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異文化の遭遇 柿の種で妻に泣かれた話

 奇跡的に離婚することもなく、いまだに結婚生活が続いていますが、これは新婚当時の話です。

 『結婚する前は両目を開けて、結婚したら片目をつぶりましょう』とは、結婚に対する諺として、よく言われる言葉です。この言葉は1600年代のイギリスの神学者、トーマス・フラーの言葉です。原語(英語)では、Keep your eyes wide open before marriage, and half shut afterwards. となります。

 つまり、「結婚前には、いいところもそうじゃないところも含めて、しっかりと両目を開いて見ておこう。でも、結婚したら片目をつぶろう(小さなことは大目に見よう)」という意味です。しかし、この小さいことが、意外と大きかったりします。

 結婚は、育ってきた環境が全く違う異文化のぶつかり合いです。些細なことでも、これまでの生活と違うと大きな違和感につながります。結婚して初めての秋が来ました。買ったのか貰い物だったかは忘れましたが、立派な柿があって、夕食後に妻がむいてくれました。私は、向いてくれた柿をごく普通に食べただけですが、急に妻が泣きながら怒り出しました。

 訳が分からずに、「どうしたの?」と聞くと、妻が泣きながら抗議しました。「まだ私が柿をむき終わっていないのに、食べ始めるとは、いったいどういう料簡か?」。それから畳みかけるように「私の家(妻の実家)では、全てをむき終わるのを待ってから食べ始めます。これが常識ではないでしょうか?。それから、あなたは柿の種が無いものばかりを選んで食べています。私の家では、種無を食べたら次は種有を食べるというように、(家族が平等に)交互に食べるのが当たり前だった」と説明してくれました。

 私は柿の食べ方に、そんな作法があることは知りませんでした。私が育った家では、母がリンゴや柿をむいてくれたら「さぁ、食べなさい」と言って、むいた端から食べるのが普通でした。ましてや、柿の種の有る無しを考えて柿を食べたことは一度もありませんでした。柿の食べ方一つにも、家毎にこんな大きな違いがあることに、この時初めて気づきました。

 結婚するのは大変ですが、長く継続するのはもっと大変です。お互いに、片目をつぶるだけではうまくいかない場合もあるでしょう。その時は両目をつぶる覚悟が必要です。これが結婚生活を長く続けるコツなのかもしれません。

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