「人間凶器」ショートショート

ちょっとグロいし、非倫理的なので、ご閲覧注意

「と言うわけで、彼女の腹にいる子供を孕ませたのは、君だ。ということにしてくれないか」彼はニヤっとしやがらいった。
「君は、僕が彼女に対してどう言う気持ちを抱いているか、知っているか」
「知っていなきゃこんなこと頼まない」彼は薄ら笑いを浮かべ続ける。
「よろしい、よろしいよ!ただ一つ条件がある」
「条件とはね、無償の愛はどこへやら」くくくと彼は笑った。
「ああ、条件だ」
「言って頂戴」と彼女。
「この条件さえ守ってくれれば、僕は汚名と屈辱を甘んじて受け入れよう」
「自己憐憫だね。早く言えよ」彼はイライラしていた。しかしかろうじてまだ微笑は絶やさなかった。
「僕を出産に立ち会わせろ」
彼の微笑が、消えるのを見た。これが見られただけでも‥十二分の報酬だ。
「ふん、まあいいんじゃないか」
「え、ええ、いいわよ、見せるだけ」

出産当日

「君にスーツは似合わないな」と彼。まだイライラしている様子だ。
「でっぷり出た腹が醜いね」
僕は無視して、愛する彼女のもとへ向かう。
「もうじきだそうだ」
「間に合ってよかった」
僕はつかつか分娩室に入っていく。
「あのお、どちら様で」
「この子の父です」
助産師は顔を赤め、道を開けた。
「君はそこで見ていろ、入ってくるなよ」と僕は彼に言った。
「父親は僕なんだからな」
彼は奥座を噛みしめ、目には怒りがあった。

「痛い痛い」彼女が苦しみ出した。
「苦しい、苦しい」
ああ、なんて、なんて美しいんだ、君は!
「痛い苦しい痛い苦しい」
「もうちょっとですよ」
「痛いたいたい」

出てきた、子供が出てきた。

僕はすぐさま助産師からその子供を奪い取ると
子供の右足を掴んで、そのまま地面に叩きつけた。
ぐるん、ぶしゃ
グロテスクな音が響き渡る。
人を殺すのはこんなにも簡単だったのか。
多分子供は死んだが、僕は子供の足を掴み続けて、それを彼女に振りかぶる。

子供を何度も母親に叩きつける。
「痛い痛い」
「痛いか、痛いか」
「苦しい苦しい」
「苦しいか、苦しいか」
母親は血塗れになる。

そしてようやく、彼が僕を殴りつけた。

「殺せッ!」僕叫んだ。
「うわあああ」
彼は僕をひたすらに殴りつける。僕の右手が掴む赤ん坊の亡骸になんて目もくれず。いやむしろ、見たくないからこそ、僕を殴っているんだな。

「殺せ、殺せ」
「‥ッ!‥ッ」殴りながら、彼は無言の悲鳴をあげる。
「薄ら、笑いは、グッ、どうした、ハッ、ええ?、君の、ご自慢だろう」
彼は殴るだけでは飽き足らず、蹴りも加えてきた。

頭を蹴られているうち、僕は死んだ。

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