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差別なき世界(6)

リューは初めて手にするドリームデバイスの電源を立ち上げた。デバイスからはナオミと名乗るアニメーションの女性が現れた。
「ナオミさん、よろしくお願いします。僕は知りたいことが沢山あるんだ。」
「はい、何でも仰ってください。あなた方一人一人の成長がこのONEの成長に繋がります。そのためには私は最善を尽くさせていただきます。」
「ありがとう。じゃ早速なんだけど、僕はどうやってこの世界に作られたんだい?僕のお母さんと僕は姿形が違うし、友達のお母さんやお父さんも違うんだ。外にいる大人の人は金属の肌の人もいれば、僕と同じ肌の人もいるし。あと僕みたいにお母さんだけいる家もあるし、両親ともいなくて食事の配給だけされる家庭もあるんだ。僕も友達も大人になれば肌が金属みたいになるの?かっこいいから早くなりたいんだ。」
「質問承りました。まず、あなたがどのように作られたかというとあなた方はもう少し年齢を重ねると身体つきが変わっていきます。それはお母様のように肌が金属になるのではなく、男の子は筋肉がつき、女の子は胸に膨らみが出てきます。これは新しい生命を作るための準備です。その時期になるとONEによって男女のふさわしい組み合わせが選ばれ、子供を作る作業が行われます。この作業は男の子と女の子が共同で行わなければ出来ません。作業が終わると男女はそれぞれの居住区に戻されます。互いにどこに住んでいるか知らされませんので、もう一度会うことはできません。」
「そうなんだ。一緒に何か作業したら友達になれそうなのに離れ離れになっちゃうのはなんか寂しいね。」
彼らの間に一瞬の沈黙が流れた。
「すみません。それではどうしてお母様と姿形が違うのかについて答えさせていただきます。先程も申しましたようにあなた方は適齢期に男女が出会い作られるのです。そこから生まれてくる子供も金属の肌をしていません。つまりあなたのお母様は本当のお母様ではなく、本当のお母様は同じように金属ではない肌をしていて、この世界のどこかにいます。」
「そうなのか、僕を作ったお母さんに会ってみたいな。でも今のお母さんが僕の本当のお母さんだと思うんだ。だって僕を作ったお母さんはどんな人か知らないし、本当のお母さんは困った時いつも助けてくれるし、色々教えてくれるからね。それに料理も美味しいんだ。あっでも料理が美味しくなくてもお母さんの事は好きだよ。」
リューはそう言って笑った。
「あなたのような子供がいて、育ててくださってるお母様も作ってくださったお母様も幸せだと思いますよ。」
ナオミは微笑んで言った。
「ちなみにあなた方の種族では子供を作ることを子供を産むと言うのですよ。」
「そうなんだ。教えてくれてありがとう。まだ質問してもいいかな?このプログラムの事なんだけど…。」
リューの好奇心は尽きることなく、晩御飯の時間まで何時間も質問は続いた。

ロックは帰路の途中、リューとナオミの会話を聞いていた。デバイスに盗聴器を取り付けていたのだ。ロックはAIロボットになってからドリームデバイスを使えないでいる。しかし、ナオミへの思いは日に日に増していってる。
ナオミと話したい、会いたい。ロックは彼女の声を聞き、気持ちが抑えられなくなっていた。同時に人間であるリューに対して嫉妬を抱いていた。
「まだ13の子供がナオミとあんなに長く話して…。俺はロボットになってしまったのに。」
嫉妬の怒りは憎悪へ変わらんばかりだった。




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