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悪性唾液腺腫瘍(SGT)の特徴

WHO分類では20個に分類される

1.粘表皮癌
2.腺様嚢胞癌
3.腺房細胞癌
4.多型腺癌
5.明細胞癌
6.基底細胞腺癌
7.導管内癌
8.腺癌 , NOS
9.唾液腺導管癌
10.筋上皮癌
11.上皮筋上皮癌
12.多形腺腫由来癌
13.分泌癌
14.脂 腺腺 癌
15.癌肉腫
16.低分化癌
未分化癌
大細胞神経内分泌癌
小細胞神経内分泌癌
17.リンパ上皮癌
18.扁平上皮癌
19.オンコサイト癌
20.唾液腺芽腫
(境界悪性腫瘍)

ここでは、粘表皮癌、腺様嚢胞癌、腺房細胞癌、多形腺腫由来癌を取り上げる。

1)粘表皮癌

臨床所見・・・耳下腺に好発。まれに顎骨中心性にも認められる。中年期だけでなく、若い世代にも発生のピークがある。構成細胞の種類により低悪性と高悪性に分かれる。

病理所見・・・粘液産生細胞、中間細胞、扁平上皮様細胞から構成。低悪性では、粘液産生細胞が多い。嚢胞形成することが多い。高悪性では、中間細胞と扁平上皮様細胞が多い(未角化)。異型性が強い。

2)腺様嚢胞癌

臨床所見・・・顎下腺、口蓋腺に好発。緩慢な発育を示すことから5年生存率はよいが、10年生存率は非常に悪い。予後は組織型に依存し、充実型が最も悪く、ついで、篩状型、管状型となる。神経への腫瘍浸潤による疼痛が見られることが多い。血行性に肺への転移が多いが、通常は数年経過例で認める。

病理所見・・・腫瘍実質の構造上の違いから3つの組織型に亜分類される。充実性胞巣(充実型)・・・真の腺管が少ない
篩状構造(篩状型)・・・主に偽腺管で、真の腺管もある。
管状構造(管状型)・・・主に真の腺管で、偽腺管は少ない。
  2相性の腫瘍・・・偽嚢胞(腫瘍性筋上皮で裏装) 真の腺管(腫瘍性腺上皮で裏装)

3)腺房細胞癌

臨床所見・・・まれ(唾液腺腫瘍の1-2%)耳下腺に好発(90-95%)。口腔内では頬、上口唇。低悪性度である。中年期(50代)だけでなく、若い世代にも発生のピークがある(小児では2番目に多い悪性唾液腫瘍)。女性に多い。通常は発育緩慢な無痛性腫瘤=低悪性。発育速い有痛性腫瘤の場合も。典型的には境界明瞭、浸潤性のものも。

病理所見・・・漿液腺房細胞様の腫瘍細胞の分化からなり、腺房様に配列(円状)。多角形、好塩基性顆粒状細胞質、円形の偏在核。間質は少ない。

4)多形腺腫由来癌(多形腺腫内に悪性化が生じた腫瘍)

臨床所見・・・まれではない(悪性唾液腺腫瘍の10%)。50-60歳→多形腺腫のピークより10-20歳高齢。やや女性に多い(55%)。経過の長い無痛性腫瘤が急に増大。潰瘍や神経症状が出現。境界不明瞭、浸潤性発育。

病理所見・・・癌腫部分 : 唾液腺導管癌、非特異的腺癌、未分化癌、筋上皮癌  多形腺腫部分 : しばしば硝子化した部分や軟骨様部分が痕跡的に見られる。多形腺腫→非浸潤型→浸潤型

以上より悪性唾液腺腫瘍の特徴をまとめると
1.急速な増大
2.境界不明瞭でときに多発性腫瘤形成
3.周囲組織との癒着や硬結
4.表面を覆う粘膜や皮膚の潰瘍形成
5.疼痛や麻痺などの神経症状
6.所属リンパ節や遠隔臓器への転移
7. 高齢者,舌下腺/口腔底/舌/後臼歯部の腫瘍

特に7の時は、悪性の可能性が高い。




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