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自閉症、本当の自立に向けて (Never give up!)

多くの自閉症のお子さんをお持ちの親御さんなら(もちろん定型発達のお子さんをお持ちの方も)きっと考えずにはいられないテーマ。「この子は大人になったらどうやって生きていくのだろうか…」。

今日は、自閉症についての執筆や講演、YouTube活動を沢山されている、信州大学児童精神科医の本田秀夫先生の動画を見て考える「自閉症児の本当の意味での自立」について書いてみようと思う。

本田先生はご自身も発達障害傾向の特性があるらしく、精神科医としてだけでなく自閉症の当事者目線から、自閉症の脳の特性をとても分かりやすく読み解いて発信して下さっている。

以下の動画は、2023年神奈川県自閉症協会主催の講演会でお話しされて一般YouTube公開されている「自閉スペクトラム症の人たちの育ち方育て方」。

この講演の中で、自閉症の発達特性について次の2つの言葉がハッキリと提示されている。

  • 自閉症の発達特性は生まれつきであり育て方が原因ではない

  • でも、成人期までにどう育つかは育て方次第

私たち親として、少し安心するような、それでいてドキッとさせられるような内容である。

本田先生は動画や本の中で、早期発見、早期支援、また早期ブレーキの重要性という言葉を用いられている。早期発見、早期支援はわかるが、早期ブレーキとはどういうことか。

これこそが、まさに親である私達の育て方の問題である。親や支援者の知識不足による間違った思い込みや、もしくは偏った価値観や世間体などによって生じる、思わしくない支援や育て方に対して、ブレーキをかける重要性を警告しているのである。

我が家の息子に関して言えば、幼少期からの私達の知識不足、幼稚園、学校からの不理解、また親である私達がもっと声をあげて息子の特性を学校側に説明できなかったこと、などが重なった。その結果、思わしくない支援と育て方をされて育ってしまい、二次障害を発症し、さらに不登校をこじらせてしまった典型的な例と言えるかもしれない。

それでも、気がついたからこそ、そこでブレーキをかけることが出来、方向転換をすることも出来た。

具体的な私の親としての失敗や後悔は、前の記事にもあげている。自分の失敗がどなたかのお役に立てれば幸いである。

そしてさらに、自閉症児にとっての「本当の自立」とはどういうことであるのか、次の2点を提示して話しをされている。

  • 自律(律するの意)スキル:自分で出来ることと出来ないことを判断できる

  • ソーシャルスキル:出来ないことについて、他の人に援助を求めることができる

この2つの「自立スキル」は私自身も、息子の子育てで一番教えたいことの一つである。彼が将来生きやすくなるために何よりも大切なことであると感じている。

私たち親は誰しも、子どもに幸せな人生を歩んで欲しいと願っている(例え毒親と呼ばれる人達にもその心があると信じている)。

にも関わらず、時に私たちは取り返しのつかない過ちをおかしてしまうこともある。実際に思わしくない支援を受けて育ってしまった自閉症のこどもに関して言えば、なおさら「取り返し」はつきにくい。

我が家の息子は13歳。もしかしたら今後彼と相性がいい環境に恵まれれば、まだ少しは「取り返し」がつくのだろうかと不安になる。

少し話しがそれるが、息子には近所にお気に入りのベーグル屋さんがある。そこの店長の東欧系のオジサンは、息子が8歳の頃から、5年間変わらず食べ続けている、ちょっと変わった組み合わせのベーグル(本人の希望でサラダなし、代わりに中にサーモン、オリーブ、チーズ、そしてパスタを入れる)を毎回覚えてくれている。

また、普段子どもが学校に行っている時間帯に買いに行ったりするもんだから、自然と話しもするようになって、彼が自閉症であることも知っている。

先日久しぶりに会ったときに、最近どうかと聞かれたので「うーん、学校に行けたり行けなかったり。暴れたり落ち着いてたりかなぁ」となんだかパッとしない答え方をしてしまった。そしたら、オジサンは「Never give up!」と飛びきりの笑顔で言ってくれたのだ。私はハッとさせられた。

オジサンの言った、とてもありきたりな言葉「決して諦めるな!」には、沢山の意味が込められていると思う。息子の可能性を諦めてはいけない、彼の将来を諦めてはいけない、そして、彼の持っている個性を輝かせてあげることを諦めてはいけない。

私にはそんな風に聞こえたのだ。

そうだ、その通りだ!成長のどの段階だったとしても諦めてはいけないのだ。子育てには正解がないとは言え、自閉症の子育てに関して言えば、明らかに不正解が存在していることも否めない事実である。

だとしても、間違えに気がついた時点でブレーキをかけて方向転換をすることは出来る。そして、そこから本当の自立に向けて、本人のスキルを育てていくことも出来る。そうやって、日々一つずつ真摯に向き合っていくことが唯一私たち親が出来ることではないだろうか。

そして、そのためには親である私達の日々の成長と学びも欠かせない。

世の中には、特性にあった適切な療育を受ける機会に恵まれず、また親に自分の特性を正しく理解されずに大人になっている方が沢山いると想像する。

その人たちだって、遅くはない!気がついた時が「その時」で、そこから自分に合う環境、ストラテジーを模索するのを諦めてはいけないのだと思う。

また、時には自分の体験をnoteに赤裸々に書いてくれている勇気ある方達もいる。簡単なことではないと思うので、本当に頭が下がる思いだ。

こうやって、経験したこと、気がついたことを1つずつみんなで共有しながら、小さな点が線になり、1本の線が大きな面になる。そうやって自閉症理解の輪が拡がって行き、強いては彼らの将来が明るく輝くものになっていくことを願ってやまない。

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