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超私的グルメ(5) 祖母の巨大オハギ

 今回は、今は亡き祖母の手造りのオハギです。父方の祖母は、比較的近くに住んでいたので、時々我が家に泊まりに来ては、私と弟のリクエストに応えてオハギを作ってくれました。手のひらサイズの巨大なオハギでした。いまなら、一個食べても胸焼けしそうなサイズです。でも、当時は作り立ての時に4個食べて、翌日にも4個は食べれてました。
 祖母が作るオハギの量は桁違いでした。祖母は11人も子供を産んで子沢山だったので、少量だけ作ることができませんでした。中に入れるご飯(もち米と普通のコメが半々)は、一升ほど炊きます。周りのアンコも、小豆を数袋(1キロ位?)使って手作りします。この黒々としたアンコが絶妙で、祖母のアンコ以上のものを食べたことがありません。
 ご飯は、”半殺し”といって、スリコギなどでご飯の粒々が半分程度になるまでつぶします。そのあと、これを大きなおにぎり程度のサイズに小分けします。最後に、おにぎりを小判型につぶして、アンを周りに付けると、出来上がりです。
 私はオハギと呼んでいましたが、祖母はぼた餅と呼んでいました。そのオハギを作っている最中に、祖母が一度だけジョークを言ったことがありました。「ぼた餅を英語で何て言うか知ってる?」と私に真面目に聞くのです。私がウーンと考えていると、「ナカメシグルリアーン」と呪文のような答えを教えてくれました。つまり、”ナカ(中)がメシ(飯)で、グルリ(周囲)がアン(餡)”とのことで、イカをフランス語で”アシュジュポーン(足十本)”というのと同じやつです。後にも先にも、祖母の冗談を聞いたのは、それ1回だけでした。
 祖母は小さい時に学校に行かせてもらえなかったために、漢字の読み書きができませんでした。独力で片仮名だけは、読み書きできていたので、私が出した年賀状の返事は、一生懸命書いた(と思われる)片仮名でした。時折、子供の絵本でひらがなの読み方を練習していたのも、いま思い出しました。子供時代は不遇な祖母でしたが、いつもニコニコしている優しい祖母でした。
 最後に祖母のオハギを食べたのは、中学生の時だったと思います。今はもう叶わない夢ですが、もう一度あのオハギを食べて「ウメー」と言いたいなぁ。


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