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《分割版#6》ニンジャラクシー・ウォーズ【ストレンジ・アイデンティティ・オブ・ザ・ストレンジャーズ・エンペラー】

◆はじめての方へ&総合目次◆
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【#5】←

◆#6◆

 BEEAM! BEEEAM! 破壊ビームの閃光がエテルの闇を切り裂き、宇宙カプセルを緑色に照らし出す。散開したシュート・ガバナス編隊は、力尽きた獲物を順番に食いちぎろうとする宇宙シャークの群れめいてカプセルの周囲を飛び回り、無慈悲なる軌道上公開処刑シーケンスに入っていた。BEEEEAM!

「いよいよ年貢の納め時か」カプセル内のナガレボシが溜息混じりにひとりごちた。死を目前にしてもなお精神のヘイキンテキを保つべし。無限の大空間で取り乱した者は、万に一つの生を掴み損ねる。宇宙の男の鉄則だ。だが今……彼は胸の裡に無視できぬざわつきを感じていた。

 ついにハヤトに伝えられなかったインストラクションの数々が、ソーマト・リコールめいてニューロンに去来する。微かな痛みを伴って。「みっともねェな、リュウ=サンよォ」BEEEEAM! 至近距離のビーム光が、寂しげに笑うナガレボシの……リュウの片頬に影を刻んだ。「未練だぜ」

 その時。ZZZOOOOOM! 懐かしきエンジン音とともに、リアベ号の無骨な船体が宙域に乱入した。「WRAAAGH!」ZAPZAPZAP!船首レーザー機銃を撃ちまくりながらバルーが吠えた。「AAAAGH! ナガレボシ=サンは殺らせんぞ、クソ野郎ども!」ZAPZAPZAPZAP!

「イヤーッ!」宇宙ニンジャ耐G力を駆使した超高速機動で、クノーイは光弾の雨を回避した。船外モニタをちらりと見て舌打ちする。僚機がリアベ号を振り切れず、交戦状態に持ち込まれつつあった。機動力においてはシュート・ガバナスの方が上だが、それを十全に発揮できるかは操縦者の技量とカラテ次第だ。

「役立たず共が……まあいいわ」宇宙カプセルは既にターゲットスコープの中央。赤い唇に酷薄な笑みを浮かべ、クノーイはトリガーに指をかけた。「じゃあね、ナガレボシ=サン。イーガー副長よりは面白い男だったわよ」BEEEEEAM!

 KABOOOOOM……!

 エテルの暗闇に爆炎が花開いた。「AAAARGH!」バルーは絶叫し、操縦桿を何度も殴りつけた。「畜生! AAAAGH! AAAAAAGH!」いかつい頬に涙が滂沱と流れる。だが一方、シュート・ガバナス隊長機のコックピットではクノーイが驚愕に目を見開いていた。「消えた!?」

 彼女の宇宙ニンジャ動体視力は、着弾寸前にナガレボシが黄金の閃光を放ち、カプセル内から消失する瞬間を捉えていたのだ。左舷モニタが真っ白に輝き、「アイエッ!」クノーイは反射的に手を翳した。船外カメラの自動露出補正機能が働き、並走する飛行物体の映像を結ぶ。

 それは銀色に輝く宇宙帆船だった。側面に並ぶ船窓のひとつから、ストレートブロンド宇宙美女の横顔が垣間見える。その口元に浮かぶアルカイックな微笑は、クノーイのニューロンをひどく逆撫でした。二重露光めいて薄れゆく船体を、僚機の破壊ビームが空しく素通りする。BEEAM! BEEEAM!

「無駄な真似はおやめ! 退却よ!」クノーイは通信マイクに叫び、機体を反転させた。反逆者に協力する宇宙帆船の存在は既に諜報部の知るところであったが、実物を見たのは初めてだ。もはやエテルの他には何もない空間をモニタ越しに睨み、彼女は呟いた。「何者なの、あの女……?」

 地上は夜明けを迎えようとしていた。

「ハッハハハハ!」頭部のチョンマゲノズルから麻痺毒ガスを撒き散らし、ケムリビトは嬉々としてマボロシを苛んだ。「グワーッ!」ついに連続側転回避に失敗し、マボロシはブザマに転倒した。周囲に滞留するガスにニューロンが蝕まれ、四肢の先端が痺れ始めていた。

「「「イヤーッ!」」」マボロシに斬りかかるトルーパー達は、フルフェイスメンポ内蔵フィルターでガスから護られている。「クソッ! イヤーッ! イヤーッ!」バネ仕掛けめいて跳ね起き、伸縮刀で必死に防御するマボロシ。だがこのままではジリー・プアー(徐々に不利)……!

 明けゆく空の一角が不意に輝いた。「見るがいい。ナガレボシ=サンの最期だ」ケムリビトは軌道上の爆発光を指差した。「嘘だ!」マボロシは叫んだ。「ナガレボシ=サンが死ぬもんか!」「ハッハハハハ! 現実から目を背けながら君も死ね! イヤーッ!」

 ケムリビトが斬りかかろうとした瞬間。両者の頭上に黄金の光が迸り、ゴウ! 大気が激しく渦巻いた。「「「「「グワーッ!」」」」」ゴロゴロと地を転がるニンジャトルーパー部隊。同じく吹き飛ばされたケムリビトとマボロシはそれぞれにウケミを取り、金色に渦巻くパーティクルを見上げた。

 風が荒れ狂い、ケムリビトのフーリンカザンたる麻痺毒ガス帯を千々に散らしてゆく。パーティクルは崖の上で人型に凝集し、一人の宇宙ニンジャの姿に変じた。真紅の装束。クーフィーヤめいた頭巾。目元を隠すゴーグル……「あれは!」マボロシが瞠目した。

 ケムリビトは思わず数歩後ずさり、「バカな」崖上に立つナガレボシと上空を交互に見やった。「バカな……あり得ない! あり得ないだろう! たったいま軌道上で処刑された君がなぜ!」「女神様のご加護さ」ナガレボシは余裕の表情で答えつつ、胸の裡で呟いた。(恩に着るぜ、ソフィア=サン)

「俺のいねェ間に好き勝手やってくれたようだな、ケムリビト=サン。このオトシマエは……ンンッ!?」いま一人の宇宙ニンジャの姿に気付き、ナガレボシは目を剥いた。「ナ……何だテメェその恰好はよォ!」自身のコス・プレイめいた姿に人差し指を突きつける。彼の宇宙ニンジャ洞察力をもってすれば、その正体は一目瞭然だ。

「ア、いや、これは……!」マボロシは一瞬取り乱しかけたが、すぐに顔を引き締め、ナガレボシの視線をまっすぐ受け止めた。覚悟は既に決めた筈だ。深呼吸をひとつ。「変幻自在に悪を討つ、平和の使者」流麗な身のこなしでヒロイックなカラテを構える。

「ドーモ、はじめましてナガレボシ=サン! マボロシです!」

 常日頃ひそかに練っていたアイサツ・チャントが、自分でも驚くほど滑らかに口を衝いた。ナガレボシは腕組みして若き宇宙ニンジャのアイサツを見届け、「本気か」低く言った。「……」マボロシは目を逸らさず頷いた。「……そうかい。なら俺もアイサツを返さねえとな」

 ナガレボシは懐から宇宙ニンジャ伸縮刀を取り出した。「銀河の果てからやって来た、正義の味方」力強い身のこなしでヒロイックなカラテを構える。「ドーモ、はじめましてマボロシ=サン。ナガレボシです」二人の視線がぶつかり合い、張り詰めた沈黙が流れた。「……」「……」

「……ハッ」ナガレボシの口元が笑み崩れた。「バッカヤロー! あとで絶対後悔するかンなテメェ!」伸縮刀を突き付けて叫ぶ声音は、吹っ切れたように明るい。「後悔なんかするもんか!」マボロシもまた満面の笑みで叫び返した。「一日も早くナガレボシ=サンのようになってみせる!」

「アイサツは終わったかね」痺れを切らせたケムリビトが口を挟んだ。背後には整列したトルーパー部隊。「ならばマボロシ=サンから死んでもらおう! カカレ!」ケムリビトの号令一下、ニンジャトルーパーは一斉にソードを抜き放った。「「「「「イヤーッ!」」」」」殺到!

「させねェよ! イヤーッ!」ナガレボシが崖上から身を躍らせた。着地の瞬間、落下エネルギーを逆利用して高々と回転ジャンプ!「イイイイヤアアーッ!」キュイイイ……伸縮刀にカラテを込め、二度目の着地と同時にケムリビトを脳天から斬り下ろす!「アバーッ!」

 左右に分かれて転がったケムリビトの肉体は、アンダースーツ姿のパイロットトルーパーに戻っていた。ガス体が地を走り、「アバーッ!」マボロシを取り囲むトルーパーの一人に憑依した。新たなケムリビトとなって斬撃!「イヤーッ!」「グワーッ!」肩口を浅く斬られたマボロシが倒れ伏す!

「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」ケムリビトの連続ストンピングをゴロゴロと転がって回避するマボロシ!「ハッハハハ、どうしたサイドキック君! これしきのワザマエでナガレボシ=サンの右腕などと……アバーッ!」ナガレボシのヤジリ型宇宙スリケンが嘲笑う喉笛を貫通!

「やり方がセコいぞテメェ! イヤーッ!」「グワーッ!」ナガレボシは壁めいて立ち塞がるトルーパーを斬り倒した。即座に新手が前へ。近付けぬ!「いいぞ! 貴様らはそいつを足止めしていろ!」次の身体に憑依済みのケムリビトが叫ぶ。「弱敵から先に片付けるのはイクサの定石だ! イヤーッ!」「グワーッ!」胸板を浅く斬られるマボロシ! 飛ぶ血飛沫!

「上等だ! イヤーッ!」ナガレボシは連続バック転で飛び離れた。両手に宇宙スリケンを握り、ギリギリと身を捻って叫ぶ。「マボロシ=サン!」ケムリビトと鍔迫り合うマボロシは辛うじてナガレボシを見やり、その一瞬で察した。「いいよ! やって!」「おうよ!」

「ミダレ・ウチ・シューティング! イイイイヤアアアーッ!」

 彼のヒサツ・ワザを知るマボロシだけが、一瞬早くブリッジ回避に成功した。高速回転するナガレボシの身体は真紅の竜巻と化し、そこから放たれる無数の宇宙スリケンがケムリビトとトルーパーを暴風めいて蹂躙する!「アバーッ!」「「アバーッ!」」「「「「アバババーッ!」」」」

「ヌゥーッ……」ケムリビトが呻いた。ソードで防ぎきれなかった宇宙スリケンが何枚も四肢に突き立っている。トルーパー部隊は全滅。「ハァーッ、ハァーッ……コソコソ逃げ込む先がなくなったな、うらなり煙幕野郎」ナガレボシは片膝をつき、荒い息で笑った。「弱敵から先に片付けるのが定石なンだろ?」

「フン、意趣返しのつもりかね。だが」「イヤーッ!」「アバーッ!」ケムリビトの胸からスティック状の刀身が突き出した。マボロシが跳ね起きざまに背後から心臓を刺し貫いたのだ。「ハイクを詠め、ケムリビト=サン!」「ゴボッ……その必要はないね」メンポ呼吸口から、異星血液と共にガス体が溢れ出る。

 トルーパーに戻った肉体が爆発四散した。「イヤーッ!」マボロシの投げた宇宙スリケンが、ガス体を空しく突き抜ける。『ハッハハハ! カラテやスリケンで私は殺せんよ』不明瞭な笑い声とともに、ガス状のケムリビトはみるみる高度を上げて行った。『またいずれ、別の姿で君達をハメてやろう。オタッシャデー!』

「クソ野郎が」ナガレボシが吐き捨てた時、BEEPBEEP! マボロシの腕時計型IRC通信機がコール音を発した。『聞こえるか、ハヤト=サン……』バルーからの通信だ。『ナガレボシ=サンが死んじまった……人質にされて……ガバナスの野郎共がリアベ号に爆弾仕掛けるためによォ……ウウッ』

「爆弾?」明けゆく空を見上げるナガレボシ。リアベ号の船影を認めた瞬間、彼のニューロンは高速で回転した。「オイ相棒!」マボロシの手首を掴んで叫ぶ。『リュウ? リュウか? お前いつ戻って』「爆弾ッつったな! あンのかそこに!」『お、おう』相棒のただならぬ様子に、バルーの涙声がたちまち引き締まった。

「C4がざっと1ダース。無線起爆式のやつだ」バルーは操縦席から振り返り、中央船室の床に積み上げた爆弾を見やった。「起爆リモコンはトントがバラしちまったがな」『ソノホウ、ガ、アンゼント、ハンダン、シタ』リアベ号と合流済みのトントが頭部を回転させた。足元には電子部品の山。『モンク、アルカ』

『構わねェ! 今すぐこの上にバラ撒け!』ピボッ。グリーンモニタのアスキー地図にビーコン座標が点灯した。バルーは瞬時に状況判断した。「ガッテン!」叫ぶや否やコックピットを飛び出し、爆弾の山を抱え上げてダストシュートに放り込む。入れ替わりに航法UNIXを直結掌握したトントが、急旋回をかけつつ船底の投棄口を開いた。ガゴン!

 地上では、マボロシの手首で通信機がビーコン発信を続けていた。遥か頭上をリアベ号が通過する。だが彼の未熟な宇宙ニンジャ視力では、投下されたはずの爆弾を捉えようもない。

 ナガレボシはしばし上空を睨んだのち……狙いを定めて跪いた。宇宙スリケンを握る両手を背中に回し、弓を引き絞るように力を籠める。「イイイイイ……」装束越しに筋肉が縄めいて浮き上がった。「……イイイイヤアアーーーッ!」同時投擲!

 二枚の宇宙スリケンはDNA螺旋めいて絡み合い、指数関数的軌道を描いてほぼ垂直に空を駆け上がった。目を閉じてザンシンするナガレボシ。その背中と頭上を交互に見やり、マボロシは固唾を吞んだ。沈黙のうちに時間が流れる。2秒、3秒、4秒……

 DOOOM……上空の一点に生じた小爆発が引き金となった。DOOOM! DOOOOM! 放射状に誘爆が広がり、DOOOOM! DOOOOM! KABOOOM! ものの数秒で上空一帯が赤黒い炎に埋め尽くされた。DOOOOM! KABOOOOM! DOOOOOM! KRA-TOOOOOM……!

 ゴウ! 爆風と衝撃波が地上に到達した。二人の宇宙ニンジャは両足を踏みしめ、荒れ狂う熱風にクロスガード姿勢で耐えた。クーフィーヤめいた頭巾が激しくはためく。……やがて戻った静寂の中、空から落ちて来た物体が乾いた地表に激突して、グシャリと広がった。

 それは空中で焼き尽くされ、もはやガス体にも移行できぬ体組織の塊だった。「ア、アバッ」炭化した体表の下、赤く爛れた肉と極彩色の内臓の隙間から不明瞭な声が漏れる。断末魔にわななくその姿は、何らかの名状しがたき生命のありようを思わせた。「サヨナラ!」ケムリビトは爆発四散した。

 ゴンゴンゴンゴン……リアベ号は垂直着陸でシータの地上に帰還した。タラップを降りるバルーの表情は沈痛だ。後に続くトントの顔面に「T T」のアスキー文字がしめやかに点滅する。「すまねえ、ナガレボシ=サン……」7フィート超の長身が頭を垂れ、謎めいた真紅の宇宙ニンジャの冥福を祈った。

「俺達ゃ、アンタに助けられてばっかりだったなあ」トボトボと歩き出した宇宙猿人の呟きはオツヤめいて湿っぽい。「なのに恩のひとつも返せねえまま……こんな……こんなよォ……ン?」涙に霞む視界の中に立つ、真紅と白銀の人影。バルーは目を擦った。「あれは……!」

『ピガッ!?』棒立ちの背中にトントが衝突して電子的悲鳴をあげた瞬間、「WRAAAGH!」宇宙猿人は歓声をあげて駆け出した。「おう、相棒」「バルー=サン!」振り向く二人の宇宙ニンジャは頭巾とゴーグルを外し、リュウとハヤトとしての素顔を晒していた。

「WRAHAHAHA! 何だよお前! そういう事かよ!」ナガレボシ装束のリュウを抱え上げ、バルーはピョンピョンと飛び跳ねた。「ハハハハ! 悪かったな黙ってて……アイエッ?」リュウの身体が腕の中でクルリと回転し、SLAM! プロレスめいて地面に叩きつけられた。「グワーッ!」

「何しやがるテメェ!」悪童めいた笑顔でリュウが叫んだ。「WRAHAHA! 勝手なマネをしたお仕置きだ!」「グウの音も出ねェわ! ハハハハハ!」「WRAHAHAHA!」……ひとしきり笑った後、リュウはバルーの差し伸べた手を取って立ち上がった。ハヤトの手首を掴み、そこに重ねる。「心配かけたな」

「一人でガバナスの本拠に乗り込むなんてズルいぜ、リュウ=サン?」「この野郎」不敵ぶるハヤトの額をリュウが小突いた。「わかったよ。次のカチコミは三人一緒に行こうや」「約束だよ!」「GRRR……そうとも。真の宇宙の男はいつでも一蓮托生よ」

 キュラキュラキュラ。『トントモ、イマス。イクトキハ、ヨニン、デス』ドロイドのヤットコアームがさらに重ねられた。「ア? 四人じゃねえよ。三人とポンコツだ」『サッキマデ、メソメソ、ナイテタ、ヤツガ、エラソウニ( \ / )』「ンだとォ!」

「プッ」ハヤトは思わず吹き出した。「アハハハハ!」「ハッハハハ!」「WRAHAHAHA!」ピボボボ、ピボボボ。トントの電子音が三人の笑い声に加わった。宇宙ニンジャ、ニュービー、宇宙猿人、ドロイドが円陣を組む。「よォし出発だ!」「ハイ!」「WRAAAGH!」『ガッテン、ダ( Λ Λ )』

「センセイ、あれ!」

 シータの荒野を歩く生徒が空を指差した。「まあ」課外授業登校中のアグネは、花のように顔をほころばせた。ZOOOM……昇る朝日にボディを輝かせ、戦闘宇宙船が飛び去ってゆく。「オーイ、リアベ号!」「また来てね!」子供達は一斉に手を振った。「「「オタッシャデー!」」」

 アグネもまた、胸に手を当てて宇宙の勇士の武運を祈った。(勇気をもって戦い続けてください……この子達の未来のためにも)

 ピボッ。『アナリス、カラノ、キュウエン、シンゴウヲ、キャッチ』リアベ号のコックピットで、トントは顔面に「SOS」の文字を灯した。「リュウ=サン!」「おうよ。第2惑星アナリスに進路を取れ!」「アイサーッ!」自信に満ちた手つきで、ハヤトが操縦桿を傾ける。ZOOOOM……。

 その背中を眺めつつ、バルーは満足気に宇宙葉巻をふかした。「一皮剥けたな、ハヤト=サン」主操縦席のリュウが振り返る。「甘やかすなよ相棒。コイツすぐ調子に乗るからな」「なんだよ! もう少し褒めてよ!」「コス・プレイの出来はまあまあだったぜ」「エーッ?」トントはうんざりと頭部を回転させた。『ウルサイ、ヤツラダ( ─ ─ )』

 ZZOOOOM……無限の大空間を飛ぶリアベ号の傍らを、ソフィアの宇宙帆船がつかのま並走した。船窓から笑顔を覗かせる宇宙美女に手を振りながら、三人と一体はアナリスへの旅路を急いだ。次なる戦いへの道を。


【ストレンジ・アイデンティティ・オブ・ザ・
ストレンジャーズ・エンペラー】終わり


マッシュアップ音源
「宇宙からのメッセージ 銀河大戦」
第6話「怪皇帝の正体?」

「ニンジャスレイヤー」


セルフライナーノーツ

今回は長い:「宇宙からのメッセージ 銀河大戦」は1話30分枠のTVショウ。文字に起こすとだいたい20000文字前後になるのが常だが、このエピソードはそれを15000文字ぐらいオーバーしてしまった。
 理由は明らかで、とにかく本編に説明が足りないのだ。地上にいたはずのケムリビトがグラン・ガバナスのブリッジにPOPした理由も、ゲン・ハヤトがいきなり宇宙忍者“まぼろし”になった経緯も、何かにつけてハヤトへの当たりが強かったリュウの態度が軟化したきっかけも、なにもかも説明なし。
 ラフ&ブルタルなストーリーテリングは1978年当時でも相当にレアで、いま見ると逆に面白い。機会があればぜひ一度視聴して頂きたい……とはいえさすがに1970’sそのままの味をお出しするわけにはいかんわな。そう考えて、独自設定とオリジナル展開をめちゃくちゃ盛りまくった結果の15000文字なのです。それはそれで楽しかったけど。もともと辻褄合わせが好きなんだなきっと。

▲アマプラ会員であれば、このチャンネルに1ヶ月だけ登録するのが最もコスパの高い視聴方法だろう(配信ラインナップから外れることがあるので事前確認は必要だが)。1日1話で余裕で完走可能。


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