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『ノンフィクション』と『フィクション』の狭間

 このブログでは、いろんなジャンルの駄文を書き散らしています。その多くは”事実に基づいた”エッセイですが、”全くの虚構”である長編小説や短編小説もあります。しかし、この”事実に基づいた”というのが曲者です。人は無意識、または意識的に自己の記憶を美化しがちです。ノンフィクションと言いながら、ついつい”話を盛って”しまいます。ノンフィクションフィクションの違いは、”事実か事実でないか”なのですが、この境目が曖昧な場合が結構あります。というか、虚構が事実に変わった例も少なくありません。

 その最たるものがサイエンスフィクション(SF) です。このジャンルは、”サイエンス(科学)”+”フィクション(虚構)”なので、最初から”嘘の話ですよ”と親切に教えてくれています。しかし、時間の経過による科学技術の進化で、小説が書かれた時点では夢物語(虚構)であったものが、事実に変わった例が少なくありません。

 カーナビは、今では当たり前の技術です。カーナビは人工衛星からの位置情報をもとに、現在の位置を教えてくれます。これはGPS(Global Positioning System)、日本語では『全地球測位システム』と訳される、トンデモなく最先端の技術です。このGPSのことをGPS誕生以前に書いていたのが、”SFビッグスリー”とも称されるSF作家のアーサー・C・クラークです。

 クラークは豊富な科学的知識に裏打ちされた、近未来を舞台にしたリアルなハードSFが得意な作家です。SFビッグスリーのアシモフやハインラインの二人が、壮大な宇宙抒情詩(スペースオペラ)を得意にしていたのとは、得意技が違いました。一番有名なのは映画化もされた『2001年宇宙の旅』ですが、時代は小説が設定した”2001年(21世紀の開始の年)”をとっくに超えてしまいました。

 クラーク最大の科学的貢献は、静止衛星による電気通信リレーというアイデアだと言われています。このアイデアは、Wireless World という学術誌に 『Extra-Terrestrial Relays — Can Rocket Stations Give Worldwide Radio Coverage? 』(1945)と題した論文として発表されています。このため静止軌道を”クラーク軌道”と呼ぶこともあるそうです。

 人工衛星は通信だけではなく、天気予報や地球の表層を調べるリモートセンシングなどにも利用されています。また、複数の人工衛星からの距離から現在位置を割り出すのがGPS技術です。このように”虚構”が”事実”に変わっていくことがありますが、『事実は小説よりも奇なり』のことわざ通り、”事実”が人間の想像する”虚構”を上回る場合もあります。

 どこまで本気なのかは知りませんが、NASAでは火星移住を考えた『テラフォーミング』の研究をしていますし、日本のJAXAも将来の月面基地に備えた『月の水資源探査』の研究を行なっています。私が生きている間には難しいかもしれませんが、近い未来に『宇宙生命体』との遭遇も”在り得る”かもしれません。

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