見出し画像

超私的グルメ(2) 天然鰤の刺身

  第二弾は、寒ブリです。な~んだ、高級なものは出てこないと前置きしておきながら、結構本格的なグルメじゃないか、と思われた方。ちょっと待ってください。もらい物(タダ、無料)の鰤のお話です。

 ところで、「嫁ぶり」という風習を聞いたことがありますか? 多分知らない人が多いと思います。それもそのはず、「嫁ぶり」という風習は福岡・博多を中心に九州北部で受け継がれている地域限定の風習だからです。「嫁ぶり」では、お嫁さんの実家に”良いお嫁さんをありがとう”の感謝を込めて、寒ブリを丸ごと一匹送ります。

 独身時代は、よく実家に帰って正月を過ごしていました。その年は、母の弟である叔父さん家族が、ひょっこり訪ねて来たこともあり、いつもに増して賑やかな正月を過ごしていました。その歓談中に電話があり、母が電話を取りました。近所に住む母の友人からでしたが、なにやらチョット困っている様子でした。話のざっくりした内容は、「鰤がダブったのでもらってくれない?」とのことでした。あとで話をよく聞くと、その友人の娘の嫁ぎ先からの「嫁ブリ」と、友人の夫への「贈り物のブリ」が同時に届いたとのことでした。

 ”もらい物は嬉しいが、丸一匹の鰤は捌けない”と悩んでいる母に、この話を聞いた叔父さんが、「ネェちゃん、俺が捌いてやるよ」と言ってくれました。叔父さんは今は違う職業ですが、以前魚屋で働いていた経験がありました。その後、母は嬉々としてブリをもらいに出かけました。

 頂いた天然ブリは、80センチぐらいの大きさでした。しかし、丸々太った養殖ブリとは違い、スリムな流線形をしていました。叔父さんが、手際よく3枚におろして、半身を刺身にしてくれました。叔父さん一家はこの後、寄るところがあるので、残りの半身を持って、我が家から帰りました。

 実はブリの刺身は、あまり好きではありません。今でもそうです。醤油に付けると、油膜が醤油に広がるブリは、油っぽくて好きにはなれないのです。今回も渋々、箸を出しました。しかし、お刺身を醤油に付けても、ほとんど油膜は出ませんでした。そのまま口に運びました。程よい弾力と、上品な甘みの油、思わず「ウメ―」と声に出しました。大きなブリなので、刺身はかなりの量ありましたが、父・母・私の3人で、あっという間にペロッと食べつくしました。天然ブリの刺身は、本当に最高です。残りのアラも、煮物にして翌日美味しく頂きました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?