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xRと移動「xRによる価値変化の兆し」

※本投稿は株式会社デンソーデザイン部の自主研究活動であり、
弊社の開発案件や事業をご紹介するものではありません

こんにちは ちみやと申します。

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私はxR(VR、AR、MRなどの総称)技術がもたらす未来の移動とコミュニケーションの価値変化について探索を行っております。

現在、ウィルスの情勢もあり人々のライフスタイル、特に移動のあり方は半ば強制的に変化していますが、今後技術革新によって更に大きく変化すると考えています。
例えば下記のような傾向は強まっていくのではないでしょうか。

・お店に買いに行かなくても家にモノ・食べ物が届く(物流)
・移動しなくても人に会える/空間を体験できる(xR/テレカン)
・モビリティで移動中も部屋にいるのと変わらない体験ができる(自動運転)

その中でも、「コミュニケーション」を移動せずに行う事ができるxRは現実の移動の多くを代替するものだと考えております。
私は自動車産業に関わる者として今 xR業界で起きている移動の価値変化の兆しを捉え、将来のモビリティのあり方を検証していく予定です。その成果をここで報告させていただきます。

価値変化の兆し VR Chat

現在、xRの世界で起きている価値変化の兆し・事例をまず紹介します。

VR ChatというVR SNSのサービスがあります。VR Chatでは、ユーザはアバターを着て、様々なワールドを訪れ、様々な人とコミュニケーションを取ることができます。


VR Chatでは、現実には一切移動することなく、ユニークなワールドを、本名などの属性を知らない人と一緒に巡るような体験をしている方が沢山おります。私も何度か体験していますが、これはチャットやビデオ会議とは異なり、フィジカルなコミュニケーションをとることのできる新しい体験です。

私は現在VR Chatをプレイしている方は上で未来の移動の価値観を先取りしている方だと考えており、今後の自動車や移動のあり方を考えるために、VR Chatや類似サービスの探索を行っていく予定です。

次に、VR Chat以外で、移動とコミュニケーションの価値がどのように変わっていくかヒントとなりそうな事例を挙げていきます。

「観覧」「観光」のための移動

移動の必要がなく、最高の条件で(天候/混雑度/立ち位置)、五感の一部の再現や過去のアーカイブ参照も可能なVRコンテンツができたとき、それでも現実の移動による観光は残るのでしょうか?

Virtual Helsinki 
ヘルシンキの有名観光地をVR化したコンテンツです。私はこのVRを見た後に、VRコンテンツ化されている元老院広場に実際に行ってみました。雨がちなとても寒い日に行ったことも影響していると思いますが、現実よりもVRでの体験の方が素敵な体験だったように感じました。


(実際に訪れた際の写真)

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1964 TOKYO VR 
前回オリンピック時の東京の街並みのCGを、過去の写真から自動生成しています。これはGoogleストリートビューや360°カメラの映像がない時代も写真があれば空間として生成可能であることを示しています。この技術が発展していけば、子供時代に遊んでいた公園、小学校などに大人になってから訪れるような、タイムマシンのような機能を持った移動が可能になるでしょう。


「コミュニケーション」のための移動

チャット、ビデオ会議、xR、対面という多様なコミュニケーションがある中で、わざわざ移動してでも会いたい人はいるのでしょうかいる場合何を価値を感じているのでしょうか

VR Chatでゲーム
メディアアーティストの坪倉さんはVR Chat上で友人を招待し、一緒にゲームで遊ぶようなことを行っています。今の情勢でなくとも、大人になると気軽に集まりわいわいと遊ぶことは難しくなりますが、移動時間がかからないVRではそれを気軽に行うことができます。

触覚スーツ 
作家の森博嗣さんは1996年の著作の中で以下のように書いています。

今に、電子空間で手も握れるようになる。肉体的な感触のレスポンスが欲しいというのは、人間の贅沢な欲求だけど、多少のエネルギィの無駄遣いで解決する。
 - 森博嗣『すべてがFになる』(講談社、1996) P358

現実の世界でもフィジカルなフィードバックが可能な触覚スーツの実用化が進んでいます。まだ私は体感できていないのですが、「触れる」「触られる」が加わることでVR世界での体験の質は大きく変わりそうです。

xR時代の移動の価値仮説

最後に、私が考えるxR時代の移動の価値仮説を紹介します。

セレンディピティ(偶発性) × アクセシビリティ(すぐ試せる)がない移動は、現実に移動する価値はなくなる

最後までご覧頂き、ありがとうございました。
二週間後に、続きを公開する予定です。
次回は仮説の深堀と、現在進めているプロジェクトについて報告いたします。