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私的コンピュータ列伝#8 HP 9000 MODEL300

 PC98シリーズを使っていた学生時代に、憧れたコンピュータがありました。それが、ヒューレット・パッカードのHP 9000 MODEL300です。このコンピュータはパソコンと言うより、ワークステーションのような位置付けでした。

 ヒューレット・パッカードは、1939年に、ウィリアム・ヒューレットとデビッド・パッカードによりアメリカのカリフォルニア州パロアルトで創業された老舗のハイテクメーカです。この会社は二人の頭文字をとってHPとも呼ばれます。 創業者の二人は、スタンフォード大学で電気工学を学んでいた同級生で、同大学のターマン教授に勧められ、当時538ドルの運転資金と自宅のガレージを使って起業したのがHPです。最初に作ったのは、音声装置のテストに使うオーディオ発振器でした。パロアルトには、二人が会社を始めた原点である旧パッカード家の車庫が残されていて、”シリコンバレー発祥の地”としてカリフォルニア州の歴史的建造物に指定されました。

 創業当初は、オシロスコープなどの電気・電子計測器メーカーとして有名でしたが、パソコンが普及していく中で、コンピュータの開発にも着手しました。HPが開発したのは、計測機器との相性が良い、パソコンより少しハイスペックな業務用のコンピュータでした。家庭用パソコンのCPUは16ビットでしたが、インテルのi8086はアドレス空間が狭い8ビットと16ビットの中間ぐらいのスぺックでした。しかしHPは、独自路線を選択し、モトローラのMC68000を採用しました。このCPUは、リニアで広いアドレス空間化確保できる本格的な16ビットCPUでした。コアなファンなら、ご存知と思いますが性能的にはi8086を凌駕していました。しかし、既にi8086が一般家庭に広く普及した後だったので、一般的に普及することはありませんでした。

 しかし、HPのコンピュータには機器開発に必要な計測機器と相性の良いHP-IBというコンピュータ・計測機器間のインターフェースがありました。このインターフェースのお陰で、コンピュータと計測機器の接続が簡単にできます。当初HP-IBは、HPだけの規格でしたが、その後GPIBという世界の標準規格として採用されました。

 私が大学院生の頃、GPIBを齧り始めたこともあって、HPのコンピュータに憧れを抱いていました。しかし、貧乏な研究室ではHPコンピュータの購入は夢のまた夢でした。

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