大学生の頃、別の大学に通っていた友人が、小学校の宿直のアルバイトをしていました。宿直のメインの仕事は、不審者がいないか、夜に定期的な見回りをすることです。週に2-3回の泊まり込みのバイトで、バイト代はそれほど高額ではありませんが、それ以上のメリットがあると聞かされました。
最初のメリットはお風呂です。宿直室(図はイメージ)の隣には、宿直の先生用のお風呂があり、宿直時には使えます。当時は私も含めて、風呂無しの下宿に住んでいた大学生が多かったので、友人には大助かりでした。
もう一つのメリットは電話です。今ならどうして?と思うでしょうが、当時はケータイやスマホは無く、固定電話を電電公社(現NTT)から設置すると、10万円以上の権利金が必要でした。一人1台スマホを持っている、現在とは電話環境が大違いでした。なので、”常識の範囲内で”電話を自由に使える宿直の時間は、電話タイムだったそうです。
その友人は、大学の部活の友人などに小学校の宿直室の電話番号を教えて、夜の宿直時に電話をかけてもらい、寂しさを紛らわせていたそうです。固定電話は、受信側は無料なので、お金はかかりません。電話の合言葉は”夜の校長”です。時間を決めて電話をかけてもらうようにしていたので、部活の友人(彼女?)からの電話はすぐにわかります。電話がかかってくると、その友人は決まって「はい、夜の校長です」と答えていたそうです。
ある夜、いつものように友人からの電話だと思って「はい、夜の校長です」と応えると、「○○小学校の本当の校長だが・・・」といつもと違う声で、意外な返事が返ってきました。偶然でしたが、いつもの時間帯に、本当の校長先生が用事があって電話をかけてきたのでした。
その後のことは、詳しく教えてくれませんでしたが、温厚な校長先生だったらしく、特にお叱りやペナルティは無く、その友人はバイト期間の宿直を務めあげました。
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