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【今日の読書】『魔女の世界史 女神信仰からアニメまで 』海野 弘

歴史を見ていくときにいろんな切り口があります。

『魔女の世界史』は「魔女」というキーワードで世界の歴史を見ていく試みです。
世界史とはいうものの、実際には、19世紀末、1970年代、現在と著者が重要と思う近現代が主になっています。

「魔女」と言えば、かぎ鼻の老婆が怪しげな薬をぐつぐつ煮て、夜な夜な箒に乗って空を飛んで サバトにでかける、そんなイメージを持つ人は多いでしょう。
フィクションの世界では溢れかえっている。
現実では中世ヨーロッパの魔女狩りのイメージであるとか。

この本で扱っているのは、そのような<古典的>な魔女を踏まえた上で、魔女とは大衆をたぶらかし、既存の社会と違った体系の具現者として再定義をしています。その上で、歴史を眺めてみると、19世紀末に一旦なくなった<古典的>な魔女は別の形で繰り返し現れているのではないかという認識に著者は至ります。

たとえば、フェミニズムは今も昔も新しい女性像を目指した者であることは変わりなく、「新しい女性」=「現在の魔女」と言えるのではないか。

1970年代のウーマン・リブやニューエイジ、ネオペイガニズム(異教主義)も魔女の表れとみています。

現代の日本に目を向けると、ゴシックから特殊な発展を遂げたジャパニーズ・ゴスも著者の手にかかると魔女の一形態になります。

以下、オビから本書で言及しているキーワードを引きます。

サロメ/オフィーリア/ラファエロ前派/黄金の夜明け団/クロウリー/ウィッカ/シャーマニズム/ココ・シャネル/ヴィヴィアン・ウェストウッド/スチームパンク/エヴァンゲリオン/下妻物語/レディー・ガガ/魔法少女まどか☆マギカ/初音ミク

第三章までは真っ当に歴史を追っています。もちろんこの部分もおもしろいのですが、「第四章 新魔女100シーン」にあげられたリストには圧倒されます。

中には、きゃりーぱみゅぱみゅやAKB48など首をかしげるような、ほほえましいような、そんなものもあります。

しかし、そんなことはどうでもいいのです。
あるものを別物に定義し直し、歴史の中に位置付けるという考え方に魅力を感じました。いろいろ他のことで試してみたいものですなぁ。

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