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「仮設住宅」再考〜高齢者支援・メンタルケア・災害対応の3つの役割を果たす新モデル〜

豪雨や洪水といった災害と粉々になった住宅家屋が頻繁にニュースで報道される今、新たな形の「仮設住宅」の概念を提案したいと考えています。

これまでの「仮設住宅」は一時的な生活空間を提供するものでしたが、それに新たな可能性を付加することで、日常生活の様々なニーズにも対応し、社会貢献を図ることが可能なものにできると考えています。ここでは、この概念を「レジリエンス・ハウス」と呼んでみました。

「レジリエンス・ハウス」が持つ機能を以下のように考えています。

まず、高齢者の支援を目指す一つの具体例として、僻地に住む高齢者のための通院支援拠点を想定しています。これらの地域で生活する高齢者は通院に困難を伴うことが多く、医療や介護の設備を備えた「レジリエンス・ハウス」の設置はその問題を大いに軽減するはずです。そして、遠隔医療の受診拠点としても機能し、大病院と直接的な連携を図ることが可能になります。また、このような場は、高齢者が孤独感を感じず、積極的にコミュニケーションを取る場ともなり得ます。

さらに、新たなメンタルヘルススポットとしても機能させたいと考えています。社会からのストレスや不安を感じる人々が、心を休ませる場を必要としています。また、災害時のPTSDやASD対応など、心のケアを重視した設計や、心理的な避難所(シェルター)となる機能を備えた「レジリエンス・ハウス」は、人々の心の健康を保つ役割も果たします。様々な先端技術が「心をととのえる」サービス創出に役立つはずです。

当然のことながら、災害時には被災者の仮設住宅としても活用可能です。一時的な住居機能はもちろん、上記した医療・介護のサポートやメンタルヘルスケア機能も備わっていますから、被災者の生活を多面的にサポートすることができます。

このような「レジリエンス・ハウス」の設計・運営には、建築、医療、介護、心理学といった多種多様な専門知識と技術が求められます。それぞれの分野の専門家が共創し、協力することで新たな価値を生み出すことができると信じています。

恒久的な建築物ではないため、建築規制も緩やかなはずです。これは、若手建築家やまちづくりの人材が新しいアイデアを試す、技術を磨く絶好の機会(場)を提供できると思います。

さらに、住宅メーカーや住設機器メーカーにとっては、新しい製品やサービスの試験(PoC:Proof of Concept)の場となり、新たな市場への挑戦の可能性を広げるでしょう。

注目すべきは、この「レジリエンス・ハウス」が必要に応じて解体し、移動することが可能であるという点です。必要とされるとき、そして必要とされる場所へ素早く展開することができます。

仮設とはいえ、日常的に存在し、災害への準備や訓練も実践的に行える場所となります。これらの「レジリエンス・ハウス」は、産学官連携により、新たな社会的試みの舞台となり得ると考えています。

レジリエンス・ハウスの基本イメージ


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