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超私的グルメ(3) 苺のフルーツサンド

 世間では、フルーツサンドが流行っているみたいなので、私の思い出のフルーツサンドを紹介します。でも、生クリームたっぷりの、今時のフルーツサンドとはちょっと違います。

 今から数十年以上も前の中学入学直後のエピソードです。新しいクラスで少し仲良くなった友達の家に、私と2人のクラスメートで遊びに行くことになりました。その友達の実家はお寺で、彼の名前もお坊さんのような名前でした。今でもよくあることですが、そのお寺では幼稚園を経営していました。

 彼の家につくと、4人で遊ぶため、幼稚園の広い教室に案内されました。その教室の前面には大きな仏壇みたいのがあって、びっくりしました。まだ世間知らずの中学生だったので、幼稚園に仏壇があることが不思議でなりませんでした。友達の一人が「のの様」だと言いました。「ののさま?、なんだそれ?」と聞くと、「お前、のの様も知らないのか?」とちょっと馬鹿にされました。今思えば、のの様とは”観音様”の幼児語なのだと想像できます。

 ひとしきり遊んで3時ぐらいになった時、彼の母親がラップで覆われた何かを運んできました。「昨日の余りなんだけど、良かったら食べて」と彼のお母さんが言いました。よく見ると、サンドイッチのようでした。しかし、いつものサンドイッチと中身が違います。スライスした苺の断面が見えました。生まれて初めて見たフルーツサンドイッチでした。私の故郷は超田舎なので、これまで、こんなオシャレな食べ物は見たことがありませんでした。

 恐る恐る、それを口に入れると、苺の酸っぱさと、練乳の甘さが口いっぱいに広がりました。「ウメー」と小さな声が出ました。耳なしのサンドイッチのパンに練乳を塗って、スライスした苺を挟んだシンプルなフルーツサンドでした。昨日の残り物なので、パンの部分は多少パサパサしていましたが、それが気にならない美味しさでした。


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