚部からの排膿
Xray finding : 1-2 週後--境界不明瞭な 虫食い状 透過像
腐骨分離期:肉芽組織による腐骨の分離
      症状の慢性化
      腐骨周辺への新生骨形成
      骨柩(involucrum)

病理組織像:骨髄組織内の充血・水腫
      好中球浸潤,膿瘍の形成
      膿瘍内骨組織の壊死(腐骨形成

Ⅰ-1-2) 慢性化膿性骨髄炎
急性化膿性骨髄炎が鎮静化、慢性化した場合.弱毒菌により初発時から慢性
臨床症状:急性骨髄炎の症状を軽くしたもの
     腫脹、疼痛、排膿、腐骨形成、歯の消失など
X線所見:虫食い状の骨吸収像 , 腐骨分離線
組織像:化膿性炎症部--骨吸収・ 腐骨化を伴う化膿性炎
     慢性炎症部--骨髄内に線維芽細胞や毛細血管の増生慢性炎症細胞浸潤

Ⅰ-2.慢性硬化性骨髄炎
Ⅰ-2 -1) 慢性巣状硬化性骨髄炎
慢性炎症(根尖性歯周炎など)の持続により骨が硬化した状態(=硬化性骨炎)
好発部位:下顎第一大臼歯根尖部
好発年齢:若年者
性差:なし
臨床症状:特になし,X線検査で偶然発見
X線所見:原因歯根尖部 に広がる 限局性の不透過像
周囲に不透過帯を持たない
組織像:複雑な改造線を有する 緻密骨
    髄腔内には少量のリンパ球浸潤 を伴う
    線維性結合組織
問題点:セメント質増生を示す他の病変との鑑別
     根尖性骨異形成症
     開花性骨異形成症
     セメント芽細胞腫
     骨形成線維腫

Ⅰ-2-2) 慢性びまん性硬化性骨髄炎
弱毒細菌に対する炎症性の病変
好発部位:小臼歯部から下顎枝下部
好発年齢:思春期と 中高年齢層
臨床症状:疼痛・腫脹が間隔を置いて繰り返される
X線所見:透過部が多いが,徐々に不透過像が増加
組織像:骨改造線を有する緻密な層板骨 軽度のリンパ球浸潤

Ⅰ-3 増殖性骨膜炎を伴う慢性骨髄炎
ガレ-の骨髄炎
皮質骨外表面での骨膜性骨増生を特徴とする特異な型の慢性骨髄炎
好発部位:下顎骨体部
好発年齢:12 歳前後の小児
X線像: 皮質骨の肥厚
組織像:皮質骨表面に垂直な新性骨の添加 骨梁間には,軽度のリ ンパ球浸潤を伴う線維性結合組織

Ⅰ-4-3) 放線菌症
化膿菌感染に随伴する混合感染である
口腔内常在菌のActinomyces israeli 感染(日和見感染)
下顎骨に多い
臨床的特徴:①周囲軟組織の多発性膿瘍自潰して放線菌塊を含む膿汁を排出
      ②開口障害
      ③板状硬結
組織学的特徴:①膿瘍・腐骨の形成
       ②膿瘍周囲の肉芽組織内に泡沫細胞の出現
       ③周囲の著明な線維化
放線菌塊:放射状に配列する好酸性混紡状構造の縁取り

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