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超私的グルメ(4) 一銭洋食

 この食べ物の名称が”一銭洋食”だと知ったのは、比較的最近です。私の中では、数十年間”お好み焼き”として認識されていました。Wikipediaによれば、『大正時代の近畿地方の駄菓子屋では、水で溶いた小麦粉に刻みネギやわずかな肉片などを乗せて焼き、ウスターソースを塗ったものが「洋食」と銘打って売られていた。当時は小麦粉やソース自体がエキゾチックな食材と見なされており、お好み焼きのルーツのひとつとされる料理である。』と書かれています。
 これは、小学生低学年の頃の話です。あまりに昔過ぎて、記憶が曖昧なのはご容赦ください。母に連れられて、町の繁華街(といっても、その当時からサビれていましたが・・・)に買い物に行った帰りでした。母が来た道とは違う道に行こうとしました。そこは私が通ったことが無い、抜け道みたいな狭い路地でした。少し歩くと、路地の途中に屋台がありました。「お腹すいてない? お好み焼きでも食べていく?」と母が言いました。薄っすらした記憶ですが、屋台のお品書きにも、”お好み焼き”と書いてあった気がします。
 母は以前この屋台に来たことがあるらしく、そのお好み焼きなるものを2つ注文しました。屋台には、大きな鉄板があってその上で焼くスタイルでした。最初に、おじさん(おばさんだった?)が、水で溶いた小麦粉を丸く広げました。次にモヤシを鉄板で素早く炒めました。最後に卵を割って、鉄板で半熟状態にした後、モヤシと一緒に皮に乗せました。最後に、この皮を半月状に折りたたんで、ソースと青海苔をかけました。これで完成です。
 ”お好み焼き”を食べるのは、この時が人生で初めてでしたし、普段は醤油オンリーの食生活でしたから、ソース味の食べ物も初めてでした。ウスターソースの甘い香りと、青海苔の磯の香りが食欲を刺激しました。母が食べたのを見て、思い切って口に入れました。「ウメー」と心の中で思いましたが、母には「美味しいね」と可愛く言いました。
 これが”一銭洋食”という名称らしいことは、ズーッと後になってTVで見て知りました。広島・大阪の両方のお好み焼きとも、キャベツがたっぷり入っていますが、あの時食べた”お好み焼き”には、キャベツは入っていなかったと思います。たぶん。


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