見出し画像

お勧めシリーズ本#6 『百鬼夜行シリーズ』

久しぶりに本の紹介をします。『百鬼夜行シリーズ』は、京極夏彦さんが書いた妖怪をモチーフにした推理小説です。このシリーズには、主人公と呼べる人が数名いますが、謎解き役である古書店主・中禅寺の屋号から京極堂シリーズと呼ばれることも多いようです。しかし、作者の京極先生はシリーズ名を特定はしていないみたいです。

このシリーズに出会ったのは、京極先生のデビュー作である『姑獲鳥うぶめの夏』でした。京極先生の書名には難読漢字が多く、ルビが無いとほとんど読めません。これが、このシリーズの一つの特徴です。もう一つの特徴は、極めてページ数が多いことです。『鉄鼠てっそおり』で826ページ、『絡新婦おんもらきことわり』で829ページです。

私が持っている『邪魅じゃみしずく』の文庫本は、アマゾン情報では1330ページですが、数行ほどはみ出しているので正確には1331ページもあります。文庫本としては破格のボリュームです。この本を買った時に、書店のレジで「カバーをおかけしますか?」と聞かれたので、「お願いします」と言うと、しばらく奮闘努力して頂きましたが、「申し訳ありません。この本に合うカバーがありません」といって苦笑いされ、カバーを断られました。

シリーズの時代背景は、太平洋戦争が終わった戦後の混乱期です。主な登場人物は、安倍晴明の流れを汲む陰陽師&拝み屋であり、古本屋を営む中禅寺 秋彦ちゅうぜんじ あきひこと、メンタルが弱い小説家の関口 巽せきぐち たつみ、『薔薇十字探偵社』という探偵事務所の破天荒な私立探偵の榎木津 礼二郎えのきづ れいじろうです。中禅寺と関口は旧制高等学校の同級生で、榎津は一期先輩になります。また、榎木津の幼馴染である刑事の木場 修太郎きば しゅうたろうが良い味を出しています。

百鬼夜行シリーズのメインの探偵役は”拝み屋”中善寺で、憑物落しつきものおとしと同時に難解な事件を推理します。話の中には、戦後の混乱した状況や、妖怪に関する様々な伝承、オカルティズムなどが数多く出てきます。そのため、話の骨格は論理的な謎解きですが、”妖怪小説”とも呼べる特異なシリーズとなっています。

私は、本格的な推理の部分も好きですが、それ以上に妖怪やオカルトに関する蘊蓄が大好きです。正直に言えば、この蘊蓄目当てで本を買っています。驚くべきは京極先生の博覧強記な蘊蓄です。妖怪好きや蘊蓄好きにはたまらないシリーズ本ですが、とってもボリューミーなので読むための覚悟が必要です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?