セレッソ大阪2024 〜後半戦〜
セレッソ大阪にとって30周年のメモリアルイヤーであった今シーズンが、そして3年半の小菊セレッソが終わりを迎えた。「リーグ優勝」というシーズン開幕前の目標は達成出来ず10位という結果に終わった。
今シーズンの日程が発表された時、最終節の相手がFC東京というカードを見て運命的なものを感じていた。2005年の最終節「勝てばリーグ優勝」という一戦の対戦相手がFC東京だった。2-1でリードした後半44分にCKから同点弾を許し、あと一歩で優勝を逃す。他会場で勝点3を積み上げて逆転優勝を成し遂げたのはG大阪。これを機に長らく「大阪=ガンバ」の構図が出来上がってしまった。最終節でFC東京相手に勝利して、19年前に成し遂げることが出来なかったリーグ優勝を手にするというドラマを想像した。が、残念ながらそんなことは起きなかった。
監督人事がうまく進んでいるようには見えず「31年目は期待できる!」と今のところは言えないけども、とりあえず2024シーズン後半戦を振り返り。
※前半戦(〜第20節 鳥栖戦)はこちら
第21節の名古屋戦はレオ セアラとルーカス フェルナンデスのゴールで2-1と勝利。この2人はシーズンを通して攻撃では個人技で局面を打開し、守備では高い献身性を見せてくれた。この2人がいなかったらと思うとゾッとする。浦和戦と鳥栖戦に続く勝利でホーム3連勝となったがこの試合を最後に再び勝利から遠ざかることになる。アウェイでの東京V戦は前半のうちに相手選手の退場で数的優位となるも1-1のドロー。平日開催となった天皇杯3回戦甲府戦で延長戦の末に敗れると続く川崎戦でもドロー。嫌な流れのまま「セレッソ大阪設立30周年記念マッチ」の新潟戦を迎える。
新潟戦では序盤戦の好調を支えた登里が12試合ぶりに復帰を果たし、開幕当初の登里がボランチのような立ち位置を取る形でビルドアップを試みる。立ち上がりこそペースを握るも徐々に新潟ペースとなり0-1とビハインドで前半を折り返す。さらに後半開始早々に2失点目を許し苦しい展開となると、82分には自陣ゴール前でのミスから決定的なピンチになりかけたところで平野がファウルを犯して一発退場。終了間際に何とかルーカス フェルナンデスのミドルシュートで1点を返したが1-2で敗戦となった。
アウェイでの大阪ダービーでの登里の負傷離脱後はビルドアップの部分で苦しみ、4-4-2や4-2-3-1などいろいろなやり方を試行錯誤してきた。登里が復帰すれば開幕当初のビルドアップが再現できるんじゃないかという期待があったが、復帰後も開幕当初にうまく行っていたはずのやり方がハマらずその後も勝てない試合が続く。第27節京都戦では5失点、続く第28節横浜FM戦では4失点と攻撃が上手くいかないだけでなく守備も崩壊。今シーズン最悪と言っていい状態で大阪ダービーを迎えることになったが、大阪ダービーは台風の影響で延期に。代表ウィークも重なったことで次節神戸戦まで2週間空くことになった。このタイミングでチームを立て直すための時間的な猶予が得られたことは本当にラッキーだった。
迎えた神戸戦。小菊監督曰く「複数失点が続く現状、神戸の強みも踏まえて」3バックを採用。しかし神戸のハイプレスに出鼻を挫かれる形で前半11分までに2失点し、リーグ戦4連敗となってしまった。ここ数年で安定した結果を出せていたはずの4-4-2、ブエノを活かすための4-2-3-1、開幕当初にハマった4-3-3、守備に重きを置いた3-4-2-1など、やり方を変えても上手くいかず優勝争いからは脱落し下位チームとの勝点差も縮まってきた。報道によると小菊監督は今シーズン限りでの退任をこのタイミングで決断したらしい。
第31節のアウェイ湘南戦は、負ければ残留争いに巻き込まれるという状況での一戦となった。立ち上がりから湘南の勢いに押される展開となると前半12分に失点。嫌なムードになりかけたが、21分と24分にレオ セアラが連続ゴール。後半途中からは5バックにして守り切り、2年2ヶ月ぶりの逆転勝利で9試合ぶりの勝点3を掴んだ。ちなみにこの日から北野颯太がスタメンに復帰。夏にオランダのクラブの練習に参加して明らかにプレーが変わったように思える。近い将来セレッソの8番を背負うことになるのかもしれない。
第32節の柏戦をスコアレスドローで終え、20年ぶりの平日開催となった大阪ダービーを迎える。柏戦からスタメン復帰した進藤、田中駿太、西尾の3バックを採用すると、この采配が的中。多くの時間帯で相手陣内に押し込んでプレーし、ボールロスト後も高いラインを保った3バックのプレスでG大阪に攻撃の起点を作らせない。ボール保持の局面では3バックが対角へのロングボールや鋭い縦パスを通しチャンスを演出。ここ最近の停滞感が嘘のように選手が躍動すると、後半3分にセットプレーの流れから西尾が決勝ゴール。完璧な内容でG大阪にリベンジを果たすと、続くアウェイ浦和戦も1-0で勝利。3試合連続のクリーンシートとなった。
第34節の磐田戦、第35節の札幌戦は残留争い真っ只中のチームを相手にした難しい試合となった。磐田戦では1-2で迎えた後半アディショナルタイムにPKを獲得したが、レオ セアラのシュートを元日本代表の川島がストップ。チームの危機を救ったベテランGKの鬼気迫るプレーは敵ながら天晴れだった。続く札幌戦は開始早々に阪田が筋肉系のトラブルで負傷交代。今シーズンはなかなか出場機会に恵まれない日々が続いていたが、シーズン終盤になって得意のドリブルを武器に右WBでスタメンの座を勝ち取っていただけに残念な結果となってしまった。1点ビハインドで迎えた後半40分、夏に加入した山崎の移籍後初ゴールで勝点1を拾った。
第36節の福岡戦を1-0で勝利して迎えた小菊セレッソホーム最終戦となる鹿島戦。この日は山下達也の現役としてのホーム最終戦でもあった。選手入場時、ホームゴール裏には山下の背番号「23」のコレオグラフィー。
山下はベンチスタート。リードした試合終盤に山下を出場させて逃げ切りを図る展開を期待したが、10分と14分に連続失点し苦しい試合展開となる。0-2で迎えた後半はセレッソが立て続けにチャンスを迎えるが相手GKの好セーブもあり得点できない。結局ゴールネットを揺らせず、対鹿島のホームリーグ戦は12連敗となった。試合後にはホーム最終戦セレモニーと山下の引退セレモニー。試合は残念なものだったが、27年間セレッソと共に歩んだ小菊監督と闘将山下達也との別れのセレモニーは感動的なものだった。
最終節のFC東京戦。早い時間帯の失点、セカンドボール争いに勝てない、チャンスは作るも活かせない、相手のカウンターからピンチを招くという鹿島戦と同じような展開となる。最後まで意地を見せられず、小菊セレッソのラストゲームは0-3という完敗で終わってしまった。
ホーム最終戦セレモニーの森嶋社長の挨拶の際に「メモリアルイヤーでも低空飛行。掲げた目標に全力で取り組むのは選手、監督、スタッフのみ??」という横断幕が掲げられた。うまくいかない時期はあったものの、選手とスタッフは目の前の試合で勝点3を取るため必死に戦った。その一方で選手編成の面では不満がなかったと言えば嘘になる。開幕当初から不安視されていたDF陣の層の薄さは、毎熊の移籍や故障者の離脱などでシーズンを通して悩みの種だった。攻撃面ではレオ セアラへの依存度の高さを最後まで解決できなかった。今後リーグ優勝を目指すために何が足りないのか、考えて改善していく必要がある。
少し話が逸れるが、今シーズン日本サッカー界を賑わせた話題の一つがレッドブルによる大宮アルディージャの買収だ。クラブ名は「RB大宮アルディージャ」となりエンブレムも変更となるらしい。
ちなみにクラブ名の「RB」は「レッドブル」の頭文字ではなく「Rasen Ballsport」というドイツ語(芝生の球技という意味)とのことだが、初めてクラブ名を見た多くの人は「レッドブル」の頭文字を思い起こすだろうし、きっとそれが狙いだろう。クラブの買収については賛否両論ある。正直なところ、自分はセレッソ大阪のクラブ名やエンブレムが変わることは想像できない。大宮アルディージャに関わる全ての人に葛藤があったと思うし、未だに受け入れきれていない部分もあるかもしれない。
このニュースを見て、レッドブルが過去にセレッソ大阪のトップパートナーだった頃同じような話があったのだろうかということが気になった。もし買収の話があったとしたら、セレッソは前向きに検討していたのだろうか。サポーターには知る由もないが、神戸や町田など資金力のあるクラブが優勝争いを繰り広げる昨今のJリーグで、買収の話を受けることは悲願のリーグ優勝への近道だったかもしれない。ただ、そのような道を選ばずにクラブをセレッソ大阪として存続させ、エンブレムを変えないという選択の上に断ったのだとしたら、個人的にはその決断を称えたい。
今年リーグ優勝は成し遂げられなかったが、上位争いをした翌年に降格するようなエレベーター(ジェットコースター)クラブを卒業し、毎年一桁順位でリーグ戦を終えるクラブにまで成長した。リーグ優勝までの道のりはまだまだ長そうだが、いつか来るその日を信じて31年目も応援したい。