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《分割版#1》ニンジャラクシー・ウォーズ【プリンセス・クエスト・アット・ザ・ミスティック・ニンジャ・タワー】

◆はじめての方へ&総合目次◆
◆全セクション版◆

この宇宙に人類が生き続ける限り、決して忘れてはならない事がある。
本テキストは70'sスペースオペラニンジャ特撮TVショウ「宇宙からのメッセージ 銀河大戦」とサイバーパンクニンジャアクション小説「ニンジャスレイヤー」のマッシュアップ二次創作であり、(株)東映、石ノ森章太郎=センセイ、ボンド&モーゼズ=サン、ほんやくチーム、ダイハードテイルズとは実際無関係という事だ! ただしリスペクトはある!

(これまでのあらすじ:第3惑星ベルダの魔境ゴースト山脈の向こうには、モンゴー一族の地底王国があった。ガバナス帝国の三面一体宇宙ニンジャ・ミツカゲビトは、王国の奸臣グモと結託して王女ヒミメを拉致。その罪を着せられたゲン・ハヤトは窮地に陥る。そして、ハヤトを救出せんと山脈を登るリュウもまた……!)

【承前】←

◆#1◆

「グワァァァーッ!」「WRAAAAGH! リュウーッ!」

 ミツカゲビトにザイルを切られたリュウは、ゴースト山脈の大絶壁を真っ逆さまに落ちていった。宇宙猿人バルーの絶叫がたちまち遠ざかり、鋭い岩肌が幾度も身体を掠める。接触した瞬間ネギトロ必至。さりとてこのまま地面に激突すれば、五体はトーフめいて粉々に砕け散るであろう!

 宇宙ニンジャアドレナリンが過剰分泌され、リュウの主観時間は泥めいて鈍化した。空中で身を捻って姿勢を制御。頭を上、足を下に。開いた両腕に力を籠め、宇宙ニンジャ動体視力を真下に凝らす。「イイイイイ……」突き出した岩塊が眼前を通り過ぎる瞬間、「イヤァァーッ!」リュウは渾身の力で十指を突き立てた!

 ガグン! 両腕を引き抜かれそうな衝撃に宇宙ニンジャ筋力が抗う。リュウは束の間、五体がまだ落ち続けているかのような錯覚を覚えた。「フゥーッ」主観時間が元に戻る中、全身からどっと汗が噴き出す。「危ねェ危ねェ……いくら不死身のリュウ様でも、ここから落ちたンじゃ一巻の終わりよ」

 岩塊をよじ登り、リュウは再びゴースト山脈の斜面に取り付いた。「ン? 何だこりゃァ」目の前に小さな石扉があった。古代戦士らしきレリーフの額には宝石が嵌め込まれ、パイロットランプめいて赤く瞬いている。そのレリーフがモンゴー王国の紋章であることを、リュウは知る由もない。

 宝石に触れると、石扉は自動ドアめいてガリガリと開いた。「オーイ! 誰かいるか?」リュウは首を突っ込んで叫んだ。反応なし。点々と照明された通路に、己の声が木霊するだけだ。「ま、行かざァなるまい……アイエッ?」歩き始めるリュウの首筋に水滴が落ちた。「ンだよ、気持ち悪ィな」

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「待って! 僕の話を聞いてくれよ!」モンゴー王国衛兵隊が繰り出す槍の刺突をスウェー回避しつつ、ハヤトは必死に訴えた。「耳を貸してはならん!」目を剥いて叫ぶ鉤鼻の男は宰相グモ。「もはや詮議の余地すらない程にこやつの罪状は明白ぞ! コロセー! コロセー!」

「クッ……!」後ずさるハヤトの背中が岩壁にぶつかった。この兵士達に罪はない。忠誠心ゆえ、奸臣のスカム命令を疑うすべを持たぬだけなのだ。だが……(モハヤコレマデ!)ハヤトは悲痛な表情で宇宙ニンジャ伸縮刀を構えた。果たして何人の命を奪わずに済ませられるだろうか。

 その時。突如岩壁がぐるりと回転して、ハヤトの姿を掻き消した。入れ替わりに現れたのはジュー・ウェア姿の屈強な男。「「「アイエッ⁉」」」一瞬のフリーズ後、槍を構え直す兵士達。「マッタ、マッタ!」リュウは両手を突き出した。「何だテメェら、その物騒な獲物はよォ! しまえ、しまえ!」

 通路の行き止まりに突き当たったリュウが、隠されたドンデンガエシ隔壁を偶然作動させたのだった。「いきなり現れおって、何者だ貴様!」戸惑う兵士達を掻き分け、グモが指を突き付けた。「ア? いきなりはお互い様じゃねェの? 何者だか知らねえオッサン」リュウはどこ吹く風だ。「ヌゥーッ……!」

「まァいいやな。俺ァ人を探してンのよ。こう、ヒョロっとした青臭ェ優男で……」身振り手振りで語るリュウの背後でドンデンガエシが逆回転し、「リュウ=サン!?」ハヤトが顔を出した。「アレッ? 何だテメェ、ここにいたのかよ!」「こっちのセリフだよ! よくこんな所まで」「迎えに行くッつったろ!」
 
 肩を叩いて笑い合う宇宙ニンジャ達を唖然と見るグモのこめかみに、みるみる青筋が立った。「ええい、何をしておる! こ奴こそ王女誘拐の主犯に相違なし! コロセー!」「ほう」振り向くリュウの手には、ジュッテめいた宇宙ニンジャ伸縮刀が握られていた。「聞き捨てならねェな。ケンカなら買うぜ?」

「ソコマデ!」張り詰めるアトモスフィアを、威厳ある声が制した。歩み出たのは地底王国の老王カンとケン王子。「皆の者、槍を収めよ」「「「ハハーッ!」」」兵士達は一斉にドゲザした。「お言葉ですが陛下!」濡れ衣行為を阻止されたグモが駆け寄る。「王女誘拐犯に情状酌量の余地などありませぬ!」

「ヒミメ王女を拉致したのはガバナス帝国の手の者じゃ」カン王は言下に否定した。「彼奴ら、余の暗殺まで図りおったわ」「ハヤト=サンはそのガバナスと戦ってるんだ。姉上を攫うはずはない!」ケン王子が小さな胸を張る。「ハ……ハハッ」グモは苦虫顔を伏せて押し黙った。

「イイ事言うじゃねェか坊主。アンタの孫かい、爺さん」「リュウ=サン! 言葉に気を付けて」ハヤトが慌ててジュー・ウェアの裾を掴んだ。「地底王国の王様と王子様だよ!」「地底王国? へーェ、ここが」「ドーモ。モンゴー王国のカン王である」「ケン王子です!」老爺と少年がオジギした。

「ドーモ、リュウです。……なァ王様、ひとつ聞いてもいいかい」「だからもっと丁寧に!」「ちょっと黙ってろ」リュウはハヤトの手を振り払った。「坊主の攫われた姉上ってのは、王国のオヒメサマじゃねェか? 白いドレスで黒髪のよォ」「姉上を知ってるの?」ケン王子が息を吞んだ。

 ゴウンゴウンゴウン……惑星ベルダの空を覆い隠すように、ニンジャアーミー旗艦「グラン・ガバナス」の巨体が航行する。その中枢、薄暗いブリッジの最深部にヒミメ王女は立ち、凛とした視線で壁面の黄金ドクロレリーフを見上げていた。仄白い燐光を放つ妖精めいて。

「皇帝陛下! ベルダの地底王国より、ヒミメ王女をお連れ致しましてございます!」ニンジャアーミー団長、ニン・コーガーがマントを翻してドゲザした。『ムッハハハハ! よくぞ参った』黄金ドクロは両眼をUNIX点滅させながら通信音声を放った。『ドーモ。ガバナス帝国皇帝、ロクセイア13世である』

「……」「アイサツせよ、無礼な」コーガーの傍らに控える弟・イーガー副長が小声で叱責した。「無礼はそちらです」ヒミメ王女はぴしゃりと返した。「いやしくも星間国家の君主が、他国の王族に対して顔も見せずアイサツとは。恥を知りなさい」「なッ……言葉が過ぎるぞ娘!」

「そもそも私は拉致されてこの場にいるのです。それに対する謝罪も弁明もないのですか。ガバナス帝国とやらの品格が知れようというもの」「貴様ァ―ッ!」『控えよ。無粋であるぞ』ロクセイアの通信音声に打たれたように、イーガーはドゲザして失禁を堪えた。「ハ、ハハーッ……!」

『ヒミメ王女よ、オヌシが受け継いだ宇宙エメラルドの星はどこにある。ンン?』「無礼な質問に答える言葉はありません」「正直に言った方が身のためよ」ニンジャアーミー諜報部の女宇宙ニンジャ・クノーイが、王女の白い腕を掴んだ。『ムッハハハ! 気に入った』黄金ドクロの両眼がねっとりと明滅した。

『どうじゃ、余の側女にならぬか。全銀河宇宙の支配者の寵愛を受ける栄誉を、オヌシに与えてやろうぞ』「お言葉ですが」ヒミメ王女は黄金ドクロに皮肉な笑みを返した。「私の未来の伴侶は、白馬に乗ったスマートでハンサムな星の王子様と決めておりますの」

「お黙り小娘」クノーイのこめかみに青筋が立った。「畏れ多くも陛下に対して愚にもつかぬ妄想を……」『よいよい。もう下がってよい』通信音声から微かな苛立ちを感じ取り、「ハハァーッ!」コーガーは大仰な再ドゲザで場を収めた。ドクロの目から光が消えた。通信終了。

「王女を連行せよ、クノーイ=サン」コーガーは立ち上がった。「傷つけてはならぬぞ。宇宙エメラルドとの交換が成立するまでは貴重な人質だ」「ハッ」クノーイはヒミメ王女に顎をしゃくった。「ついて来なさい」「それが王族を案内する態度ですか」王女は一瞥すらしない。「このッ……!」

「クノーイ=サン!」コーガーの叱声に、クノーイは怒りに震える手刀を下ろした。「……シツレイ、致しました」オジギする女宇宙ニンジャのキリングオーラを間近で浴びてなお、ヒミメ王女は悠然と微笑んだ。「クルシュナイ」「ハッ。こちらへ」

「じゃじゃ馬めが」去り行く王女の背中に苦虫顔で吐き捨てるイーガー。「オヌシは地底王国へ通告せよ。王女の命が惜しくば降伏せよとな」コーガーが言った。「面白い。俺が直接出向いて、モグラどもの吠え面をとっくり拝んで来るぜ」「好きにせい」

【#2へ続く】


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