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その記憶は正しいの? 記憶の改竄と正当化

一昨日の夕食の献立は思い出せなくても、印象に残った過去の嬉しい/悲しい出来事は、鮮明に思い出すことができます。そう思うと、私たちの脳は、とても優れているように感じます。しかし、ちょっと待って下さい。それは本当の記憶でしょうか?

とてもショッキングな事実ですが、私たちが鮮明に思い出していると思っている記憶は、自分の脳により勝手に改竄かいざんされていることがほとんどらしいのです。なんと、脳は過去の記憶を正当化し、間違いを消し去っているのです。これは、大規模な実験によって確かめられた事実です。その実験では、3000人の被験者を対象に、”ある重要な政治的問題”について答えてもらい、さらに10年後にも同じ質問をして比較しました。その結果は、想像がつくかもしれませんが、10年前の回答結果とはほとんどちがうものでした。このように、人間の記憶は大変不確かです。

私にも、記憶の正当化の経験があります。私の高校では年に二回もマラソン大会がありました。距離は10ー30kmくらいでフルマラソンではありませんが、結構大変です。私は運動が苦手だったので、完走できたのは半分くらいで、お腹が痛くなってリタイアしたことが数回ありました。それは、自分の中では恥ずかしい記憶として残っていました。しかし、その後、私はマラソン大会で優勝する夢を何度か見ました。しかも、かなりリアルな夢でした。たぶん、脳が”恥ずかしい記憶”を”誇らしい偽の記憶”に改竄していたのでしょう。

別の実験では、印象に残ったであろう”スペースシャトルの爆発事故”を使いました。まず、事故の直後に作文を書いてもらいました。その3年後に自己に関する作文をもう一度書いてもらって比較しました。その結果、3年後にそれを正しく記憶している人は100人中7人程度しかいませんでした。ほとんどの人の記憶の大部分が書き換わるし、まったく違う記憶にすり替わっている人が25%もいることもわかりました。

この事実が示しているのは、過去の記憶に基いて”自分が正しい”と思い込ものは非常に危険だということです。なぜなら、その判断の元になった記憶はかなりの確率で間違っているからです。”自分が正しい”と思ったら、それは間違えている可能性が高いのです。そんな時には、”なぜ正しいと言えるのだろう?”または”その証拠は何だろう?”と自分に問いかけることが重要みたいです。

自分自身の脳なのに、信用できないのは由々しき事態です。でも、自分自身に問いかけましょう。「その記憶は正しいの?」。

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