赤字国債の量≒市中に出回る通貨の量

財政政策と国債について、自分の考え(というか理解)もたまには書いておく。
金本位制の時代は、
国家の保有する金の量≒国家の発行できる通貨の量
であった。イコールでなくニアリーイコールなのは、赤字国債の発行が可能だからである。この場合の赤字国債は、国民ないし外国に対する借金である。この赤字国債が膨れ上がると、通貨がデフォルトする恐れがある。
しかし、変動相場制の場合はどうだろうか。
シミュレーションとして、「国家はあるが、市中には全く通貨がない」という状態からスタートしてみる。通貨とはすなわち「税金を払うためのクーポン券」なので

(この説明は井上純一氏の「キミのお金はどこに消えるのか」に詳しい)、国家は税金を(たとえばその年度の最後に)回収するために、まず通貨を市中に供給しなくてはならない。
しかし通貨を発行するためには、裏付けが必要である。そして変動相場制の世界において、その裏付けとは「国債」である。この国家がその年発行する通貨の量は、当然「=赤字国債の量」となる。
年度が終わり、国家は発行した通貨の何割かを税金として回収する。財政を黒字にするためには、市中の通貨の100%を回収しなくてはならないから、経済活動を持続させるためには、市中に通貨を残さなくてはならない。ゆえに国家財政は常に赤字である。国家が財政均衡を目指すと、市中の通貨の流通量はゼロに近づいていくので、不景気、ひいては恐慌が起こる。
現実には国家は資産を持っているし、銀行は信用創造ができるし、(黒字なら)貿易による収入もあるから、国家財政を黒字(財政均衡)にしても、市中の通貨の量はゼロにはならないが、変動相場制において、国家財政を黒字にしようとすると、不景気、ひいては恐慌が起こるのはこういう仕組みであり、日本でざっくり30年間デフレ不景気が続いているのは、財政均衡を目指している以上当然の結果である。
変動相場制の世界において、国家が黒字になるのは「戦争に勝って賠償金を取った」とか「天然資源をいっぱい輸出した」とかの特殊な場合のみで、国家財政は赤字でないと、市中の経済は回らないのである。


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