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留学生は本当に優秀。風習や習慣の違いを「面白い!」と思うことで毎日がとても楽しくなります。

学校法人 電波学園
愛知工科大学外国語学校 教務科長
平野 宜利 先生

担当する学科が変わるたび、学生と一緒に資格取得を目指す。

もともと教員志望だったのか?
「もともと教員志望ではなかったんです(笑)。人を応援する仕事に就きたいと思っていて、小売業で内定ももらっていました。しかし、学園の説明を聞いた時に、『勉強が苦手な学生・生徒でも、全員資格合格と卒業を目指す、一人も取り残さない』という説明を受けたのが印象的で、電波学園への奉職を決めました。最初は、学園内の高等課程、その後、専門課程に異動し、流通ビジネス、医療事務、福祉事務、福祉サービス、販売ビジネス、医薬ビジネスと様々な学科に携わってきました。学生時代の専攻は、企業経営で『国際マーケティング』と『人的資源管理』でしたので、いろいろな学科に携わるのも違和感は無かったですね。専門分野ではない学科でも、私自身、リテールマーケティング検定(販売士)という資格取得がきっかけで教員になることができた訳ですから、資格取得の大切さを学生に伝えるときは、「私は資格を取ったことで人生が大きく変わったんだよ」と話すようにしています。また、担当する学科が変わるたびに、自分自身、学生と一緒に勉強して資格取得をしてきました。オープンキャンパスで、『資格は必要』と言っているのだから、自分が持っていない訳にはいかないですからね(苦笑)。自分が取得することで、学生にもその業界における資格の必要性や重要さがより伝わったと思います」

ホームルームにお邪魔して撮影。

どれだけ学生から信頼してもらえるか。

日本語学校に異動と言われてどう思った?日本語が分からない学生に対して、不安はあった?
「特に違和感は無かったです。私たちの仕事は『人材育成』です。学園内の学校なら、どこでも働いてみたいと思っていたので。ただ、『分からないから不安で怖い』というのは、最初にありました。専門課程の時は、保護者と連携して学生を育てるイメージですが、この学校は本人と教職員だけで、保護者との連携は困難です。だから、どれだけ学生に信頼してもらえるか、どれだけ寄り添えるか。言葉のカベもあったりするので、『あなたの味方なんだよ』というのをきちんと伝えていくことが、専門課程以上に必要になると感じました。学生からすれば、私は年齢の離れた外国人男性ですから。学生とは、風習や習慣、考え方が全く違うので、それを不安に思うか、『面白い!』と思うかです。私は、後者なので毎日が楽しいです(笑)。学生には、日々、勉強させてもらっています」

学校の目の前にある留学生専用の学生寮。巡回中のひとコマ。

留学生は「日本語」ができないだけで、本当に優秀な人材。

留学生の特徴は?
「留学生は、家族最優先という想いが強いですね。1日2時間ぐらいビデオチャットする子もいるぐらいです(笑)。それぐらい家族を大切にしています。例えば、家族が病気や交通事故にあった場合、『今、成田に向かっています』と、ビックリする勢いで母国に帰ります。就職採用試験で、保護者の誕生日を聞いても答えられない日本人学生がいる時代に、素敵なことだと思います。家族の絆や友人、宗教心や祭事を大切にする点で、心の豊かさとか、そういったものを留学生から感じることが多いです。
その上、彼らは本当に優秀な人材です。複数の言語を使いこなし、分からないことは自分から質問し、号令をかけることや、みんなの前で発表することだって、とても名誉と捉え、進んでやってくれます。彼らは『日本語だけできない』と言えばいいのでしょうか(笑)。だから、日本語ができるようになったら、日本人の学生よりもバイタリティがあり、いろいろな面で優秀な人材だと思います。
現在、日本語学習の実践の場として、地域イベントへの参加を積極的に行っております。町内会の清掃活動や、スポーツイベントへの参加から始まり、今年度は区民祭りにも参加することができました。学校やアルバイト先のコミュニティだけでなく、地域の人々との異文化共生を通じて留学生のことをたくさんの人に知っていただきたいと考えています」

町内会主催「グラウンド・ゴルフ大会」に参加。

いろんな国の学生がいて、彼らの共通語は「日本語」。

学生は授業だけで日本語を覚えていくのか?
「まずは何と言っても『ひらがな』と『カタカナ』です。100個ほどのひらがな、カタカナに加え、漢字1000字程度を短期間で学ばなければならないのは、本当に大変なことですよね。よく留学生に求められるJLPT(日本語能力試験)のN2レベルとは、日常で使われる日本語が理解でき、それ以外の場面で使われる日本語もある程度理解できる、【読む力】新聞記事や解説、一般的な話題に関する記事や読み物が理解でき、【聞く力】日本語を母語とする日本人にとって自然なスピードに近い速さでニュースや会話を聞いて、話の流れや要旨を把握できるレベルを指しています(日本語能力試験認定の目安抜粋)。これ、日本語ペラペラという意味ですよね。私など何年英語を勉強してきたことか(苦笑)。日本語学校在学期間1.5年から2.0年での資格取得はなかなかのものです。授業科目としては、言語知識(文字語彙・文法)・読解、聴解に分けて行っています。特に【聞く力】については、アルバイトなどで日本語を聞く機会が増えることによって上達していく部分もあると思います。面白いのは、本校には10か国以上の留学生がいて、彼らの共通語は『日本語』なんです(笑)。他の国の留学生とコミュニケーション取るときは、英語圏じゃない留学生もいるので、一所懸命日本語で話していますよ。初めは、細かな部分は通じていないかもしれませんが、それでも卒業するころには、日本語の冗談や流行語も話す彼らの成長には、本当にビックリさせられます」

学生朝礼で、日常生活の中で困った時の対応を説明。

教育だけでなく、生活面も寄り添う。学園の中で、一番「電波学園らしい学校」だと思う。

先生の今後の目標は?
「学園の教職員は、さまざまなステークホルダーに対し『行動指針 With 共に歩む』という気持ちで、これからも『面倒見の良い学園』であり続けたいと考えています。その中でも私は、 “Accept 多様性を受け入れ自分らしさを尊重して伸ばす” 教育を行っていきたいと思っています。留学生教育にトラブルはあります。しかし、これは日本人教育でも同じで、『留学生だから』ではありません。ただ留学生が知らない、分からないから起こることが多いです。例えば、自転車の乗り方のルールを知らないとか、交通事故にあっても何を言っているか分からないからとか、それって仕方がないですよね。留学生は近くに保護者もいないし、母国とはルールも違うし。だから、教職員が生活面まで寄り添うことが必要となる訳です。言ってみれば、学校の教職員は唯一頼れる日本の家族です。学習面だけでなく、生活面でも留学生に寄り添う学校、我々が目指す面倒見の良い学園の最たるもので、この学校は一番『電波学園らしい』学校だと思っています」
留学生に伝えたいことは?
「何のために留学をしたのかを忘れないでほしいです。留学生は、日本で働きたい、働いてみたいと思って日本に来る学生がほとんどです。でも、日本で生活する中で、彼らも変化していきます。例えばホテルマネジメントの勉強をしたいと言っている子が、日本に来て勉強しているうちに、学費の安い学校や、進学しやすい学校だったり、就労ビザの取りやすい分野だったり、目的を忘れ安易な方を選んでしまうケースがあります。大切な家族と離れ、日本に留学してくれた学生なので、これからも彼らの夢の実現に向けて、私たちは寄り添っていくつもりです」

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