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バイオミメティクス 生物模倣

 バイオミメティクス(biomimetics)という言葉を知っていますか?。日本語では”生物模倣”と訳されます。生物の体型、色、機能、行動などは太古から進化し続けてきた生物”歴史的産物”です。この生物の特徴を模倣して、活用しようというのがバイオミメティクスという技術です。

 イルカは頭にあるメロン体という組織から超音波を出して、その反響音から自分のエサとなる小魚などの方向や距離を知ることが出来ます。これは専門用語で”反響定位”と言いますが、この行動を模倣したものが、魚群探知機などに利用されているソナー(sonar)です。その他にも、ハスの葉の撥水効果を利用した表面加工法や、サメ肌の流体抵抗の低減効果を利用した競泳水着などがあります。サメ肌の競泳水着・レーザーレーサーは、効果が凄すぎて使用が禁止になるほどでした。

 生物模倣は、日本が誇る新幹線技術にも使われています。新幹線は高速化するほど、車外の騒音が問題となります。特にパンタグラフが出す風切り音が、一番の問題になっていました。これを解決したのは、フクロウの飛翔です。フクロウは獲物に近づく際に、音もなく滑空します。この静穏飛翔の仕組みをパンタグラフに生かしたものが、翼型パンタグラフです。

 新幹線の騒音対策には、もう一種類の鳥が利用されています。新幹線には、トンネルに投入するときに出る大きな衝撃音・通称”トンネルドン”と言われるトンネル微気圧波が問題になっていました。これを解決したのが、カワセミです。ロングノーズの500系新幹線の先頭形状は、クチバシから頭部にかけてのカワセミに極めて似ています。実際には、大がかりな実験装置や、スーパーコンピューターを駆使したシミュレーションを利用して設計されました。しかしその結果は、空中から水中へ小魚を捕食するためにダイヴするカワセミに酷似しています。

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 工学や医学の分野では、生物模倣は半ば常識です。自然界には、まだまだ利用されていないヒントが隠されているはずです。一番難しくて、一番有効活用できる生物模倣は、”人工の光合成”です。これができると、少なくともCO2の問題は一挙に解決します。


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