歯肉を被覆する上皮組織

1.角化上皮・錯角化上皮・非角化上皮・・・臨床的には角化歯肉と非角化歯肉に分けることがあるが,角化あるいは非角化とはどのようなものを指すのだろうか?
組織学的には,口腔粘膜は重層扁平上皮で覆われており,①顆粒層と角質層をもつ正角化上皮,②顆粒層や角質層がない錯角化上皮,および③非角化上皮に分けられている.

(1)正角化上皮・・・皮膚に代表される一般的な重層扁平上皮には,明瞭な角質層をもつ正角化がみられる.基底膜上に円柱状(実際には多角柱)の基底細胞が一列に規則正しく並ぶ基底層,上部には無数の細胞突起(細胞間橋)によって互いに強く結合する有棘層がある.表層近くでは,細胞の形態は丈が低く細胞内にケラトヒアリン顆粒をもつ顆粒層となって,表層ではさらに扁平で細胞核が消失した無核の角質層(角化層)を形成する。口腔粘膜では通常,正角化がみられるのは咀嚼粘膜の付着歯肉および硬口蓋前方部といわれるが,付着歯肉は錯角化上皮となることが多い.その他,特殊粘膜に分類される舌背は,糸状乳頭には味蕾がなく,厚い角質層をもつことから,正角化に分類される.

(2)錯角化上皮 付着歯肉などにみられ,顆粒層の消失と表層細胞への細胞核の残存を特徴とする.顆粒層と角質層をもたないため,錯角化では,基底膜上から基底有棘層中間層表層の4つの層に分けられている.錯角化では表層細胞の細胞核が萎縮し,ヘマトキシリンに濃く染まる(濃縮核).

(3)非角化上皮 口腔の被覆粘膜にみられ,一般的には歯槽粘膜や頬粘膜,口唇,舌下面,口腔底,軟口蓋などが非角化上皮として分類されている.錯角化上皮と同様に,基底層有棘層中間層表層の4つの層に分けられているが,表層の細胞の細胞核には萎縮はみられない.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?