お薦めマイナー本#7 日高山伏物語
今回紹介するのは、児童文学にカテゴライズされる『日高山伏物語』です。日高山伏物語は、動物を主人公にした児童文学で有名な椋 鳩十(むく はとじゅう)の作品です。
椋鳩十は鹿児島出身の元・教員で、鹿児島県立図書館長も務めたことのある作家です。私も小学生の頃に、この本を含めて何冊か読んだことがありました。ただし、この日高山伏物語は、椋鳩十の中でも異色な作品です。
日高山伏というので、日高地方の山伏の話かと思ったら、作者の出身地である鹿児島のお話でした。また、山伏を長い間”やまぶし”と読んでいましたが”やんぶし”が正しいことに、半世紀ぶりに読み返して気付きました。また、日高というのは、主人公の”やんぶし”の家名(苗字)だということもわかりました。
日高山伏物語(ひだかやんぶしものがたり)は、ドケチで有名な日高家の当主である山伏殿が主人公です。物語は、お金にまつわる滑稽話が集まった短編集になっています。この本は、1983年に芸術選奨文部大臣賞をとった『椋鳩十全集』の12巻になります。
主人公である山伏殿のケチは、誠に徹底しています。山伏殿は”拾う・貰う・タダ”が大好きです。ただし、一筋縄ではいかないケチ道を持っています。お隣さんから、美味しい新米を頂いた時には、「家族の食が進んで、副菜の費用がかさむではないか!」と憤ります。山伏殿はこう言って怒っていますが、山伏殿の副菜というのは”箸につけて舐める醤油”のことです。
ネタバレを1つだけ紹介します。ある時に、親戚の若者が山伏殿の蓄財術を学びに来ます。紆余曲折あるのですが、山伏殿が若者に最後にこう尋ねます。「おまえは、どんな気持ちで蓄財を学びに来たのだ?」。「お金がほしいからです」。「それでは駄目だ。一字を変えて、お金がおしいと思え。これが極意だ」と教えます。
この本には山伏殿の蓄財の極意が、散りばめられています。お金を貯めたい人には必読(?)の本です。
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