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猫の慢性腎臓病にすごく効くラプロスというお薬。それって本当?

猫さんで慢性腎臓病が多いのは周知のとおりです。

特効薬というのはないのですが

4年前に「ラプロス」というお薬が出てきました。

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このお薬に関するご質問が非常に多いんです。

なのでラプロスと慢性腎臓病について書いてみます。

結論から申し上げると、僕は非常に懐疑的です。

腎数値だけみて腎臓病だと診断し

処方する獣医師のどれだけ多いことか。

そして腎臓の値だけで、治療の良し悪しを判断すべきでないと思います。

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慢性腎臓病が徐々に悪化する一因に

尿細管間質(まあ上の図のネフロンだと思ってください)が炎症→低酸素状態→線維化(元に戻らない)→線維化すると他の残されたネフロンが頑張る→頑張りすぎて炎症→低酸素→線維化

というどうしようもない状態に陥ります。

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そこでラプロスというお薬で上記図の1〜4にアクセスします。

医学的にいうと

・ 毛細血管減少の抑制
・ 炎症による血管収縮の抑制
・ 血栓形成抑制
・ 抗炎症作用
・ 血流増加    

で尿細管間質の線維化に対抗します。

発売時にこういうデータはあったわけです。

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当たり前ですが、6ヶ月での検討しかされてないんですよね。

そこで4年使ってどうだったかという症例検討が、JBVP(この講義を配信している学会)の名誉会長から発表された講義を聞いたわけです。

うーん。。。

正直言って微妙な講演でした。

超有名な会長の自分の病院の口コミが悪いのが頷ける気がします。

ここで忖度しても仕方ないので、口が悪いですがごめんなさい。

僕から言えることは、腎臓病はしっかりステージ分類してもらいましょう。

ということにつきます。

猫ちゃんが血液検査(しかも院内の)だけされて

慢性腎臓病と診断されて点滴されたり療法食使われたり薬出されたりしてたら、それ間違いですよ。

1:Cre(院内でも可能だがわりとぶれる)

2:SDMA(血液検査の項目)

3:尿中にタンパクが出ているか(院内でもできるが正確にはやはり外注検査)

4:血圧(収縮期血圧)

ここまでが世界的に認められた診断基準です。

これに画像検査が加わるとなおいいと思います。

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少し脱線しました。

講演の結論としては、ラプロスは長期使用しても問題なく、従来の生存期間中央値をかなり伸ばすことのできる結果が発表されてました。

僕が懐疑的な理由は、論文ベースではなく、発表なのでこういう言い方はあれですが恣意的に症例を選択できるわけです。

それとIRIS2の症例とIRIS3でも2に戻る症例が適応でやはりいい結果が出ていました。

Creの値だけでラプロス始めるのはアウトでしょうね。

筋肉量でだいぶ差が出てきますから。

意外だったのは、ARB(タンパク尿を抑制するお薬)、ACEブロッカー(血管拡張薬)ステロイド、チアマゾール(甲状腺機能亢進症のお薬)と併用されていても、そこまで問題ないとされていたことです。

症例の詳細がかなり省略されていて、僕としては全く納得が生きませんでした。

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ラプロスが新しい機序を持つ、慢性腎臓病に対抗できるお薬で、期待できることは確かだと思います。

慢性腎臓病の従来の生存期間中央値も引き伸ばされることでしょう。

しかしながら、「適応」「不適応」が一番大事です。

他のお薬を併用するのであれば尚更です。

特効薬のような見方でラプロスを語るのではなく

患者さんのその時の状態を常に把握し、その都度智最善の治療法を考慮していくのが大切だと思います。

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