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論点整理#7 不適正な利用の禁止

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リクナビ問題や破産者マップといった事例もあり、令和2年改正個人情報保護法で、個人情報の不適正な利用を禁止する条文が追加されました。

(不適正な利用の禁止)
第16条の2 個人情報取扱事業者は、違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法により個人情報を利用してはならない。


※令和3年改正法で、第16条の2から 第19条に条番号が振り直される予定

ただ、あまりに抽象的すぎて、事業者がどのように判断すればよいのか判りにくく、意見募集や国会審議でも再三指摘されていましたが、「ガイドラインにて、事業者による個別の判断において参照できる基本的な考え方や、該当する事例を明示することにより、要件を明確化する工夫を行う予定」との回答に終止し、明確な回答は先送られてきた経緯があります。

そんな「不適正な利用の禁止」の判断基準や具体例について、令和3年2月19日に開催された第166回 個人情報保護委員会で議論されました。

ということで、
本日は「不適正な利用の禁止」の判断基準について整理してみました。

1.個人情報の「適正な利用」を求める旨を明確化

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現行法上、あらかじめ特定した利用目的の範囲で個人情報を利用する限り、それが適正性を欠くものであっても、事業者があらかじめ特定した利用目的の範囲で個人情報を利用する限り、直ちに現行法の明文の規定に違反するものではなかった。

直ちに違法とまでは言えないとしても、看過できないような方法で個人情報が利用されている事例がみられた。


2.「不適正利用の禁止」の基本的な考え方

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✓ 個人情報の不適正な利用による個人の権利利益の侵害を防止する

✓ 法目的に照らして看過できないような相当程度悪質なケースを念頭におく

✓ 制度趣旨を踏まえつつ、事案ごとに個別具体的に判断する

✓ 具体例の提示等を通じて、事業者の予測可能性を高めていく


3.不適正利用の禁止の具体的な要件

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(1)「違法又は不当な行為」について
(2) 助長又は誘発の「おそれ」について


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(1)「違法又は不当な行為」について

以下の行為が考えられる。

✓ 個人情報保護法その他の法令に違反する行為

✓ 個人情報保護法その他の法令の制度趣旨や公序良俗に反する行為

✓ 社会通念上、適正とは認められない行為

✓ 暴力団員により行われる暴力的要求行為

✓ 本人に対して正当な理由なく行われる違法な差別的取扱い

不当な行為については、当該行為の目的・必要性、行為態様、行為者の認識等を踏まえて、個別の事案ごとに社会通念により判断する必要がある。


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(2) 助長又は誘発の「おそれ」について

提供先が受領した個人情報を違法な行為に用いた場合、提供元は提供先の違法な行為を助長又は誘発したとも評価し得る。

しかし、提供元が一般的な注意力をもってしても予見できなかった場合にまで適用されることとしては、制度趣旨を超えた萎縮効果を与えかねない。

そこで、個別具体的な事案に応じて、個人情報の利用方法等の客観的な事情に加え、個人情報の利用時点における事業者の認識及び予見可能性も踏まえて判断する。


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◆ 助長又は誘発の「おそれ」が認められると考えられる例

社会通念上蓋然性が認められる(一般的に起こり得る)かで判断する。

● 提供先が個人情報を違法に利用していることを認識している等、自己が提供する個人情報についても、同様に違法に利用されることが予見できるにもかかわらず、当該提供先に対して個人情報を提供すること

● 違法な行為を営むことが疑われる者(例:貸金業登録を行っていない貸金業者)からの突然の接触による本人の平穏な生活を送る権利の侵害等、当該違反事業者の違法な行為を助長するおそれが想定されるにもかかわらず、当該違反事業者に当該本人の個人情報を提供すること

● 裁判所による公告等により散在的に公開されている個人情報(例:官報に掲載される破産者情報)を、当該個人情報に係る本人に対する違法な差別が、不特定多数の者によって誘発されるおそれがあることが予見できるにもかかわらず、それを集約してデータベース化し、インターネット上で公開すること

● 暴力団員により行われる暴力的要求行為等の不当な行為や総会屋による不当な要求を助長し、又は誘発するおそれが予見できるにもかかわらず、事業者間で共有している暴力団員等に該当する人物を本人とする個人情報や、不当要求による被害を防止するために必要な業務を行う各事業者の責任者の名簿等を、みだりに開示し、又は暴力団等に対しその存在を明らかにすること

● 個人情報を提供した場合、提供先において法第23条第1項(本人の同意)に違反する第三者提供がなされることを予見できるにもかかわらず、当該提供先に対して、個人情報を提供すること

● 採用選考を通じて個人情報を取得した事業者が、性別、国籍等の特定の属性のみにより、正当な理由なく本人に対する違法な差別的取扱いを行うために、個人情報を利用すること

● 広告配信を行っている事業者が、第三者から広告配信依頼を受けた商品が違法薬物等の違法な商品であることが予見できるにもかかわらず、当該商品の広告配信のために、自社で取得した個人情報を利用すること


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◆ 助長又は誘発の「おそれ」が認められないと考えられる例

● 提供先が個人情報の取得目的を偽っており、当該提供先が取得した個人情報を違法に利用することについて、一般的な注意力をもってしても予見できない状況で、当該提供先に対して個人情報を提供する場合


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本日の引用文献

第166回 個人情報保護委員会

資料1-1 改正法に関連するガイドライン等の整備に向けた論点について(不適正利用の禁止) (PDF : 432KB)

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