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未来の共食「オンライン栗きんとん食べ比べ会で感じた面白さ」

こんにちは。デンソーデザイン部佐藤です。今回はオンラインで、岐阜県中津川名物・栗きんとんの食べ比べ実験をしました。画面の向こうとこちらで全く同じ食材を共有。繊細な味の違いについてアレやコレやと語り合いましたが、同じ食材を口にしているという基準、安心感からの会話は、伝えにくいオンラインでの会話の欠点を補い、楽しいものにしてくれる可能性を感じさせてくれました。それについてお伝えしたいと思います。

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過去の実験振り返り

9月から「リモート共食:ZOOMなどで繋ぎ一緒に食事」についての実験を行い、一緒に食べる(異なる献立)同調作業含む(一緒に調理)分配行為含む(食材を分ける)等を実施してきました。

同調の実験では、たとえ初対面の大人と子供でも一緒におにぎりを握る行為が楽しめる、という光景が見られました。分配の実験では、食物をあげる-もらうの関係において、あげる側のモチベーションが高くなる傾向が、実験やアンケートから明らかになってきました。

なんとなくそれぞれの共食フェーズの特徴がわかってきた頃ですが、基本的な「一緒に食べる」ことを良く理解するために、時間をかけて「同じ食材を食べる」ことを感じられ、それが如何にコミュニケーションに影響するかの実験として、今回のオンライン食べ比べを実施しました。

実験概要

被験者は私と妻、知人のHさん夫妻。大人2名ずつの家庭をZOOMで繋いで実験。食材は上記の通りですが、7つの店の味がひと箱で食べ比べできるという「中津川栗きんとんめぐり」というセットを用意。

(なお、今回の「栗きんとん」は、お節のモノとは別のお茶菓子です。)

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生栗を皮のままゆで、中身をすくい出して裏ごししたものに、砂糖を用いて味を調えたものを弱火で練り、茶巾で軽く絞った岐阜県の郷土菓子。~~家庭で味わう郷土料理100選より

ラーメンやカレーなどであればわかりやすい個性があり、食べる前から「あそこのお店の味って、こうだよね。」と、食べていなくてもそこそこの話題ができてしまいますが、対して、栗きんとんは非常にシンプルなお菓子。被験者全員、先入観は皆無と言っていい、「栗きんとんは食べたことはある」程度です。このような食材選択をすることで、バイアスや余計な情報を遮断し、その食材にフォーカスした会話、食を対等にシェアしている感覚からの会話が生み出される環境を狙いました。

実験開始!

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同じ栗きんとんを全員一斉に「せーの!」で実食。

まず1つ目は全員が「おいしい。うんうん。栗きんとんってこうだ。」という感想。振り返れば、この時点がお互いの味覚の基準点の確認・共有になっていました。もしかしたらリモート共食でのコミュニケーションにおいて、参加者で味覚のゼロ合わせをするという点は非常に意味のあることかもしれません。

2つ目。再びせーの、で実食。皆が「ん!違う!」という、1つ目との差分を感じられ、それぞれ何が違ったかと話し合うと、「これは一つ目より、甘くて、粘っこい。」などと言う様に、

・粘り-サラサラ具合の食感
・粗い-細かい、栗の粒度の違い
・栗の風味(これは非常に僅かな違い)
・甘さ(人工甘味料を使っていることに気づく)

という「違いがわかるね!」という話で盛り上がりました。
「よく見ると、外観でも色味、栗の粒度の違いであったり、サラサラか-しっとりか、ということがなんとなくわかるねー」という気づきもありました。

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同じように、3つ目、4つ目・・・と食べ、最後には各自が「私の好みは○○屋。さらっと、粒が細かくておいしい」等と、全員がそれぞれMy Best 栗きんとんを選び、「ああHさんは”あの”さらっとしたもの、”あの”くらいの甘みが好みなんだ。」という理解を得ました。なお、全員が違うお店を選んでいました。
それぞれが新しい発見をしてお別れ。Hさん奥様発案で「次回は食パン食べ比べをしよう!」ということになっています。

今回の実験の振り返り

ここからは完全に佐藤の私見です。

一般論で、その人が語る言葉、外見から印象が形成されるとしまして。食の好みという情報も人の印象を構成したと感じました。ただ、今回の「同じ栗きんとんを食べたけど、”あれ”が好きなんだ。」という、味覚で、同じ基準で理解できたことはもしかしたら他の感覚には無いものかもしれません。例えば同じ風景を見たとしても、人により見ているところや捉え方が異なり、「名古屋城はよかったね。」と言っても、どこから捉えた名古屋城のことを言っているのかわからず、共感できているようなできていないような曖昧さが残るからです。
食の好み、という些細な情報ですが、それを判断する基準が確かに共有できたという安心感、そこがありがたいのかもしれず、相手を良く知れたような満足感があるのかもしれません。

また、お互いが「私は〇〇が好き。」という、自己主張できた点も良かったと思いました。栗きんとん食べ比べという個性の縮図を作ったことで、「あなたの好きなAとBもいいけど、私はCが好き。」という、お互いが誰も傷つけずに本音を伝えられた形に収まりました。

最後にですが、今回の「リモート共食:同じものを食べる」実験は食べ比べにしたこともあり、面白い形で完了しました。人間関係の構築にポジティブであったと感じます。
オンラインで無くてもいいのでは?という点も考えてみました。無論、対面でできればそれもお勧めできます。ただ、遠くの親類や知人に気軽に会いに行けない昨今の事情を鑑みると、年末年始のオンライン帰省やオンライン忘年会の席で試されてみても面白いのでは?と感じました。ということで、ぜひ、よかったらオンラインで試してみてください!

今回のnoteは以上です。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

※本投稿は株式会社デンソーデザイン部の自主研究活動であり、
弊社の開発案件や事業をご紹介するものではありません


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