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「『はじめまして』からはじまるRPG」。ファンタシースターオンラインからはじまった私の冒険の物語

22:50、仮眠から目を覚ました私は眠い目をこすりながら電話線を電話機からドリームキャストに繋ぎ直す。

テレホーダイは23時からだが、少し早めに接続する。そうしないと混雑でプロバイダーに繋がらないことがあるからだ。通話中の「プープー」という無情な音は聞きたくない。

私のドリームキャストは「ピーガー」という電子音を奏で、インターネットの海へ飛び出すための船へと変化する。

インターネットに接続した私はまず日課のセガBBSのチェックから始める。

「森を300周回っても『マダムノアマガサ』が手に入りません」、「『真アギト』って何ですか?」、「今週の周回報告」、いつもどおりの光景だ。一通り書き込みをチェックした私はそっと内蔵ブラウザを閉じる。

ここからが長く短い夜の始まり。ゲームを起動しオンラインモードで接続する。

今日も多くのプレーヤーで賑わっているようだ。この時間は満員になって入れないシップも多い。なんとか空いているシップを見つけ接続する。今日もまた新しい冒険が始まる期待に胸を膨らませながら。

--そう、これはある日の私の日常。

(「思い出に残るゲームのフレーズ」というテーマで綴る「ゲームとことば Advent Calendar 2021」の21日目を担当させていただきます。)

はじめまして、こんにちは。でんこと申します。肩書はゲームライターですが、最近はメタバースの方が比重が大きくなってきました。詳細は下記の自己紹介記事を読んでいただければと思います。

今日はそんな私のすべての原体験になった、ゲームのフレーズについてお話させてください。

すべての原体験になった「ファンタシースターオンライン」

私が夢中になったそのゲームの名は「ファンタシースターオンライン」、21年前の今日、2000年12月21日にドリームキャストで発売された。

キャッチコピーは「『はじめまして』から始まる RPG」、私がプレイした初めてのオンラインゲームであり、私のオンライン上におけるコミュニケーションの原体験になったゲームでもある。

※ 「英雄は、ひとりじゃない」など他のキャッチコピーもあります

「ファンタシースターオンライン」とは、セガの名作RPGシリーズ「ファンタシースター」シリーズの世界観などを一部継承したオンライン対応のアクションRPG。開発は「ソニック」シリーズや、「NiGHTS into dreams...」、「バーニングレンジャー」などでおなじみのソニックチームだ。

※ 余談ですが「NiGHTS into dreams...」のファンディスク「クリスマスナイツ」などもあり、クリスマスだしこれはこれで語りたいテーマでもあるのですが、いつかのためにとっておこうと思います

本作は当時としては珍しいオンライン対応のゲームだった。

もちろん唯一のオンライン対応ゲームというわけではなく「ぐるぐる温泉」などインターネットを使ったオンラインプレイが可能な作品もあったし、ドリームキャスト版の「電脳戦機バーチャロン オラトリオ・タングラム」も違った仕組みのオンライン対戦が実装されていた記憶がある。

ただ、当時はインターネットがどうだとか仕組み的な細かいことは考えてなかったし、知らなかった。ただ、どこかにいる誰かと見知らぬ惑星を探検できる、それは他のゲームにはないまったく新しい体験だった。

(C)SEGA
注意書きに時代を感じる (C)SEGA

「ファンタシースターオンライン」とは

本作ではプレーヤーは12種類あるクラスから1つを選びキャラクターを作成する。ざっくり3種類に分かれており、剣などを使った近接攻撃が得意なク「ハンター」、銃などを使った遠距離攻撃が得意な「レンジャー」、テクニック(いわゆる魔法)を使った攻撃やサポートが得意な「フォース」という3種類に分かれている。そこから種族や性別によって分かれ、合計12種類になる。

私は最初は近接攻撃が得意なハンターを作成し、そのあとフォースを作った記憶がある。細かい理由はおぼえてないが、以降様々なRPGで魔法使い系の職業を作ることが多かったのもこれがきっかけだと思う。

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当時作成したキャラクターはこんな感じだったと思う (C)SEGA

舞台は「ラグオル」という架空の惑星だ。本作では「森」、「洞窟」、「坑道」、「遺跡」という4つのロケーションがあった。

森をクリアすると洞窟、洞窟をクリアすると坑道、といったように順番にエリアが解放される仕組みになっていた。そして遺跡には本作のラスボス的存在が出現し、ボスを倒すとエンディングが流れる。その後上位の難易度がプレイできるようになるという仕組みだ。最初はノーマル、ハード、ベリーハード、後々アルティメットという難易度が追加された。

本作はステージをクリアしていくというよりは、モンスターを倒してレアアイテムを狙っていくトレハン的な遊び方がメインだったと思う。

それぞれのエリアごとに出現するエネミーも違い、ドロップするレアアイテムも異なっていた。もちろん上級難易度の方が貴重で強力なアイテムがドロップしやすくなっている。

「このレアアイテムが欲しければこのエリアを周回すれば良い」というノウハウはプレーヤー間でセガBBS(公式に提供されていた掲示板)などを通じて共有されていた。

私はよく「森」を周回していた記憶がある。理由は忘れてしまったがこのエリアでドロップする可能性があるレアアイテムを狙っていたか、単純にこの4エリアでは一番難易度が低いエリアだったとか、そういう話だと思う。

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「森」エリアの様子 (C)SEGA

オンラインで“はじめまして”を探す日々

本作はオフラインモードでのプレイも対応していたが、私はオンラインを中心に遊んでいた。

オンラインでは確か“部屋”(ルーム?)という単位でゲームをプレイしていたと思う。パスワードをかけて自分の友達とだけプレイするプレーヤーもいたし、あえてパブリックな状態にして一期一会の出会いを楽しんでいたプレーヤーもいる。私はもっぱら後者だった。

だが最初はキーボードを持っておらず、まともに意思の疎通すらできない状況だった。

一応ソフトウェアキーボードはあるが快適なスピードで入力できるものではなく、文字を入力している間に次の話題になっていることもしょっちゅうだ。

だが十字キーなどにショートカットワードを登録する機能があり、「ありがとう」などよく使うことばを登録できた。

私まともにネット上のコミュニケーションを取ったことがなかったが「w」が「(笑)」に相当するということだけはどこかで読んだので「w」をショートカットに入れていた。普段はまったく喋らないのに「w」だけは発言するという気味が悪い人だったと思う。

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決まったワードを組み合わせて意思疎通をする方法もあった (C)SEGA

後々キーボード付きのコントローラーを入手した私はますますこの世界で暮らす日々にのめり込んでいった。

部屋とは別に「ロビー」というエリアもあった。

確か同時に16人までしか入れないエリアで、「ファンタシースターオンライン2」などのロビーに比べるとはるかに狭い空間だったと思う。

ここに居座ってダベるのも楽しかった。新しい人がロビーに来るとロードのためにドリームキャストが音を立ててディスクを読み込むので、それを判断基準にして挨拶をしていた記憶がある。

※ 全体的にディスクの読み込み音が大きく、ドリームキャストのドライブに負担をかけているのではと不安でしたね……

ロビーを訪れるのは誰かのフレンドのときもあれば、はじめましての時もある。

ゲームにまったく関係がない雑談から、「あのレアアイテムが欲しいんですよね」なんて話まで話題は多岐に渡った。「そのアイテムが欲しいなら一緒に潜りましょうか」なんてそこで意気投合して一緒に潜ることもあった。

とにかく毎日が“はじめまして”の連続だった。ものすごく相性が良くて楽しい時もあれば、まったく話が盛り上がらない時もあったし、生理的にどうしても合わないなという人と会うこともあった。それでも新しい刺激や、新しい素敵な出会いを求めてずっとゲームを起動していた。

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プレーヤーは1人1種類の「ギルドカード」というカードを持っていた。これはいわゆる名刺的なアイテムでキャラクター名とバッジのカラー、一言コメントを書くことができた。

バッジとはキャラクターネームから生成されるもので、バッジの種類のよってドロップするレアアイテムが異なるなどの差別化があった。これは「あのアイテムが欲しいなら誰々さんと遊ぶのが良い」とかそういった流れを作る仕組みなのだと思う。

そして一言コメントには「私はこういうプレイスタイルで遊んでいます」や「いつでも誘ってね」といったコメントが多かったと思う。

私はこのギルドカードという文化が大好きだった。“はじめまして”から始まった冒険の記憶、一緒にドラゴンを倒したり、ラスボスを倒したという達成感のある記憶もある。何気ない雑談が盛り上がりすぎて深夜まで話し込んだ記憶もある、きっと人によってはレアアイテムがドロップした喜びを共有した記憶もあるだろう。

※ 私はまともなレアアイテムがドロップしたことはありませんが

“はじめまして”からはじまった新しい繋がり、そしてともに冒険をしたエキサイティングな時間、深夜まで盛り上がった楽しい時間。そういった記憶が詰まっているのが「ギルドカード」だった。

冒険が終わったあとに一期一会の仲間に渡すギルドカード。別れ際に渡すことが多かったので、画面にギルドカードを受け取った通知が表示されると寂しくなったものだ。

実家に置いてきたはずのメモリーカードにはそういった記憶がすべて詰まっている。最大で100枚までしか持てないので、なくなく削除したギルドカードも少なくない。

また正直もう自分がどんな内容を自分のギルドカードに書いたかは覚えていない。きっと中二病全開の痛いことを書いていたんだろうなとも思う。

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月日は流れ、「ファンタシースターオンライン」の世界から離れた私はオンラインの仮想空間をフラフラと渡り歩くことになる。MORPGもプレイしたし、MMORPGも遊んでいた。FPS/TPSにハマった時期もあるし、セカンドライフもひっそりとプレイしていた。ずっと様々な仮想空間に飛び込んできた。

そんな私は今いわゆるメタバース、バーチャルSNSともソーシャルVRとも呼ばれる世界に潜り続けている。

あの時夢中になった世界とは違ってレアアイテム探しも、巨大なボスモンスターとの戦いもない。でも私は気づいたんだ、ずっと探しているのは“はじめまして”だったのだと。

だから今日もメタバースの世界へと潜る。“はじめまして”とそこから始まる物語に期待して

バーチャルゲームライター:でんこ

※ スクリーンショットの著作権はすべて株式会社セガに帰属します。


どこかのタイミングでずっと書きたいと思っていた「ファンタシースターオンライン」の記事が書けて楽しかったです。さすがにドリームキャスト版を今プレイするのは難しいと思うのですが、最新作の「PSO2 ニュージェネシス」は様々なハードで遊べます。

明日はCD PROJEKT RED ジャパン・カントリー・マネージャーの本間 覚さんです。あの作品なのか、それまた別のあの作品なのかと色々と妄想は膨らみますね。明日もお楽しみに!

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